プラスアクト

インタビュー

松岡佑季   (まつおか・ゆうき)

テレビドラマ、映画、舞台と様々な場で演じてきている松岡佑季。ここ最近は舞台での活躍が目立ち、個人での活動のほか、俳優集団NAKED BOYZの結成メンバーとしてユニットとして舞台に上がることもある。9月は2本の主演舞台『甲子園だけが高校野球ではない2013』『管弦劇 天の赦すところ』に出演。それぞれの稽古場の様子や、プライベートな部分まで幅広く聞いた。

撮影/中根佑子 文/今津三奈

プロフィール 松岡佑季(まつおか・ゆうき)


1988年5月31日生まれ。神奈川県出身。『ミュージカル・テニスの王子様』の金田一郎役で注目を集め、2004年~2008年まで出演。テレビドラマは『もやしもん』『ろくでなしBLUES』、映画『ガチバン アルティメイタム』シリーズ、『神☆ヴォイス』などに出演。俳優集団NAKED BOYZの結成メンバーとしても多数の舞台を踏む。昨年4月からはバラエティー番組『美男子会』にも出演していた。オフィシャルブログはこちら
http://star-studio.jp/kazmasayuki/
http://ameblo.jp/nb-matsuokayuki/

――9月は主演舞台が2本ありますね。まず、先に行なわれる9月7日~のミュージカル『甲子園だけが高校野球ではない2013』のお話から聞かせて下さい。原作は大ベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の著者・岩崎夏海さんが監修した同名の書籍が原作です。実話が基になり、野球を通じて起った涙無しでは語れない様々な人間ドラマが描かれています。今回は昨年の再演ですが、まず台本を読んだ時の感想から教えて下さい。

「台本を読ませて頂いたあと原作を読みました。台本を頂いた段階で実際にあったお話だと聞いていましたが、とにかく泣けて泣けて。こんな話があるんだろうかと思うようなエピソードばかりで、これをミュージカルで、しかも歌を含めたお芝居を作ったらどうなるのか楽しみだと思いました。主演という緊張感よりワクワク感のほうが強かったです」


――この作品はミュージカルなので、セリフのほかに、歌、ダンスもあります。松岡さんの得意な分野ですね。

「今までもミュージカルは何度かやらせて頂いていますし、ダンスは得意です。歌に関してはどう評価して頂いているかわかりませんが、自分自身はあまり自信が持てていなくて。普段友達からカラオケに誘われても一緒には行かず、ひとりで行きます。そのほうが練習出来ますし(笑)。人前で歌った時、『自分で思ってる程ひどくないよ』とは言われるんですけど、なぜか歌は自信が持てなくて。でも、歌唱力も大事ですが、歌詞に込められた思いをメロディーにぶつければ、観ているお客様にも伝えられるかなと思って歌っています」


――今回の出演者の中には、役者を目指している専門学校生も入っていますね。すでにお稽古も始まっているようですが、去年のメンバーもいらっしゃるのでしょうか。

「7月下旬に顔合わせがありました。今回は再演なので、去年初演の時に共演した方も多数いらっしゃったんですが、新メンバーも半分くらいいて。去年よりはいい意味で和やかな雰囲気です」


――タイトルに2013とついていますが、内容は去年と違うんですか?

「おおまかな内容は同じですが、キャストは変わっていますので、違う部分もあったりして、何曲か新しい曲も入っています」


――1年前に演じたものは、憶えているものですか?

「稽古初日を迎えるまで、正直自信はありませんでした。でもいざ本読みをやらせて頂いたら、結構自然にセリフも出て来たし、自分が歌った曲もイントロが流れた瞬間に自然に歌えて自分でもびっくりしました。意外に憶えているものですね。昨年のステージがとても好評だったと聞いてはいましたが、今年は再演ということもあって、更にその上をいかなければなりません。そこを目指して稽古に励んでいます」


――既に完成したものをワンランクアップさせることは大変なことだと思うのですが、そのために演出家の方から何か話があったり、松岡さんにアイデアがあったりするのでしょうか。

「もちろんお芝居のクオリティーを上げなければなりませんが、その前に新メンバーもいるので、キャスト同士のコミュニケーション取って仲を深め、そこからお芝居に繋げていきたいと思っています。キャスト同士がぎこちなく芝居をしていてもいいものは出来ないと思うので、まずはコミュニケーションを取り、仲を深めてからお芝居に取り組みます」


――松岡さん流のコミュニケーションの取り方は?

