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インタビュー

土屋太鳳   (つちや・たお)

独自の理論で教育現場の問題に立ち向かう教師の奮闘を描いた人気ドラマ『鈴木先生』がスクリーンで帰ってくる! ドラマ同様、生徒の中でスペシャルファクターとなる存在が、土屋太鳳演じる小川蘇美だ。緋桜山中学校の2年A組を受け持つ鈴木先生は、ひとりの女生徒・小川蘇美を、理想のクラスを作るうえで欠かせない人物としていた。しかし彼は、小川を気にするあまりに彼女の魅力に取りつかれ、よからぬ妄想を繰り広げてしまう。ミステリアスで落ち着いた雰囲気の小川蘇美とは反対に、土屋太鳳は、天真爛漫さと17歳らしいあどけない表情が印象的だった。

撮影/吉田将史  スタイリスト/城田 望(カインド)  ヘアメイク:滝本絵里子(山田かつら) 文/池上愛

プロフィール 土屋太鳳(つちや・たお)


1995年2月3日生まれ、東京都出身。07年『トウキョウソナタ』でスクリーンデビューを果たす。主な出演映画は『釣りキチ三平』(09年)、『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年)、『日輪の遺産』(11年)。ドラマでは『龍馬伝』(10年)、『桜蘭高校ホスト部』(11年)、NHK連続テレビ小説『おひさま』(11年)、『黒の女教師』(12年)など。13年に『果てぬ村のミナ』で映画初主演。
公式ブログ http://ameblo.jp/tao-tsuchiya/

――『映画 鈴木先生』凄く面白かったです。

「嬉しいです。ありがとうございます!」


――大画面で観た『映画 鈴木先生』はいかがでしたか。

「客観的に観ることがなかなか出来ませんでした。頭の中で台本をめくりながら映画を観ているような感覚というか。“あ、次にあのシーンが来る!”と、ドキドキしながら観させて頂きました(笑)」


――“あのシーンが来る!”っていうのは、具体的にどのシーンですか?

「鈴木先生(長谷川博己)の妄想シーンです。私が演じている小川蘇美ちゃんが、鈴木先生の妄想対象になってしまうのですが、そのシーンになると“やばいやばい!”って、なかなかスクリーンを観ることが出来ませんでしたね。試写は、刈谷友衣子ちゃん(平良美祝役)と、未来穂香ちゃん(中村加奈役)と一緒に観たんですが、みんな自分の出演シーンが近づいてくると、恥ずかしくなって下を向いちゃっていました(笑)」


――連続ドラマが終わって映画撮影に入るまでは、どれくらいの期間があったのですか?

「約10カ月くらいです」


――土屋さんくらいの年齢だと、10カ月の月日って、物凄く変化がありますよね。

「男の子は、ドラマの時に比べてみなさん背が伸びてますし、声も低くなっています。女の子は、より女の子らしくなって。現場に入ってみんなに再会して“人ってこんなに成長するんだ!”とびっくりしました。見かけだけでなく、演技に対しての向き合い方など、みんなの考え方がプロフェッショナルになっていたんです。ドラマを撮影していた時は、学校の延長上みたいなところがありました。もちろんお仕事なのでしっかりやっていたつもりですが、クラスメイト役のみんなとは、撮影時もプライベートそのままという感覚が強かったです。でも映画では、そうじゃありませんでした。この10カ月の間にみんな色んな作品で経験を重ねていて、びっくりするくらい大人になっている子が多くて。私も負けていられないなと思いました」


――土屋さんは、この10カ月どんな作品に携わったのですか?

