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インタビュー

平間壮一   (ひらま・そういち)

2015年版の『RENT』がいよいよ開幕! 周りから愛される優しいドラァグクイーンのエンジェルを演じる平間壮一。ミュージカルの経験があまりない中、歌という新しいジャンルに挑戦する彼に、本作への意気込みを聞いた。

撮 影/吉田将史 スタイリスト/keisuke watanabe ヘアメイク/菅野綾香 文/池上愛

衣裳協力/+8 PARIS ROCK、Primal.

プロフィール 平間壮一(ひらま・そういち)


1990年2月1日生まれ、北海道出身。数多くの舞台、映像で活躍中。近年は舞台『レディ・ベス』、『オーシャンズ11』など本格派ミュージカルにも出演。また、著名なダンサーが数多く出演していた『DANCE EARTH~生命の鼓動~』や『THE ALUCARD SHOW』に出演するなど、ダンスの実力にも定評がある。2016年1月より上演の、岸谷五朗・寺脇康文が主宰する地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』に、メインキャストとしての出演が決定している。
公式ブログ http://ameblo.jp/hirama-soichi/

――ニューヨークで本場の『RENT』を観たことがあるそうですね。

「4年前くらいに。確か(賀来)賢人が『RENT』をやると決まっていて、ちょうどニューヨークに行く機会があったので、現地でも観てみようと思い観劇しました。音楽やお芝居に物凄いパワーが漲っている舞台でした。セリフは英語なので全部理解することは出来なかったんですが、キャストさん達のパワーというか、歌が好きだ! 演じるのが好きだ! という気持ちが伝わってくる、熱い舞台でした」


――歌い出しから、そのエネルギーに触れる感じ?

「そうです。歌声を聞いた瞬間に、ぶわっと感じるものがありました。そんな体験をしたもんだから、日本に戻ってから舞台を観る度に、演じている人達のパワーに注目して観るようになりました。帰国後に観た賢人の『RENT』も、ニューヨークで観たものと同じ感情を持ちました。歌声を聞いた時に、“賢人、歌うのがめっちゃ好きなんだな!”って思えたんですよね。まさかその時は、僕が『RENT』に出ることになるとは思ってなかったです」


――ご自身が演じるエンジェルは、ストリートのドラマーで、ドラッグクイーンという役どころです。

「めちゃくちゃキャラクターが立っていますよね。エンジェルはゲイなので男の人が好きですが、平間壮一は男の人に恋愛感情を抱いたことがないので、エンジェルがどういう感情でコリンズ(TAKE/加藤潤一)のことを好きなんだろうか、という部分は凄く考えました。愛ってなんだろう? って試行錯誤しながら、この『RENT』で僕なりの愛を作っていけたならと思います」


――日々、愛とは何かを考えているのですか?

「考えます。『RENT』からちょっとずれますけど、恋人同士の愛は簡単に崩れてしまうこともあるけれど、血のつながりの親子愛は、そんなに簡単には切れない。同じ愛なはずなのに、どうして違うんだろうとか…」


――そんなことまで!

「そうなんです(笑)。答えがないんだけど、ぐるぐると考えてしまいます。でもきっと『RENT』には、愛ってなんだ? という答えが隠されている気もして。……って、いざ本番が始まったら、そういう考えを取っ払え! ということになるかもしれないんですけど(苦笑)。今は、とにかく悩むだけ悩んで、本番を迎える時にパッと忘れて臨もうと思っています」


――愛とは何か? 哲学みたいなところに行き着きそうです。

「ははは(笑)。深すぎますよね。性格上、色々考えちゃうんですよね」


――日本版リステージのアンディ・セニョール Jrは、実際に『RENT』でエンジェルを演じた経験もある方ですね。

「そんな方に日本版のリステージをして頂くので、めちゃめちゃおっかないです(笑)。今、愛についてぐるぐる考えていますけど、そんなんじゃないよ! と一蹴されるかもしれません。前回の『RENT』に出演経験のある方々は『アンディにしか見えない何かがあるんだと思う』とよく言ってるんです。まだその何かっていうのは、僕にはわからないんですけどね。オーディションでアンディの目の前で演技をやったんですが、最初はエンジェルのように女の子らしく歌ってみたんです。そしたら『違う違う。そういうのはいらないから、いつも通りの自分でやってみて』と言われて」


――自分のままでと言われて、自分のままですぐ歌えました?

