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インタビュー

小篠恵奈   (こしの・えな)

『ふがいない僕は空を見た』やドラマ『クレオパトラな女たち』に出演し、ここ1年で女優として大きな成長を遂げつつある小篠恵奈。彼女は最新出演作『今日子と修一の場合』で、犯罪を犯した過去を持つ青年を献身的に支える純粋な女の子・未来(みき)を演じている。この作品を「純粋に、好きな作品です」と語る彼女が、どんな風に撮影に挑んだのか話を訊いた。


撮影/吉田将史 スタイリスト/KAZU(ワールドスタイリング) 文/渡邊美樹 

プロフィール 小篠恵奈(こしの・えな)


1993年11月24日生まれ、東京都出身。2012年映画『カルテット!』で女優デビュー。主な出演作にドラマ『クレオパトラな女たち』、映画『ふがいない僕は空を見た』『ももいろそらを』『舟を編む』などがある。『四十九日のレシピ』(11月9日)、『ほとりの朔子』(2014年)、『物置のピアノ』(2014年)、『炎~HOMURA』(2014年)、『フレア』(2014年)が公開待機中。

――最初にこの作品へ出演が決まった経緯を教えてください。

「奥田監督への顔見せをさせて頂くことになりまして、『たぶん、決まらないかもしれない…』っていう思いも抱きつつ監督に会いにいったんですけど、そこでお話をした後に、その場で『じゃー、未来ちゃんな』って言う感じで出演が決まりました(笑)。『よっしゃ!』って感じでしたね」


――じゃ、出演が決まったのは、監督のフィーリングなんでしょうか?

「どうだったのでしょうか? 『芝居は俺が何とかするから』って言われましたので、もしかしたら芝居とは別の部分をその時に見てくださったのかもしれません」


――では、実際に奥田監督とご一緒していかがでしたか?厳しいところなどはありましたか? 

「『ダメなものはダメ、いいものはいい』っていう感じで、ズバズバとお芝居についてはっきりと言われる印象でした。普段は気さくに接してくださいましたし、そんなに厳しい監督ではなかったです」


――今回の役柄の未来(みき)については?

「未来は、過去に何か事情があった方がいいのか、ない方がいいのかという話を監督と初めにしました。結局、未来は普通に働いていて、過去に何もなかった方がいいなっていう話で落ち着いて。それは観ている人に『どうなんだろう?』って考えて欲しいからと」


――じゃ、そこを明らかにする訳じゃなく、観る人に考える幅を持たせたということですね?

「そうですね」


――おそらく、この作品は未来という人物が物語の中で一番共感できる人物だと思うんですが。

「はい。未来って優しくて明るくて、この物語の中では、みんなにうけるキャラクターだと思うんです。それで、凄く修一くんのことが好きっていう前提もあるので共感してもらいやすいかなと。ちなみに、自分の想いについて葛藤するシーンがあるのですが、もしも、私が同じ立場だったとしても、好きだったら彼が犯罪者だったとしても受け入れられると思います」


――この作品を観てどういう感想を持たれましたか?

「客観的に見たときに、まず柄本さんがずるい顔をしているなって思いました(笑)。もちろん、素晴らしいお芝居をされているという意味です(笑)。そして、素直に、自分が出ていることを抜きにしてもこの映画は純粋に、好きな作品です。震災という重要なテーマを扱っていますが、その最中で生きる人間に、より焦点を当てているんだなと私は感じたんです。そこには、嫌な部分も、影みたいな部分もリアルに表現されていて…。でも、人って何かしら希望を持っているんだって…。まとまらなくてすみません…」


――いえいえ。作品は、今日子サイドと修一サイドとふたつの話が並行して進みますが、小篠さんは今日子サイドの方々とお会いする機会はあったのでしょうか?

「それは、一切なかったです。撮影している場所も違いましたし。私、安藤サクラさんが凄く好きなんですけど、ご一緒できなかったので、ちょっと残念でした」


――奥田監督、安藤サクラさん、柄本祐さんという本当の家族のみなさんがメインとなって作られている作品ですが、そういう部分は気になったりしませんでしたか?

「撮影中は、監督と役者という感じそのものでした。なので、全然気にはなりませんでしたね。でも、撮影以外では、サクラさんの話とかはされてました。だから、仲がいいご家族なんだなーって、思ってました」


――柄本さんはどんな方でしたか?

「最初は、ちょっと怖い人かなって思ってました。でも、現場で慣れてくると、いじってくれたりもして、気さくな方で。お芝居に入ると、全部テンポを持って行かれちゃうので、『わー!』っと驚くこと、戸惑うことが多々ありました。セリフを喋っていても『お、来るか、来るか? はっ! ここでくるの!?』みたいなのが多かったから。まるで私が柄本さんの手のひらで転がされている感じでした(笑)」


――その場で柄本さんの演技についていく感じですか?

「はい、ついていくのに一生懸命でした。私のせいで何回もNGになっても、柄本さんはきっちり同じお芝居をされて…。迷惑かけっぱなしでした」


――では、柄本さんの演技から勉強になったこともあるのではないですか?

「勉強にはなりましたけど…。まだまだ実践はできないと思いますね。柄本さんのお芝居は。絶対できないですし、他の人にもできないと思います」


――事前に、おふたりの間で演技についてお話はされたんですか?

「動きとかくらいですね。お芝居について事前にどうこうという話はしなかったです」


――印象深かったシーンはありますか?

