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インタビュー

落合モトキ   (おちあい・もとき)

子供のころから芸能界で活躍している落合モトキ。特に映画では、数多くの話題作に出演しており、錚々たる監督達の現場を経験している。そしてこの夏も続く、落合の出演作。沖縄国際映画祭にも出品された『ハイザイ~神さまの言うとおり~』では、主人公のひとり原沢優太を好演。男女6人の群像劇の中で、見事にその存在感を示した。

撮影/吉田将史 文/服部保悠

プロフィール 落合モトキ(おちあい・もとき)


1990年生まれ、東京都出身。1996年に芸能界にデビュー後、数多くの映画やドラマに出演。2001年には映画『ランニングフリー』で初主演を務め、その後も廣木隆一監督作『4TEEN』、堤幸彦監督作『包帯クラブ』、井筒和幸監督作『ヒーローショー』、佐藤信介監督作『GANTZ』、三池崇史監督作『忍たま乱太郎』などに出演。今年も『11・25自決の日~三島由紀夫と若者たち~』、『東京無印女子物語』が公開され、『桐島、部活やめるってよ』(8月11日)、『るろうに剣心』(8月25日)、『ハイザイ~神さまの言うとおり~』(9月1日)の公開が控えている。

――『ハイザイ~神さまの言うとおり~』では沖縄国際映画祭に参加されたと思うんですが、映画祭に参加すること自体が初めてだったとか。

「はい。大変気持ちのいいものでしたが、恥ずかしかったです。あんなにたくさんの人から見られることってそうないので」


―― もう一度レッドカーペットを歩いてみたいとは思いませんでしたか?

「色んなところには行ってみたいですね。高崎映画祭とか。友達が行ったらしくて、凄くいい映画祭だって話を聞いたんです。あと、凄くコアな作品というか、マイナーっていう意味じゃないんですけど、映画好きの人が観るような作品が上映されてますよね。そういう出演者の方とも接することが出来ると思うし、オフの時の姿が見られると思うので行ってみたいです」


――『ハイザイ』は1週間で全て撮ったとお聞きしたんですが、やはり相当ハードな現場だったんですか?

「1週間で撮るというのはハードなスケジュールでしたけど、個人的には事務所の先輩でもあるともさか(りえ)さんと一緒のシーンがほとんどで……なんか変な緊張がありました。今回初めてお会いしたっていうのもあったと思うんですけど。でも、撮影に入ってからは色々とお話出来るようになって。旦那さんのスネオ(ヘアー)さんも映画に出演されているので、おふたりにご飯に連れていってもらったり楽しい現場でした。だから過酷な現場だったなという印象はないんですよね。夜のシーンがなかったので、日が沈んだら終わりっていうのもありましたし。ただ、天気には悩まされました。晴れ間で撮っていても、次の瞬間雨が降り始めたりするんで、シーンとシーンの繋がりを考えると難しい現場でしたね」


――撮影中にともさかさんとお話したり食事に行ったというのは、意識的に落合さんから行動されたんですか?

「車内でふたりっきりの密室のシーンが結構あって。セリフ合わせを頼みたいけど先輩だし……と思ってひとりでぶつぶつセリフを言ってたら、ともさかさんがさっと合わせてくれたんです。その時は、“あっ! 嬉しい”って(笑)。あとはちょっと意識的に、“東京事変のファンなんですよね?”って話かけたり」


――台本を最初に読んだ時に、“どういう風に展開されるんだろうと思った”というような記事を読んだのですが、先が読めない作品を演じるのは落合さんにとっては楽しいものですか? それとも難しいものですか?

「楽しみたいんですけど、後悔しちゃうこともあります。最後こうなるんだったら、あの時ああしてたほうがよかったんじゃないかとか。そういう後悔をしてしまうので、まだ楽しめてはないです」


――後悔するなら、話の展開含めてわからない部分を監督に聞いてしまう?