「自分を出せていたかどうかはわかりません。ただただアンディの目を見て、この歌詞の意味を伝えたいという思いで歌いました」


――その思いが伝わったのかもしれませんね。

「僕としてはエンジェルのオーディションなのに、平間壮一の素のままで歌うっていう意味があまりわからなかったんですが、自分の素を見てエンジェルに選んで下さった訳じゃないですか。だから僕の中にエンジェルっぽい要素があったのかなぁと。でも、アンディの目を見て歌うオーディションは少し緊張しました。最初はアンディだけじゃなく、周りを見渡しながら歌っていたんです。そしたら『こっちにこい、俺を見ろ』みたいな感じで、僕に手招きするんですよ。だからどんどんアンディのほうに近づいていって、最終的にはめちゃめちゃ近い距離まで行って歌いました(笑)」


――エンジェルと平間さんの似ている部分は、どこだと思いますか?

「う~ん…どうでしょう。…そうだ、オーディションでちょっとした出来事があったんです。エンジェルの振り付け審査の時に、最終審査でダンス経験がない子がいたんですね。僕は小さい頃からダンスをやっていたので、すぐ振り付けを憶えることが出来たんですけど、その子はなかなか憶えられなくて。でも暗記する時間は決まっていたので、途中からその子に振り付けを教えていたんです。同じスタートに立って、その子と勝負したいなと思ったから。オーディションは個室で一人ずつ受けるようになっていて、その子は僕よりも先に受けたんですね。で、僕の審査も終わって、いざ帰ろうと思ったら、部屋の外でその子が僕のことを待っていてくれたんです。『ありがとう。本当に助かった』って挨拶してくれて、帰りの電車も一緒に帰ったんですよ。そしたら『なんか、(エンジェル役に受かるのは)あなたな気がする』と言われて。その時は、『えぇ!?』と思ったんですけど、実際にエンジェル役に受かって、その子のことを思い出しました。エンジェルって仲間に対して凄く優しいじゃないですか。僕とその子のやりとりをアンディは知らないと思うんですけど、周りの先輩達は、『壮一のそういう部分を見てたんじゃないの?』と言ってくれました」


――平間さんはダンスをずっとやられていますが、歌うことへの抵抗はないですか?

「歌は自信がないですし、これだけソロでも歌うミュージカルは初挑戦に近いです。ダンスのリズムの取り方と歌のリズムの取り方が違うので、まずはそこから勉強しなくちゃって感じです」


――カウントの取り方が違うんですか?

「ダンスは8カウントなんですよ。1,2,3,4,5,6,7,8で、1ブロック。でも音楽は小節ごとに区切られるじゃないですか。そして何拍子かも楽曲によって変わる。それがまだ理解できないんです。歌の先生に『4小節で入ります』と言われても、すぐにどこの区切りで入るのかがわからない。4小節? えっと…1、2、3…ってダンスのカウントで考えちゃうんです(苦笑)」


――ダンスをやっているので、リズムをとるのが得意なように見えるんですが…。

「その逆。すぐに切り替えられません(笑)。僕が歌う楽曲は4拍子なんですけど、8カウントで区切っていたのが、4カウントで1小節になるんで、なんか短く感じちゃうんですよね。今のところ、歌の入り方はまぐれで成功しているので(笑)、ちゃんと理解してやれるようになりたいです。歌の先生は、相手がいるとやりやすいとも言って下さるんですが、やっぱりひとりで出来るようになっておきたい。仮にですけど、相手が歌詞を間違えたり、歌いだしを間違えた場合、戻せる自信が今はありません(笑)」


――たくさんの舞台を経験されてますけど、やはりミュージカルとなると悩みどころが違うんですね。

「全然違います。しかも僕、凄く心配症なので、色々悩みが尽きないんですよ。若い時はそうでもなかったんですけど、経験を重ねれば重ねる程、心配性になってきました」


――初めてミュージカルをやったのはいつごろですか?

