+act. (プラスアクト) & korea+act.(コリアアクト) オフィシャルサイト 映画好きのためのエンターテイメント雑誌! 隔月発売
+act.
+act.mini
Love PET
プラスアクトの最新情報はコチラ
+act.blog
korea +act.
コリアアクトの最新情報はコチラkorea+act. blog
ANOTHER act.
銀幕便り
銀幕便り 最終回 『東京物語』 / 『スタンド・バイ・ミー』
いやー、暑いっすねー。このままでは本当に溶けてしまう。夏って感じですねー! さてさて、やってきました。とうとう最終回!! お盆だから、夏! って感じの映画をお届けしまぁす。でも最後だから、おもいっきり思い出深いやつをお届け!!
日本に帰ってきてから3年かぁ…。と、ほぼ同時に始まった仕事が『銀幕便り』。
「タイトル、ナンにしよっかぁー?」と担当のAさんに聞かれて、「なんか古い言葉で映画ってなんて言うんスか?」ってのが『銀幕便り』の始まりだった。観たことのあったお気に入り、新作からクラシックまで。間違いなく『銀幕便り』のおかげで3年間、脳内が映画づくしだった。
あの頃となんか変わったか? ぐるりと一周してやっぱり、映画はイイねってところに戻ってきた気がする。「映画、演技、映画、演技」って、もうほとんどセルフ・マインド・コントロール状態ですよ。でもその深い思い込みが勘違いじゃないって感覚が、自分の中には確かにあって、その発端は「アメリカ紀行」でも書いた、師匠との出会いから発している。あそこでの演技は映像には残っていないけれど、確かにこれで正しいという感覚が、そこにはあった。
あの頃はとにかく、「いい俳優にはどうやったらなれるのか?」そんなことばかりを考えて日々すごしていた。そして、その想いで駆けずり回って、スーパーで買った大学ノートを埋めていたんだ。だから、僕の中ではあの頃と今はほとんど変わっていない。ただ少し違うのは、今では実際に現場に立たせてもらっていて、「どうやったらより良い作品やキャラクターにめぐり合えるのか?」に変わってきてはいる。少しは俳優らしくなってきたのかな。
まぁ、人間誰しも悩み迷うことがあると思うんだけど、道がはっきりしていない俳優にとって、回り道やユーターンなんてことは良くあることだと思う。そんなあの頃の僕に、演じることの喜びで、唯一希望を見出してくれたのが僕の師匠。
そんなこんなで、『銀幕便り』最終回は僕の演技の原点である師匠デイビッド・ホール氏が、当時僕にお勧めしてくれた作品をお送りします。 それではその前に、あそこで学んだ課題の内容を少々。
以前にも少し触れたと思うけど、あそこでの体験はとにかくすばらしかった。本当に人間としての基本的なことを、心の奥のほうで学べた。
その練習法とは例えば、ただ「人の話を聞く事こと」だとか、ただ「存在すること」だとか、なにを今更と思われがちな内容に聞こえるかもしれない。だけど、それらを丁寧にステージの上で体験してみると、驚くほどパワフルな経験になった。
たとえば「人の話を聞く」だと…、聞くっていわれても、言葉ばかり追いがちになるでしょ? でも相手の意図や、気持ちまでは聴いてはいないことが多いんだよね。ここでの聴くは、耳で聞こえる音はおまけで、「全身で聴く、感じる」みたいな感じ。
そして「存在する」の方はちょっと難しくて、禅的な要素だった。「ただ存在する、何もしない」ってのが案外難しくて…。たとえば日常でも何かしていないと落ち着かなかったりすることってあるじゃないですか? 本当にその場に「いる」事に感覚を向けることで、自分は本当は何を感じているのかを、深いレベルで知ることができる。そしてそれを実践する事は、演技上でのカメラの前やステージの上のことだけではなく、実生活の中で忘れがちになっている真実に近づけてくれていると僕は思う。
ちなみに師匠がよく言っていたのは「答えは自分の外にはないよ」でした。 言葉にするとちょっと難しい話に聞こえるかもしれないけど、見た目は地味で単純。でも、その基本的なことの繰り返しを完璧にこなしていくことで、演技になる。
…と言うような、解釈もあるんだよって予備知識を踏まえて、この作品をどうぞ。
『東京物語』
東京物語 独立した子供たちに会いに東京を訪れる老夫婦、周吉(笠智衆)と、とみ(東山千恵子)。しかし子供たちは自立し生活に追われ、誰も快く面倒を見てくれない。そこに唯一東京見物に付き合ってくれたのは、戦死した次男の未亡人、紀子(原節子)だけだった。皮肉にも血のつながった家族よりも、孤独感から3人は共感し、心を開いていく。子供たちの元気な姿を見て安心した二人だったが、その直後とみが危篤に。戦後の慌しい東京の一風景。