「実は、普段の僕は結構根暗で、自分から話しかけたりするのが苦手なんです。だけど自分より年下の子達も結構いますし、去年も主演した先輩という立場なので、自分の興味のある話が耳に入ってきたら自分から割って話に加わったり、積極的に話しかけるように心掛けています」


――年下の方や新しく入った方と接すると、新鮮な刺激がありそうですね。

「やっぱりフレッシュ感が違います(笑)こんこなことを言ったら、年上の方に失礼かもしれませんが、自分にはない元気さや、いい意味で怖いものが無くて。当たって砕けろという感じで怖さが見えないんです。これは今の自分には欠けている部分でもあります。僕は芝居をする時、役のイメージを考えてから臨むんですけど、彼らはとにかくいくつもぶつけて、ダメだったら新たなパターンをやればいいという考え。そういう度胸の据わった感じは僕も学びたいところですね」


――脚本・演出の竹田昌広さんから何か話はありましたか?

「再演が決まった時にお会いした際は、主役として引っ張っていってほしいということのほかに、ストーリーの中で何人もの高校球児のエピソードが入るんですが、ひの一人ひとりにちゃんとスポットが当たるように見せたいから、観ているお客様には全員が主役に見えるようにしたい、セリフがひと言しかない役でも全員に焦点を当てたいというお話がありました。スター選手だけが選手ではなく、周りの支えている人も同じ気持ちで頑張っている物語なので」


――松岡さんはお仕事以外で、これまでチームプレイの経験はありますか?

「野球は小学5年生から中学1年生の夏まで…………」


――なんだか、中途半端な感じですけど…。

「というのも、のちにお芝居の世界に入るきっかけにもなるんですが、元々あまり野球は好きではなくて。でも、うちは野球一家だったんです。祖父と父は野球が大好きで、3つ上の兄も中学、高校と野球をやっていて結構活躍していたんです。その流れだと、当然僕も野球をやるんだろうという空気になって。内心嫌々だったんですが、兄と一緒の学校に入学して野球部に入りました。野球部の合宿って、愛はあるんですが厳しいじゃないですか。そういうのが耐えられず(笑)」


――となると、このお芝居は苦い思い出を噛みしめながら取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

「やはり当時のことを思い出します。野球部の先輩が兄の存在も知っていますから、先輩方に『あいつの弟なんだから、お前も上手いんだろ』と勝手なイメージを持たれて、凄くプレッシャーを感じて。兄は中学から始めて活躍したんですが、僕は小5からやっていたから、兄よりも凄いんじゃないかと余計に期待されて。落ち込んでしまった時期もありました。その時に、兄とは違う分野で活躍したいと思うようになって、芸能界入りを考えたんです。当時は兄とよくケンカもして、兄が嫌な時もあったんですが、兄がいなかったらこの仕事をやっていませんので、今は感謝しています。最近は買い物に一緒に行くくらい仲がいいんですけどね」


――兄とは違う活躍の場が俳優だった理由は?

「最初は見切り発車していた部分があります。そこまで役者に興味があった訳ではなく、なんとなくテレビに出たいという軽い気持ちで目指しました。お芝居をやらせて頂いていくうちに、お芝居の素晴らしさや楽しさを実感して、今となっては、この仕事以外考えられません」


――野球は1年生の夏で辞めましたが、その後部活はやらなかったんですか?

「仕事に専念したので、部活には入りませんでした。事務所に入った時に、3年間ダンスレッスンをみっちりやりました。だからスポーツといえば、僕の中ではダンスになります。のちの舞台にも役立ちました」


――もうひとつの主演舞台『天の赦すところ』についても聞かせて下さい。こちらの作品はこれまで出演した舞台と全く違いますね。管弦劇とはどんな舞台なのでしょうか。お稽古の様子から教えて下さい。

「僕も最初にこの話を聞いた時、“管弦劇”というワード自体想像がつかなくて質問しました。演出家の大日琳太郎さんにお聞きしたところによると、お芝居とは別に音楽と日本舞踊をいっぺんにコラボしたものだと説明して頂いたのですが、その言葉だけでは想像出来ないくらい未知の世界で。その状態のまま稽古に入り、今は稽古が始まって1週間くらいなんですが、芝居を中心にやらせて頂いていて、楽曲を演奏して下さる方とはまだ稽古出来ていないので、いまだに未知の世界です(笑)」


――尺八、マリンバ・打楽器、二十五絃筝、神楽太鼓などの奏者から、ソプラノ歌手、日本舞踊の方まで色んなジャンルの方がいらっしゃいます。衣裳はどんな感じなんですか。

「伊達政宗と息子の秀宗の親子愛の話なんので、鎧をつけたり着物や袴を着て、その時代のものを全員が着ます。ソプラノ歌手の方もお芝居をするのですが、役として歌を歌うので、着物姿での歌唱になるそうです」