「東京で監督(福永周平、泉尾昌宏)と読み合わせをする時があったので、結構質問させてもらいました。あとは、長いセリフがあったのでたくさん読み込んでおきましたね。今年に入って、久々の長ゼリフだったので、ちゃんと読み込んでおこうと。『ハイザイ~』の前に撮影した『桐島、部活やめるってよ』も長ゼリフがなかったんです。“あぁ、そうだね”みたいな会話ゼリフが多かったので。だからちゃんと言えるように準備しておきました。まあ、普通のことなんですけど(笑)。でもどの作品でもちゃんと読み込んではいきますよ。自分はお風呂で覚えるタイプなんです。だからよく台本がふやけちゃってます(笑)」


――台本に載ってない役のバックボーンとか、自分なりに考えたりしますか? 例えば『ハイザイ』で落合さん演じた原沢は、なんでヤクザになったのか? 家族構成は? とか。

「原沢の場合、家族構成は特に悪い訳ではなく、どちらかというと恵まれているじゃないかなと。あの組にはただの憧れで入ったような軽い感じだと思います。でも組長(スネオヘアー)を原沢は大尊敬しているので……というような感じのバックボーンは考えました。あとはイヌ。イヌとの関係性というかバックボーンは色々考えました。個人的にはイヌよりネコ派なのですけどね(笑)」


――考えたバックボーンは監督に伝えるんですか? それとも自分の中だけで留めておくのか。

「基本的には自分の中だけで留めておきますね。そういうことを監督と話すのが、ちょっと恥ずかしいというか。演技に直接的に影響しそうなところだったら、コソコソっと監督のところに行って、“このシーンはこうなってますけど、原沢はきっとこうなので、こうしてもいいのかなと思うんですが…”というようなことは話します。みんなの前では恥ずかしいので、コソコソっと」


――現場では予想外なことが色々と起きると思いますが、落合さんはその予想外を楽しめますか?

「『ハイザイ~』では天気が予想外過ぎて、そればっかりは楽しむ余裕はなかったですけど……、あとは予想外なことがあんまりなかったんですよね。笑い飯の西田さんが出演されるっていうのは予想外でしたけど(笑)。でも西田さんは凄く寡黙で丁寧な方だったので、そこはテレビで見てた西田さんの印象とは違いました。“明日早いんで、今日はもう帰ります”みたいな。ほかの方もテストで固めていったものを本番でも演じてたので、そんなに演技面で焦ったことはなかったんですけど、ともさかさんに言い寄られるシーンがあって。結構体が密着するシーンだったんです。あのシーンは天気の関係で一発本番だったんですけど、予想以上にともさかさんが密着してきたので、本当のニヤケが出てしまいました(笑)。あとは、ともさかさんを叩くっていうシーンがあったんですけど、そこは押すに変えさせてもらいました。原沢のことを考えると、そこで叩くまではしないだろうと思ったので。自分が現場で変えたっていうのはそこぐらいです」


――今回演じた原沢は、イヌが大好きなかわいらしい部分と、ちょっとしたことでキレてしまう部分があり、両極端な二面性のある役でしたね。

「イヌが好きなところは、本当に大好きだってことが伝わるように熱弁して“こいつかわいいな”って思ってもらえるぐらいでいいのかなって。逆にキレてるシーンでは、怒りの感情を振り切って周りが見えてないぐらいでいいのかなとは思ってましたね。観てる人にとってわかりやすいというか。ちょっと大幅にやったというのはあるかもしれません」


――完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

「こういう風に仕上がったのか~というか、自分でも撮っていてどうなるのかわからない部分が観て納得出来ました。長ゼリフのシーンも、撮影では一気に言ってるんですけど、それをプツンプツン切られていて、こういう見せ方も面白いなぁと思ったり。あとは、自分が出ていないシーンがどうなっているのかわからなかったので、そういう部分は純粋に作品を観てる感じで、自分も楽しめました」


――『桐島~』は同年代の共演者が多い作品でしたが、芸歴でいうと落合さんはかなり先輩ですよね。

「お恥ずかしながら」


――みんなを引っ張っていこうみたいな意識はあったんですか?

「ないです。全然ないです。でも、『桐島』の時は、“みんなぶつかるんじゃないかな”って思ってて。映画に出るのが初めての人もいたし、同年代の人達が一緒に空間に長くいる訳ですから。だから、もしそうなったら止めよう! とは思ってました(笑)。現場では、ムードメーカーとまではいかないですけど、みんなが楽しく現場にいられるように、結構ふざけてましたね」


――落合さんが演じた竜汰役のような感じで、普段もいたってことですね。

「そうですね。みんな真面目でした。演じた竜汰のような感じでいたほうが、現場の雰囲気的にも楽だったというのもあります。竜汰が結構素に近かったというのもありますし」


――『桐島~』は原作を読んでから撮影に入られたんですか?