「一番印象に残っているのは、テレビ東京で1月に放送された、新春ワイド時代劇『忠臣蔵~その義その愛~』です。出演シーンは短かったのですが、長回しで撮影したので、色々と勉強になることが多い作品でした。自分の中で役を作りすぎないほうがいいんだなということを、その時は学びました。監督のおっしゃることは、きちんと消化しなければいけないと思うので、あまり作りすぎるのはよくないなと。それに、自分だけで役について考えるのではなく、監督や共演者の方々と作り上げていくことが大事だと思います。なので『映画 鈴木先生』では、もちろん蘇美ちゃんのことを自分なりにしっかりと考えていくんですけど、“ここは絶対こうする”と決めてしまわないで、その時の現場の空気や、監督や共演者と話して感じたことを落とし込んで演じるようにしました。この10カ月間で、自分もみんなと同じように成長出来たかどうかはわからないですが、蘇美ちゃんの言葉の一つひとつを、ドラマの時以上に噛みしめていくように心がけたつもりです


――ドラマに引き続き、鈴木先生の妄想(=小川病)が、映画にも登場します。

「妄想シーンなので、おかしな設定ですが、現場は本気モード。スタッフさんも長谷川さんも私も、必死に妄想シーンを演じています。ふざけて面白く作るのではなく、真面目に演じることで生まれる面白さを大事にしたいなと。監督も妄想シーンの演出は常に一生懸命です。ただモニターの前でニヤニヤしていることが多いですけど(笑)。“めちゃめちゃいいね~(ニヤニヤ)”みたいな(笑)」


――今回の妄想シーンは、新鮮でした(笑)。

「ちょっと滑舌が甘かったかなと、自分なりに反省する点はあったんですけど、楽しんで頂けたのなら凄く嬉しいです!」


――詳しく話せないのですが、蘇美ちゃんがああなるとは、ちょっとびっくりしましたけど(笑)。

「でも私は、小川蘇美ちゃんとして生きること全てが幸せな時間だったので、どんなシーンでも私にとっては素敵な時間でした」


――ドラマの中で、特に印象に残ったのが「左手問題」の回(ドラマ第2話放送)でした。この時に活躍した出水正君(北村匠海)が、映画でも鋭い主張をしてきます。

「あの放送は、うちの母も一番感動したと話していました。マナーって、なかなか表立って問題にすることってないですよね。だけど、出水君のように、マナーで苦しんでいる人もいるんだなと気づくことが出来ました。(注:出水は給食の時間、向かいの席の女生徒に対して“げりみそ”などの不快な発言をし続けた。その理由は、給食で左手を添えずに食事をする女生徒のマナー不足を不快に思っての行動だった)母もお行儀がよいほうで、『お母さんもこう思ったことがあるのよ』と話していました。些細なこと程、実は大切なんですよね。そして、このことは話し合いですぐに解決出来ることでもなくて。色んなことを考えさせられるお話でした」


――そんな出水君ですが、今回は、学校の生徒会選挙に対して抗議します。これも一見、学校の中の話ですが、選挙システムや制度の在り方についてなど、唸る部分が多かったです。

「私も生徒会役員を決める投票は、仲がいいお友達とか、人気がある子に投票したことがあります。でもその1票って、凄く大事な1票なんですよね。この1票で結果が変わってくるかもしれない。自分が投票した1票というのは、きちんと責任をとるべきだし、そのこともしっかりと考えてから投票すべきだなと思います。『映画 鈴木先生』には、いつも考えさせられるシーンやセリフが詰まっているので、今回も色々と考えさせられました」


――鈴木先生の考えについては、どう思いますか?

「問題児だった卒業生が学校を訪れて、『鈴木先生に会いに来る卒業生っているの?』と言われるシーンあるじゃないですか。鈴木先生の主張は、パッと見でわかる問題児じゃなく、一見真面目に見える生徒にこそ闇があると感じて、問題児に構うことはなかったというものでした。その意見は、私もなるほどと思います。いわゆる問題児と呼ばれるような人って、自分の感情を行動にしているのだから、自分の言いたいことも素直に吐き出せると思うんです。でも、真面目な人は、まず頭の中で色々と考えて、それを行動に出したり、意見を吐き出すってことがなかなか出来ない人が多いんじゃないかと。だから真面目な人ほど、注意深くするという鈴木先生の意見は、私も共感しました」