――踊りや歌、楽器のスペシャリストが集まられた現場ですね。『甲子園~』とは違い共演されるみなさんは松岡さんより年上の方ばかりなので、また違った刺激を受けることも多いと思います。

「今は大藏基誠さん、藤間琇瀧先生、指揮者の角岳史さんと稽古をやらせて頂いていますが、みなさんその世界のトップクラスの方なので、それぞれの分野に対する情熱や魂が凄いんです。変な言い方ですが、一切手を抜かず、熱いものを全力でぶつけてきます。お芝居は本業ではないのですが、そんなことを微塵も感じさせないようなお芝居で、僕も圧倒されてしまって。よりプレッシャーを感じています」


――大先輩や年上の方の中では、松岡さんはどういう居方で現場にいらっしゃるのでしょうか。

「こちらも主演でやらせて頂いていますが、気持ちは一番下ですし、芸歴としても新人。周りの違うジャンルみなさんから勉強させて頂いて、なおかつ、お芝居のほうでも吸収させて頂ける部分は吸収させて頂き、日々勉強です」


――台本を読ませて頂いたら、とても言葉が難しくて、いい慣れない言葉ばかりでこれは大変なのでは…と思いました。松岡さんはすんなりセリフが入ってきますか?

「僕も最初に台本を頂いた時は同じ印象でした。読み慣れない言葉は多いし、聞いたことのない言い回しだったりして。稽古に入る前の段階で言葉の意味を調べていたんですが、調べてもわからないことだらけ。イントネーションや言葉遣いは稽古に入ってからじゃないとわからない部分もあったので、稽古に入って1週間くらいの間は演出家の大日さんと1対1でイントネーション、言葉遣いの稽古をさせて頂きましたが、やっぱり難しかったです。大日さん曰く、『最近の若い人は間違ったイントネーションを使うので、そこが癖になってしまっている』そうなんです。それでも、直すのは大変だけど、これをマスター出来れば今後も生かしていけるとアドバイスして下さって。今はお芝居の内容より、イントネーションや言葉使いを勉強する時間のほうが長いです」


――指摘されたイントネーションを具体的に教えて下さい。

「“幾千幾万”(頭の幾を強く)は、普段いい慣れない言葉ということもありましたけど、僕のイントネーションは全然違ったので直されました」


――そしてこの台本はセリフの量が多く、セリフの掛け合いも多いです。

「膨大なセリフも大変ですが、今回はセリフ以外にも立ち居振る舞いや、座り方、歩き方も重要です。そのあたりも勉強をしているところです。『天の赦すところ』に関しては、一から全て勉強の舞台です」


――そういう勉強は楽しいですか?

「楽しいです。“初めて外国に来ました”という感じで、見るもの全てが本当に新鮮で。これを全部吸収出来るのかなと考えた時に、更なる今後の楽しみが生まれてくるので、勉強、かつ楽しみながらやっています」


――仙台公演のあとに東京公演ですね。仙台での公演には大きな意味があるようですね。

「仙台の時は東日本大震災の復興祈念公演としてやらせて頂きます。自分の気持ちもより締まるし、熱くなる部分もあるので、被災された方々になんらかの形で、些細なことでもいいのでパワーを与えられたらと思っています」


――これまで、映画、舞台、ドラマなど色々な経験をされていますが、最近は舞台での活動が目立ちます。松岡さんの希望なのでしょうか。

「もちろん映像のお仕事もやっていきたいと思っていますが、舞台には映像とは違った素晴らしさがあります。生ものなので、同じ作品でも毎回違う舞台になるので、その進行形も楽しみだし、即興のセリフの掛け合いから生まれるものの快感もあります。舞台にしかない快感を1度味わってしまうと止められません。リアルなお客さんの反応はテレビだとわかりづらいですけど、舞台はダイレクトです。そこでいい刺激をもらったり、反省点がそこで生まれたり。そこが舞台のいいところだと思います」


――NAKED BOYZでの活動もありますが、松岡さんはどういう立ち位置で動かれているんですか? 先程引っ込み思案なところがあるともおっしゃってましたが。

「普段は引っ込み思案なんですけど、年下の子達を前にすると、僕はそう思っていないんですが、周りからは『ドSだよね』と言われるんです」


――随分、ご自身のイメージと違いませんか?