「高校生の時だったと思います。パートとかハモリとか、何もわかっていませんでした。何重奏にもなると、自分の音がわからなくなっていましたし。しかも楽譜も読めなかったので、ド、レ、ミ…って数えていました。今もまだ楽譜には書き込んでいるんですけどね。未だ勉強中です!」


――堂珍嘉邦さんや超新星ユナクさんなど、アーティストの方々も多く出演されます。

「僕はそんなメンバーの中でも、全く歌の世界にいない人間です。でもそういう立場だからこそ、僕に出せない味があると思うので、そこで戦っていきたいです」


――エンジェルの見せ場もありますし。

「平間、歌下手だな~と思われないようにしないと(笑)。でも歌って、上手い下手だけじゃなく、声の好みがあるじゃないですか。だから難しいですよね。今練習している歌い方も、女の子らしく歌う歌い方と、そのまま歌う歌い方と両極端の練習をしています。最終的にどう歌いあげるかは、アンディが決めるんですけど、歌い方の幅が難しいですね。ダンスだったら幅の間で色んなニュアンスを付けることが出来るんですが、歌はどうしても……難しい!」


――練習している2種類以外の歌い方になる可能性もあるんですよね?

「そうです。演出家の求める方向に近づけないといけません。でもその幅の端っこと端っこを知らないと、幅の間を表現することは出来ないので、まずはその2種類をしっかりと表現できるようになりたいです」


――やったことのない未知の世界ですね。そういうことにチャレンジするのは楽しいですか? それとも怖い気持ちのほうが大きいですか?

「う~~ん…自分の性格的には、すぐ逃げ出したくなるほうかもしれません。出来ることをやっていたいって思ってしまいます。この間ニューヨークでダンスレッスンを受けた時も、最初は自分の得意なジャンルのダンスを練習してしまいました。本当はジャズとかバレエとか、やったことのないダンスにチャレンジしないと意味が無いことはわかっていたんですけど、なかなか勇気がでなくて。踊れない自分が嫌だなって思ってしまうんです」


――最終的に、ジャズやバレエはやってみたんですか。

「はい。なんとか気持ちを奮い立たせて、やったことのないダンスのレッスンを受けました」


――どうでしたか?

「やっぱ難しくて出来なかった(笑)。でも、意外とここまでは出来るんだという発見もあったので、チャレンジしてよかったです」


――自身のお芝居については、どう分析していますか?

「例えば目の前にコップがあって、平間壮一はこのコップをこう持つけど、この役だったらどうコップを持つのか? それがお芝居だよ、と習ったことがあります。でも今までの舞台を振り返ってみると、この役だから考えて演じているっていうよりも、平間壮一自身に、台本に書いてあることを入れている感覚に近いなと。例えば周りから愛される役柄だったとして、愛されるように演じるんじゃなく、台本通りに演じて、それが結果愛されるような役柄になる、そういう演技を目指しています。だって…お客さんにバレますよ、絶対。こいつ演じちゃってるなって思われる気がします。普段の生活でも、僕、嘘つけない性格なんです(笑)。嘘はすぐ顔に出ちゃうし、何かやってやろうって思うと、物凄く大げさになってしまう。小さいころ、お母さんの靴を汚しちゃった時に、隠さなきゃ! って思ってるのに、『お母さん、なんか靴が汚れてるよ~!』って余計な一言を言ってバレちゃう…そういうヤツなんです(笑)。だから、僕の場合は、自分から何かやってやろうと考えると終わり。敢えて余計な事はせず、与えられたモノ…それは台本だったり演出家の意見を、そのまま入れ込んだら、自ずとその役に近づく気持ちでやっています」


――エンジェルもそういう気持ちで演じると。

「そうですね。エンジェルも、歌という新しい挑戦がありますが、変に意識せず、ニュートラルな気持ちでお芝居していきたい。それがいい結果に繋がれば嬉しいです」


『RENT』

脚本・作曲・歌詞:ジョナサン・ラーソン
演出:マイケル・グライフ
日本版リステージ:アンディ・セニョールJr.
出演:村井良大、堂珍嘉邦/ユナク(超新星)(Wキャスト)、ジェニファー/Sowelu(Wキャスト)、加藤潤一/TAKE(Skoop On Somebody)(Wキャスト)、平間壮一/IVAN(Wキャスト)、上木彩矢/ソニン(Wキャスト)宮本美季 Spi ほか

2015/9/8(火)~10/9(金)  シアタークリエ (東京都)
2015/10/16(金)~10/18(日)  森ノ宮ピロティホール (大阪府)

2018年04月
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