はじめて観た小津作品の感想は、驚くほど地味で、僕の夢見ていたものとは若干違っていた。台詞のない長い間の方に何かあるんだな、とか。「何もせずにただ存在する」って意味が、これを見ると良く分かる。上記した課題のお手本のような演技。この後、小津作品を観たことで、師匠に教わる演技の質をより正確に理解できるようになり、そして僕も実際東京で暮らしてみて、この作品の深みのあるメッセージが、今でもじわじわと感動を与えてくれている。

実生活なんてそのまま映像にすれば地味なもので、普通の生活なんて何にもないことの繰り返しなのかもしれないけど、その中で感じている小さなことの繰り返しがドラマを生むんだろう。とか、外面的な事柄よりも、その時々に内側で起こっていることの方が、きっと大切なんだろうな、とか。そんなことをこの映画と演技を通して、より理解した。笠智衆さんの自伝『俳優になろうか』を読んでみると、そのシンプルで謙虚な姿勢がこの作品にめぐり合わせたのだろうことを想像させてくれる。

いやー、最終回かぁ。寂しいね、引っぱりたくなるね。ちょっと前半はマジメな感じになっちゃったかな。それでは、「銀幕便り止めないで!」のご声援のお手紙をくださった方のために、夏らしい映画、もう一発いっときますか! はいっ、頭の中で『スタンド・バイ・ミー』鳴らし始めてくださーい。
『スタンド・バイ・ミー』
スタンド・バイ・ミー アメリカのとある田舎町。4人の悪ガキ、クリス(リバー・フェニックス)、ゴーディー(ウィル・ウィトン)、テディ(コディ ー・フェルドマン)、バーン(ジェリー・オコンネル)は、木の上に作った小屋でいつもたむろっている。それぞれが心に傷を負っていて…。
クリスの兄は町の不良で、何か問題があると悪者にされてしまう。優秀な兄を亡くした両親に愛されないゴーディーは自信を持てず、テディは戦争帰還兵で気が触れてしまった父を持つ。気が弱く太っているバーンはイジメられがち。
そんな4人がある日、町の不良から線路沿いに死体があったことを盗み聴きする。死体を見つけて英雄になろうと4人の旅は始まり、この旅の中で4人は成長し、夢を語り合い、また新学期に向けて別れて行く…。

思えば『銀幕便り』、第一回で触れた作品がコイツでしたよねー。
映画の中の空想感は少年時代の夢にも似ていて、それをそのまま映像化したような作品がこれ。作者はきっと少年時代のことを思い出して、この脚本を書いたんだろうな。
師匠と僕のお気に入りを見比べてみると、世代は違えど、年齢の節目で誰もが感じる、切ない感覚と言うのが共通点なのかな。これを見た時のことをはっきりと覚えていて、多分自分の中の深いところに影響を与えている作品だと思うんだよなぁ。当時この作品を観た後に、僕はこの物語の中で起こっていることを実体験していった感じ。
自分、結構田舎育ちなんで、よくこの4人の真似していた。クリスの尻キックとか地味なところも真似していた。そして、このお別れ感と、ゴーディーがワープロに向かって思い出にふけってニヤついている所も今、真似しています…うるうる。

この夏休み感がきっと今でも続いていて、多分、男友達とつるむのも、バイクに乗っていたのも、バンドやっていたのも、すぐに旅に出ちゃうのも、飲むと深いぶっちゃけトークしたくなるのも、全部ここが原点だったのかな…。小屋が作れるほどのデカイ木はなかったけど、近所の悪ガキ達は、本当に毎晩僕の部屋にやって来ては朝まで語りあった。最近僕がはまっている、「あさおにいお」の漫画の世界観も、大好きです。
長い間、演技っていう良く分からないものを追いかけてきて、これからもそれは続くんだけど。そして、いろんな人に出会って、いろんな映画観て、深いところに潜ってみたりもしたけれど…。やっぱり原点はこれ。子供のときに感じた夏休み。夏、蝉の声を聴くと、なんともいえない楽しさと、その後の焦燥感に襲われちゃう。
ここで『銀幕便り』は一旦終わりますが、また二学期に会いましょ。
それではっ。長い間、ご愛読ありがとうございました! 引き続き俳優業、精進していきますんで、皆さんこれからも応援よろしくお願いします! それじゃあ、また近いうち、ばいばい。
:::予稿:::
だけど僕の夏休みは終わりません。最近、こんなお話が…。
ある日、「映画やりたい、映画やりたい」とつぶやいていると、担当のAさんが、「自分で書いちゃえば?」というような展開になった。「“かっこいいもの”がやりたい、というのはなんとなく分かるんだけど、高山さんにとって、“かっこいい”って何? 3つの形容詞に例えるとどうなる? 例えば色とか?」ってな話になった。
そこで僕は、僕にとってかっこいいものは、『黒くて、寂しくて、暖かい』って答えた。フムフム、とっさに答えてはみたものの、なるほど、確かに僕の魅力を感じる作品や、演じてみたいキャラクターには同等な要素が一貫して、このイメージに当てはまる。フムフム。
それじゃ、これを踏まえて、何か物語でも書いてみようかなぁ。楽しい夏休みの宿題にとりかかります。
   vol.057>>
銀幕便り