「年下相手だと結構いじってるらしいんです」


――話しかけなきゃという意識がSっぽく出ちゃうのでしょうか。

「自分自身、そんなつもりはないんですけど、後輩からするとそう見えるようです。でも、そこが逆にいいとも言われます。最初は壁を感じるみたいですが、一回喋るとイメージがガラッと変わって、フレンドリーでいいって。『甲子園~』の後輩達は、『おにぃ~』と呼んで慕ってきてくれて。『やろめよ~』といいつつ、嬉しいです(笑)」


――松岡さんのパーソナルな部分も教えて下さい。ブログを拝見する限り、韓国に凄くハマっているようですね。きっかけを教えて下さい。

「東方神起さんが出演するテレビを見た時、その瞬間、ビビッときました。偉そうな言い方になってしまいますが、5人が5人とも歌唱力、ダンスもクオリティーが凄くて、韓国のグループというのは、こんなにも素晴らしいのかと思ったのをきっかけに、始めはK-POPから入りました。次にドラマ、映画、更には食にもハマりまして。そこから文化のほうにも興味を持つようになり、今では韓国全部が好きになりました。周りの人に引かれるくらいです(笑)。男では珍しいですよね。今、自分にとって韓流がパワーの源になっています」


――『天の赦すところ』は韓国第三の都市・大邱との交流舞台です。縁がありますね。

「使われる楽器の中に神楽太鼓があるんですが、これは韓国の楽器で、バチが細くて高い音を出すそうです」


――では、この作品が韓国で公演する日もあるのでは?

「そんなことがあったらどうしましょう。演出家の方もよく韓国に行かれているようですし、機会があったら是非やりたいです」


――これまでに韓国は何回行きましたか?

「3回で、全てプライベートです。日本に比べると物の値段が安いし、ショッピングモールは朝5時までやっているので夜通し買い物も出来て、自分にとっては夢の国です」


――ブログでは韓国語がよく出てきますが、いつからあのスタイルになったんですか?

「韓国にハマってすぐに韓国語を勉強して。長文は話せないんですが、単語はたくさん憶えました。韓国を好きということをみなさんに知って頂きたかったのと、ファンの方と僕、そしてファンの方同士も韓国好きということで繋がる縁もあると思ったんです。それでブログの文章の中に韓国語を入れようと考えました。松岡のブログといえば、“アンニョン”で始まり、“カムサハムニダ”で終わる印象もつけたくて。今となってはお決まり文句です」


――松岡さんのお部屋に韓国らしさはあるんですか?

「役者で尊敬しているのがウォンビンさんなんですが、韓流ワールドと名付け、ウォンビンさんのポスターを貼ったり、時計やクッションなどグッズを置いています。そのほか、ドラマのDVDコーナー、CDコーナーも作り、幸せな空間にしています(笑)」


――今後は韓国でお仕事をしたい気持ちもあるんですよね。

「韓国語をしっかり勉強して、将来は日韓で活躍出来る俳優になりたいと思っています」


――目指すはウォンビンさん。

「ウォンビンさんのDVDは全て持っていて、研究していますから」


――日本ではどう活動していきますか?

「やっぱりお芝居が好きなので、役者として映像、舞台を中心にやっていきたいと思っています。そして、今年の6月までNAKED BOYZとして1年半やらせて頂いていた、NOTTVの『美男子会』というバラエティー番組で初めてトークにも挑戦しました。そこでバラエティーの楽しさも憶えたので、マルチに挑戦出来ればと思っています」


ミュージカル『甲子園だけが高校野球ではない2013』

監修/岩崎夏海
演出/竹田昌広
音楽/西浦達雄
出演/松岡佑季 渡邉ハ玲奈 馬琴 有福和典 鈴木身来 ほか

甲子園に出場出来るのは一握りの球児だが、甲子園を目指す球児、サポートするマネージャーなどにも数々のドラマがあった…。野球部1年の控えのピッチャー・風間瞬(松岡佑季)を中心に、ナインやその家族の挫折や葛藤をダイナミックなダンスナンバーとともにお届けする。

9月7日(土)~8日(日)大東市立総合文化センター30 サーティーホール
http://musical-kkn.com/


管弦劇『天の赦すところ』

作・演出・作曲/大日琳太郎
出演/松岡佑季 大山大輔 大藏基誠 湯浅桃子 若柳梅京 藤間琇滝 角岳史 松崎太郎 小仁所伴紀 福松子平 崔美季 おのりく 富田沙緒里 大日琳太郎 ほか

9月18日(水)仙台電力ホール
9月21日(土)~22日(日)日本橋公会堂

伊達政宗の書いた漢詩「馬上少年過 世平白髪多 残躯天所赦 不楽是如何」に着想を得て、政宗の長子で宇和島伊達家初代となった秀宗(松岡佑季)の葛藤と苦悩、父子の愛と哀しみを描き、邦楽、洋楽、舞踊と演劇が渾然となり、管弦劇として上演する。
http://www.jipas.net/
http://www.strikingly.com/j-furusato#2

2018年11月
123456789101112131415161718192021222324252627282930
« »


アーカイブ


最近のインタビュー記事