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インタビュー

永岡卓也   (ながおか・たくや)

映画、ドラマ、舞台と、芝居場のフィールドを広げ、その場に一番適した表現方法を模索しながら芝居をしてきた永岡卓也。新作舞台『BACK STAGE』では、同じく映画、ドラマ、舞台で大きな存在感を残し、個性派俳優として活躍中の池田鉄洋が作・演出・出演するコメディーに挑戦する。舞台に立つ人と、それを支える裏方が描かれ、膨大なセリフで展開される今作への想いから、現在放送中のドラマ『セーラーゾンビ』でのエピソードなどについて聞いた。

撮影/中根佑子 ヘアメイク/横山雷志郎 スタイリング/東海林広太 文/今津三奈

プロフィール 永岡卓也(ながおか・たくや)


1985年5月31日生まれ。長野県出身。舞台は『ミュージカル黒執事』『シャッフル』『汚れた靴』『abc★赤坂ボーイズキャバレーSpin Offシリーズなどに出演。映画は『少年メリケンサック』『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』『コドモ警察』など。ドラマは『ジョーカー 許されざる捜査官』『ラストマネー ~愛の値段~』『MOZU』など多数出演。今後もドラマ、映画が公開待機中。メガネがトレードマークでもある。

――『BACK STAGE』出演が決まった時、台本はあがっていたんですか?

「まだプロットの段階でした。しかも凄くざっくりした内容で」


――ざっくりした内容でも、全容はつかめたんですか?

「全然わかりませんでした(笑)。劇場で舞台が行なわれていて、バックステージのスタッフサイドの話を描くということ、そして宇宙人がやって来るぐらいの情報しかありませんでした」


――池鉄(池田鉄洋)さんが作・演出なので、そのプロットだけでも期待出来る気がしますが、池鉄さんの作品で印象深いものはありますか?

「最近だと医龍のイメージが強いです」


――舞台よりもテレビのイメージなんですね。

「舞台は、表現・さわやか(注:池田主宰のユニット)を一度観させて頂いたことがあります。でも、それはコント形式だったので、今回のようなストレートプレイは観たことが無くて」


――今回、永岡さんの役・山之内は、裏方の中でも音響の役ですが、ご自身も以前、音響学校に通ってましたよね。この役はあてがきなんですか?

「たまたま池鉄さんが僕を音響役に選んで下さったので偶然なんです。パンフレット撮影の際に池鉄さんに初めてお会いしたんですが、その時に『実は僕、音響の専門学校に行っていたんです』と言ったら、『えええええええええーーー』って物凄く驚かれてました」


――そうなんですか。音響時代のことがリアルに役に生かせそうですね。

「まだ芝居での動きが完全に決まっている訳ではないので、どうなるかわかりませんが、全く知識がない方よりは、音響の卓の触り方、何かトラブルがあった時に最初に触る場所はどこなのかなど、全く知らない人よりかは多少手の動きがリアルになると思います。2年間やっていたことを思い出してます」


――池鉄さんよりもその分野は詳しい訳ですね

「池鉄さんの演出で面白い動きをしてみようとなった場合は、それも入れつつ、でもリアリティーも極力失わないように出来ればと、今は試行錯誤しています」


――台本はいつ出来上がったんですか?

「結構ギリギリでした。稽古に入る2週間前くらいだったかな」


――ご覧になった印象は?

「一体、この舞台はどうなるんだろう! って(笑)。最初の段階の台本がとにかく分厚かったので、これはどうやって処理するんだろうと。このままだと時間はどのくらいかかるんだろう、セリフ量がかなり多いけど大丈夫か? と。僕はまだ少ないほうですけど、女優役の(鈴木)砂羽さん、俳優役の近江谷(太朗)さんは、果てしない膨大な量が書いてあって。だから、“これは大変だぞーーー”というのが第一印象。でも稽古に入ってからだいぶ台本がスッキリしてきてホッとしてます。不安ばかり言っちゃいましたが、もちろん内容は面白くて、読んでいて声を出して笑うくらいでした」


――台本を読ませて頂きましたが、山之内という役は思ったことをどんどん口にして、ハプニングにも動じない人柄に見えましたが、永岡さんはどう捉えてますか?

「基本的に慌てない、動じない人です。物語の中で様々なトラブルが起きるんですが、僕よりも焦る役の人が大半の中、照明役のゾノさん(西ノ園達大)は僕よりも適当な人なので、その中間を上手いこと立ち回れたらいいなと思って。俳優さん、女優さんに対するリスペクト感はスタッフとして持っているし、音響の仕事に対してはプロフェッショナル。そういう部分は忘れないようにしつつ、基本的に無駄な動きがなくブレないように、最初から最後まであいつは山之内だったねと言われるように、上手く一本の線で繋がるキャラクターにしたいです」。


――音響役となると、実在するモデルはいないかもしれませんが、池鉄さんから役柄について何か話はありましたか?