「読まなかったです」


――原作がある作品は、読まないで撮影に臨まれるパターンのほうが多いんですか?

「はい。ほかの作品もほとんど読まないですね。『GANTZ』のように元々マンガを読んでたような作品もありますけど、この映画に出ることが決まったから原作を読もうということはないです。偶然原作を読んでたか読んでないかぐらいで」


――あまり原作のほうに引っ張られたくないという思いもあるんですか?

「それもありますね。『桐島~』は原作を読んでないので比較は出来ないんですけど、映画の評判はいいと聞いているので嬉しいです」


――『GANTZ』のように原作を読んでいた時は、やはり原作を意識しちゃいますか?

「『GANTZ』の時はしました。特にマンガだったので、画も見てる訳じゃないですか。どうしても意識はしちゃいますよね」


――自分の出演作は客観的に観られますか?

「1回目は無理ですね」


――何回も観れば?

「ん~……本当に長い年月が経たないと客観的には観られないかもしれないですね。1回目は自分を目で追っちゃうし。2回、3回観ても、どうしても自分を中心に観ちゃうので」


――自分の出来は、どのような評価基準を持って観ていますか?

「評価基準というか、とにかくワンカットワンカット後悔しちゃうタイプなんです。もちろん現場ではどのワンカットも、その時出来る全ての力を出して完全燃焼しているつもりなんですけど、出来上がった作品を観ると、“もっとこういうやり方もあったかな”って思いながら観ちゃうんですよ。だから個人的にやり切ったと結果的に自分で思えるような作品はないですね。唯一、『ヒーローショー』だけは別で。あの作品は井筒監督に色々言われながら撮ってたので、現場で常にへこんでたんです。やり切った感もなくて。でも出来上がった作品を観た周りの方から、“凄くよかったよ”って声をたくさんかけて頂いてので、マイナスからのスタートで完成後にちょっと気持ちが上がってトントンになったかなって作品でした(笑)」


――そんな落合さんが、“凄い!”と思う俳優さんは?

「結構たくさんの役者さんとご一緒させて頂いているんですけど……、『極道めし』で共演させて頂いた勝村(政信)さんと木下(ほうか)さんは好きでした」


――好きでした?

「好きです。いや、凄い俳優さんだなって思います。さっきまで全然プライベートな話をしてたのに、そのテンションのまま本番が始まってもすぐに切り替えられる人なんですよ。あんな風になりたいって思います」


――落合さんは、本番前は集中したいタイプですか?

「僕も一緒にお話してるんですけど、なんかあのふたりは違ったんですよね。多分、自信があるから、直前まで関係ない話をしてても大丈夫なんだろうし、実際に芝居にはなんの支障もないし。自分にはそこまでの自信はなくて、やっぱり不安な部分がいつもあるので、あのふたりのように強い人になりたいですね」


『ハイザイ~神さまの言うとおり~』

監督/福永周平 泉尾昌宏
出演/落合モトキ ともさかりえ 深水元基 吹田早哉佳 ALISA MIINA ほか
配給/アルゴ・ピクチャーズ

沖縄で人々の運命を占うユタと呼ばれる巫女。ボスの命令でひとりのユタを探しにお店に入って来た原沢(落合モトキ)は、万引き中の深谷(ともさかりえ)と遭遇。その場凌ぎで店長に扮した深谷は、ユタとして原沢に連れて行かれてしまう。そのころ、沖縄に遊びに来ていた橋元(深水元基)と工藤(吹田早哉佳)。誰かから謎の嫌がらせを受ける橋元は、過去に自分と遊んだ沖縄の女が怒っていると勘違い。一方、コックリさんで余命10年と告げられた地元の女子高生Alisa(ALISA)は、友達のみいな(MIINA)とユタに会いにお店を訪れるが…。
9月1日よりキネカ大森ほかロードショー
(C)2012映画「ハイザイ~神さまの言うとおり~」製作委員会

2019年01月
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