「屋上に上がってきて、修一に向かって『ラーメン食べに行こう』って言うシーンがあるんですけど。あそこ、リハーサルで全然上手くできなくて。段取りをする時に、私、絶対に疲れているふりってできないから、その前に走っておこうと思ったんです。でも、急に呼ばれちゃって、できなくて。そこで、くやし泣きをしました。本番の時には『うわー!』って言いながら、めちゃめちゃ走って(笑)。『はぁ』っていう感じが出てたのは、階段を全力疾走した疲れなんです。なので、あそこはだいぶ印象に残ってますね。しかも、本番何回も走ったんですよ。『おまえ、片目つむるな! 汗入ってもつむるな!』って監督に言われて、『はい! すいません!』って言ったりして(笑)」


――凄いですね。監督は、こだわって何度も撮り直しされる方だったんですか?

「そうですね、私だけ何度もやり直した気がします。私がダメだったからだと思います。」


――でも、役者として鍛えられるというか。体育会系ですね。

「そうですね。カットがかかって、『ダメだ、俺がやる! おまえ、ちょっとどいてろ!』って言って、監督が未来を演じたこともありましたし。監督自ら演技されていたので、そういう時は、とても勉強になりました」


――監督とは、事前に演技について話があって撮影するという流れだったのでしょうか?

「今、思い返してみると、監督が『こうだからな!』って言われて、『はい!』って言う感じのほうが多かった気もします(笑)」


――では、『四十九日のレシピ』についてもお伺いしたいと思います。監督のタナダユキさんとは『ふがいない僕は空を見た』以来、2回目となりますが、再会した時の印象はいかがでしたか?

「衣裳合わせの時に久しぶりにお会いしたんですけど、実は、会ったその時は、あんまり監督とは会話がなかったんです。でも、『あ、また緊張してる!』って言われました。『肩に力が入ってる』って怒られました(笑)」


――美佳というキャラクターを演じる上で考えたことはありますか?

「監督とお話をして、具体的な設定はあるんですが、それはそんなに見せなくても大丈夫って聞いていました。でも、だからこそ役作りをしなくちゃと。初めてここまで役作りをしたと言っても過言ではないんですけど、美佳の性格を考えていって、こういうときにどういう態度を取るかって考えて…。何か少しでも画面から感じとってもらえればと思っていました」


――監督はキャラクターをしっかりと掘り下げる方なんですね。

「あの、この作品の中でコロッケサンドを作るというエピソードが登場するんです。それで、監督が、『そういう人の気持ちをわかったほうがいい』と言って、事前に料理スタジオを用意して、コロッケサンドを作ったんです。撮影とは別に、お母さん役の執行佐智子さんと一緒に作ったんですよ。監督はそういうところにこだわられてました」


――細かいところまで徹底してるんですね。おいしく作れましたか?

「はい。料理指導の先生もいらっしゃったので(笑)」


――そして、今年、小篠さんは二十歳になられますね!

「はい! 楽しみです!(笑)」


――二十歳になってやってみたいことはありますか?

「打ち上げでみんなとお酒を飲むことです(笑)。今までは、みんな二次会行こうぜ! っていっているのに、参加できなかったから。うらやましいなーって思ってました。マネージャーさんに『一次会終わったら帰って下さい』っていつも言われて(笑)。あとは、人としてもうちょっと落ち着きたいですね。ずっと落ち着きないんですよ。もう大人なので、落ち着きたいです。成長していきます」


――そしたら、また演じることのできる役の幅も広がっていくと思いますが、目標とかやってみたい役はありますか?

「基本的には、なんでもやりたいです! なんでもやりたいですけど、変わった役もやりたいです。ひきこもりとか、ストーカーとか」


――それはなぜですか?

「ひきこもりは、私自身がひきこもりなので(笑)。ストーカーは、粘着気質というか、人に対して依存してしまうっていうキャラクターが自分にはないものなので、ちょっとやってみたいなと思います」


『今日子と修一の場合』

監督/奥田瑛二
出演/安藤サクラ 柄本佑 和田聰宏 小篠恵奈 和音匠 カンニング竹山 田部周 宮崎美子 平田満 ほか
配給/彩プロ

訳あって家族と別れて生活をしている男女の姿を綴るヒューマンドラマ。病気で働けない夫のために、生命保険の外交員をすることになった今日子。だが、彼女はそこで上司に枕営業を強要させられ、それを知った家族に家を追い出されてしまう。一方、大学受験を控えた修一は、暴力をふるう父親を我慢できずに殺してしまった。その後、刑務所を出た修一は、東京の町工場で働くことになり、同僚の未来に少しずつ心を開いていく。ふたりはそれぞれ東京で新たな生活を始めるが、ある日、東日本大震災が発生し、彼らの人生が大きく変わっていく。

10月5日(土)より新宿ピカデリー他全国公開

(C) ZERO PICTURES
http://kyokoandshuichi.ayapro.ne.jp/


『四十九日のレシピ』

原作/伊吹有喜
監督/タナダユキ
出演/永作博美 石橋蓮司 岡田将生 二階堂ふみ 原田泰造 淡路恵子 ほか
配給/ギャガ

母を亡くし、残された父・良平(石橋蓮司)と娘の百合子(永作博美)が家族の大切さに気付き、絆と前向きな生活を取り戻していく物語。結婚し東京で暮らしていた百合子は、夫の浮気が原因で父がひとりで暮らす実家に帰ってきた。そんなある日、母の遺言に書かれていた“四十九日には大宴会をしてほしい”という希望をかなえようと、父が決心する。そして、生前の母にお世話になったという少女・イモ(二階堂ふみ)と、日系ブラジル人の青年・ハル(岡田将生)と4人で四十九日の準備をするため、奇妙な共同生活が始まった。

11月9日(土)新宿バルト9、有楽町スバル座ほか全国ロードショー

(C) 2013映画「四十九日のレシピ」製作委員会
http://49.gaga.ne.jp/

2016年12月
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