「クールな部分はベースに持っていてほしいと。でも、ただクールなのではなく、ちょっとひょうひょうとした感じも持ち合わせてと、そんな感じでした。僕が常にメガネをかけていることもあって、見た目は勝手にクールに思われやすいですし、声も地声が低いので、普通に喋っているだけでクールに見られるんです。山之内に関しても、普通にあのセリフの内容を喋っていれば、ゼリフ自体が説明だったりするので、クールぶろうとしなくても、上手く出来るんじゃないかと。だからクールさは今のままで表現して、逆にひょうひょうとした感じや、適当さを強めに出したほうが、表情が出るのかなと思います」


――適当さ、ひょうひょうとした感じは、声の表現? それとも体での表現?

「基本的に何事にも興味を持たず、何かやりながら話を聞いている感じ。ただ、好きな話や興味を持つと、お!! みたいに食いつく部分はもう少し作っていきたいです」


――セリフはかなりのかけあいです。テンポ感がハンパなさそうですね。

「今、四苦八苦してます(笑)。全体的に本を手放させない状態で、完全に頭に入らないと、パンパンパンとセリフが出てこなくて」


――そこが見せ場であり、面白さになりそうですしね。

「ここから本番に向けて、しっかり作っていきます」


――お稽古が始まって1週間くらい経ったそうですね。これまでも色々な舞台に出て色んな演出家さんの演出に携わってきたと思いますが、池鉄さんならではの進め方はありますか?

「今、10日くらい経ちましたが、とにかく低姿勢なんです。基本的に“僕の演出を受けて下さってありがとうございます”というスタンスで演出されてます。でも、やっていくうちに、疑問があったらすぐに言ってとおっしゃっていて、『ここはどうなのかな?』とか、すぐに聞いて下さるし、セリフなんかも『そのほうがいいね』とすぐに変更して下さる。でも全てそういう訳ではなく、池鉄さんには芯があるから、そうじゃない部分に対しては、きっちり説明して下さるので、凄く頼りになるし、安心して動けます」


――共演者は同世代からベテランまでいらっしゃって凄く楽しそうな現場ですが、どんなコミュニケーションを取っているんですか?

「稽古中は基本的にはお芝居に集中してますけど、ご飯を食べに行こうとなると、そこでは芝居の話はせずに、プライベートな話や今までの交友関係などで盛り上がります」


――同世代チームだけでやるんですか?

「いえ、全員一緒です。池鉄さんも近江谷さんも砂羽さんもゾノさんも、先輩ぶらないというか、大御所感を出さない方々で、本当にフランクに接してくれるんです。なので若手の3人(舞台監督役の相葉裕樹、演出部役植原卓也)はのびのびと、ちょっと失礼かな!? くらい、飲みの場では楽しませて頂いています」


――先輩のお芝居をご覧になっていかがですか?

「この面白さは、なんなのだろう…と思って」


――どんな風に面白いんですか?

「ご本人が出される空気もあるんでしょうけど、同じことをやっても、同じ笑いにはならないだろうなというのがあって。それは多分みなさんの経験値の違いだったりするものなんでしょうけど、池鉄さんも演出の際にご自身自ら演じて下さるので、僕らがそれをやってみるんですが、池鉄さんがやると凄く面白いのに、僕らがやるとちょっと違ったか…となっちゃうこともあって」


――その違いはなんなのでしょう。

「個性でしょうか。多分そうだと思います。1回こんな感じでやってみてと言われて、キャラクターと本筋に合っていればそのまま採用されるんですが、やはり池鉄さんがやるのと、本人がやるのでは違うんですよね」


――この作品に入るにあたって、永岡さんが新たに準備したことはありますか?

「音響時代のことを思い出しました。実際働いたことがある訳ではなく、学校の実習で番組を作る実習をしたんですが、スタジオにいる時は何をしてたっけ? と考えて。音響の仕事がある時はやってたけど、ない時は何もしてなかったなと(笑)。ほかの方が準備している間、スタジオの角で『やることないなぁ~』って、話していたことを思い出したり。あとは、山之内というキャラクターのクールなのはなぜなのか、説明したがりな部分はどういうことなんだろうかと自分なりに考えました。その結果、これだけ説明したがりなのは、大体好きなことなんだろう、だったら俺にとって好きなことはなんだろうと、空想を広げて行って。あとは実際にみなさんと芝居をした時にどんな感じで来るのかわからなかったので、変に作りこまないほうが多分ハマりやすい気がして、ニュートラルでいるように考えました」。


――ところで、永岡さんはセリフ憶えはいいほうですか?  これだけセリフの量があると深刻な問題だなと思いまして。

「今回みたいなのはやっぱり大変ですね。掛け合いばかりなので、ひとりで憶えるとなるとやりづらいんです。ほかの方がブワーーーっと喋っている中にパパっと僕のセリフが入るパターンが多いので、今回の稽古中は、極力耳で周りの話を聞くことにしてます。このセリフがきたら、これ、という風に。ゾノさんと1対1のところは徹底的にやるしかないので、稽古時間の少し早めに入って、喫煙シーンなので実際にたばこを吸いながら、ゾノさんは吸わない方なんですけどお付き合いして下さって、ふたりで朝早くからセリフ合わせしてます」


――ひとりで憶える時はどういうスタイルですか?

「大体家の中でひたすら読んで、あとはテストみたいに隠して、答え合わせをしながら憶えていきます。ある程度自分のセリフが入ったと思ったら、一回台本を置いて、お皿を洗ったり、お風呂に入るなど家の作業をしながら、相手のセリフを思い出して、自分のセリフを声に出すというやり方。最終的に何も考えずにブワーーーーっと早口で次から次へと人のセリフまで全部言えたら完璧に入っています。今はまだそこまでは、落としこめていません(笑)」


――大勢の掛け合いの中に一言だけセリフを入れるのは、かなりテクニックが必要ですね。

「そうかもしれません。しかも今回は音響卓に座るので、出演者のみなさんとの距離感がつかみにくいし、みんなのセリフも自分のセリフもスピーカーで聞くことになると思うので、最初は違和感がありそう。ゾノさんに関しては、姿が見えないところから声を聴くので、それもどうなるか…。実際の距離感はゲネプロまでは出来ないので。うーーーん、かなり心配要素は多いですが、頑張るしかないですね」


――舞台の話のほかに、現在出演されているドラマ『セーラーゾンビ』についても聞かせて下さい。犬童一心さんが企画演出で話題ですが、内容が非常に奇抜で台本だけでは映像の想像しづらいのでは? と思いながら拝見してます。台本はどんな風に読んでいるんですか?

「セーラーゾンビに関しては、台本を読んでいる段階で、セリフからかなりポップだと感じていました。ただ、僕が演じる教師・鍋島に関しては、立ち位置、居場所みたいなのが、どんなポジションなんだろうと思って。基本的には女子高生がメインのお話なので、その辺は監督に実際に聞きました。その中で、ゾンビものと言っても、ホラーの方向に振るよりも、割とコメディーに近い方向なんだとわかったので、現場には割とすんなり入れたと思います」


――映像の状況もしっかりト書きが書かれているんですか?

「結構しっかり書かれてます。基本的に、“どこどこからゾンビが出る”“逃げる鍋島”など細かく書かれていたので、画的には浮かびやすくて。僕自身も海外のゾンビものをよく観ていたので、なんとなくゾンビのイメージや、群がる様子などもわかっていたので、想像がしやすかったですね」


――実際に演出は細かくされなくても、永岡さんが思った通り演じたものがOKになってるんですね。

「そうですね。なので、セーラーゾンビの時は鍋島先生に関しては、あまり演出という演出は入らず、鍋島先生は好きにしてもいいよという感じで」


――任せられたんですね。

「そうなるのでしょうか。わりと好きにやらせて頂いてます」


――今後、鍋島先生に大きな動きはあるのでしょうか?

「なんと6話目に確変します。急にどうした!? 何が起きた!? という感じで、7話で悟ります。あれだけ逃げ回って喋りもしなかった先生が、急に生徒達への不満、怒りをぶつけるというシーンがあります。その時の撮影が面白くて。現場に入って、監督から立ち位置と、ここで振り返ろうというぐらいの段取りだけあってすぐに本番。そして30分後には撮影終了(笑)。片道3時間かけてロケ地まで行って、『もうおしまいです。お疲れ様でした!!』と言われ、また3時間かけて帰って来ました(笑)」


――今のところ女子高生達と大きくからんでいませんが、現場では交流したりするんですか?

「いやーー、それがなかなか出来なくて。何を話していいものやら。正直、もう少し話せると思っていたんです。僕も一応まだ20代だし。でもやっぱりダメだった…(笑)。女子高生とはいえ女優さんですから、どこまでどんな話をしていいのか加減もわからなくて。プライベートな話はあまり聞けないし(笑)、そのまま引き下がっちゃいました」


――トライした時はどんな話をしたんですか?

「前情報でドラマが初めてという方もいたので、先輩ぶって『緊張しなくても大丈夫だよ』なんて言ってみたんですが、そのあとが続かなくて(笑)。趣味の話も好きなアーティストも世代が違うし、女の子同士はプライベートな話や、大学の話、今後の進路の話をたり、写メ撮ってアプリで遊んだりしてましたが、入れなかったですね…」


――普段のお付き合いも、年下よりも年上ですか?

「そうですね。同い年か、年上が多いかな。年下に気を使われるのが苦手で、先輩! 先輩!ってされると、やめて! となっちゃうんです」


――学生時代はバスケ部で先輩後輩の関係は経験されていると思いますが。

「僕らの上の先輩が厳しかったこともあり、僕らの代はそういうのを止めてフラットに行こう! となって。部活以外でも、バイト先も上下関係が厳しくなく、みんなフランクだったんです」


――縦社会にあまり触れてこなかったんですね。

「縦社会もそれはそれでいいと思うんですが、僕が後輩に同じ振る舞いをしたくないなと。後輩が先輩に気を使おうと頑張っているのを見ると『全然いいよ、僕のこと、“たっくん”って呼んで。敬語も使わなくていいから』と言います」


――“たっくん”ですか…(笑)。先日、ツイッターで共演の相葉さんのことを“ばっち”とあだ名で呼べるようになったと書いてましたね。

「相葉君は今回初めてご一緒するんですが、たまたま別の仕事の時に相葉君の話題になった時があって、その時は勝手に“相葉っち”って呼んでいたんですが、そのことをファンの方は知っているので、『お会いして“ばっち”と呼べるようになりました』とツイッターで報告しました」


――どういう経緯で“ばっち”と呼ぶことになったんですか?

「『相葉君ってなんて呼ばれてるの? “相葉っち?”“ばっち?”』って聞いたら『“ばっち”だよ』と言うから、『じゃあ、“ばっち”って呼ぶね』って。でも、そういう呼び方を決めることって大事じゃないですか? 植原君と僕はダブル卓也なので、最初の段階で先輩達が『なんて呼べばいい?』と聞かれて、永卓と植卓になりました。西ノ園さんは学生時代からゾノと呼ばれていたらしいのでゾノさん、衣裳役の新垣(里沙)ちゃんは、ガッキーかりさちゃん。小野寺(大夢)さんは、小野寺さんかな。でも不思議なキャラクターの方で、この名前を出すだけで笑いが起こるくらい最高なキャラクターなんです。普通に挨拶しただけで面白いんですから。是非注目して見て頂きたいです」


――これまでたくさんの舞台、映画、ドラマに出演されてますが、それぞれの表現の面白さはなんだと思いますか?

「僕は基本的に全てが好きです。緊張感もそれぞれ違うし、舞台は稽古があって実際の劇場で観て頂き、カーテンコールがあって…という空気が好きだし、みんなで1カ月お芝居に取り組む空気も好き。ドラマは緊張感が独特で、特に(撮影期間が短いため)時間との闘いになるので、そういう意味では自分の中での瞬発力や、その中でいかに出し切るかなど、自分へプレッシャーを与えて度胸試しになる。映画は映画でドラマよりはもう少し時間に余裕があるけど、お金払ってスクリーンで観てもらうので、受け取り方も違ってくる。それぞれが楽しみ方があって、お客さんもそれぞれの楽しみ方があるんです。なので、今後もまんべんなくやって行けたらと思います」


――まもなく5月31日で29歳になります。20代最後ですが、何か20代のうちにやっておこうと考えていることはありますか?

「特にないです。そういうことを気負わないタイプです(笑)。最近、周りを見ていて30代のほうが楽しそうだと思っていて。(といって、スタイリストさん、ヘアメイクさん達を見る)楽しそうな大人達を見ているので、いつもその時々を楽しめていればいいかなと思ってます」


『BACK STAGE』

作・演出・出演/池田鉄洋
出演/相葉裕樹 植原卓也 新垣里沙 永岡卓也 西ノ園達大 小野寺大夢 近江谷太朗 鈴木砂羽
岩手公演/北上市文化交流センター 5月30日(金)
大阪公演/シアターBRAVA! 6月5日(木)
東京公演/日比谷シアタークリエ 6月8日(日)~15日(日)
問い合わせ/03-3201-7777(東宝テレザーブ/9:30~18:00)
http://www.tohostage.com/backstage/

アメリカ大統領夫妻を演じる二人芝居。演じる人気女優の麗(鈴木砂羽)と人気俳優の薫(近江谷太朗)の熱愛疑惑もあり連日超満員だ。しかし舞台裏でのふたりは犬猿の仲。それにスタッフは振り回され、疲れきっていた。そんなある日、宇宙から謎の生命体がやってきて麗の体を乗っ取った。寄生した人間がほかの人間に噛みつくことで寄生者はどんどんひろがるが、そんな中舞台は行なわれて行く…。

2024年03月
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