――蘇美ちゃんも、頭の中で考えてから物事を発言するタイプですよね。

「そうですね。私は蘇美ちゃんとは真逆で、思ったことをすぐ口にしてしまうタイプなんです。それはいいことでもあるんですが、悪いことでもあって…。蘇美ちゃんは、頭の中で考えながら、一言を大事に噛みしめて発言する女の子です。なので、私ももっと考えてから人に伝えなきゃと思っているんですけど…なかなか出来ないですね」


――土屋さんのブログを読んでいると、色々と考えながら文章を書いていらっしゃるので、蘇美ちゃんぽいなと思ったんですけど。

「そう言って下さると凄く嬉しいです! ブログの書き方は色々あると思うんですけど、私は“楽しかった”だけじゃなくて“○○○だから楽しかった”っていう部分を伝えるように心がけています。そういうことを色々考えていると、凄く長文になっちゃうんですよ(笑)」


――“月曜日は○○のことを書いて、火曜日は○○のことを書こうと思います”と、ブログの更新内容を書いているのには、思わず笑ってしまいました(笑)。

「予定を立ててみたのはいいものの、学校の試験と重なって、ブログの更新が出来ない週があったんです。更新を楽しみにして下さっているファンの方に申し訳なかったですね。これからは頻繁に更新したいと思います」


――部活動もやられているんですよね?

「はい。ダンス部に所属しています」


――ダンスは元々やられていたんですか?

「3歳のころからクラシックバレエを習っていましたが、ダンス部は高校になって初めて入りました」


――体育会系の部活は厳しいイメージがあるんですけど、どうですか?

「実は昨日、先生に怒られてしまって練習が中断しちゃったんです。なので今日は、朝の7時15分に学校に行って、7時半から8時まで走り込みをして、そのあと部員みんなで『練習を再開させてください!』って先生にお願いをしてきたところです」


――あ、部活動っぽい(笑)!

「はい(笑)。大会にも出ているので、みんな全力投球で臨んでいます」


――学業と女優業に部活動まで…大変じゃないですか?

「私がこういうお仕事をしているのに部活にも参加出来るのは、先生と部員の理解あってこそだと思います。私には全部が大切なことなので、どれにも力を抜きたくないんです。だから、先生と部員のメンバーには心から感謝していますし、そんな仲間と出会えてとても嬉しく思います」


――大切な軸となっている女優業・お芝居とは、土屋さんにとってどういうものですか?

「う~ん…“感謝すること”かな…。お芝居って難しいなと思うことがたくさんありますが、たくさんの人の支えがあって生まれてくるものだと思っていて。『トウキョウソナタ』という映画に出させて頂いた時、香川照之さんと2日間ご一緒させて頂く機会がありました。その時に香川さんから『どうして僕達が役者をやれているのかというと、それはスタッフをはじめとする周りの支えがあるから。だから、絶対に感謝を忘れてはいけないよ』ということを教わりました。その言葉が心にずっと残っています。私が女優をやっていることは、“感謝を忘れない”っていうことなのだと思います」


――素敵な教えですね。

「はい。香川さんとご一緒させて頂いた2日間で、色んなことを教わった気がします。今でも連絡を取らせて頂いていて、とても尊敬する役者さんです」


――『映画 鈴木先生』でも感謝することが多かったですか。

「そうですね。みなさんの支えあっての自分だと思います。『映画 鈴木先生』は、全部が素敵なシーンです。自分が演じてるから蘇美ちゃんのシーンを観てほしいっていうのはなくて、全てのシーンを観てほしい。それだけの思いが詰まってます。ドラマの撮影中、東日本大震災が起きて、撮影がストップした時期がありました。ちょうど震災があった時は、日活撮影所で収録をしていて、吊るされたセットがグラグラ揺れていました。食堂に一旦避難してテレビを点けると、映像で悲惨な情景が流れていて、全員言葉を失いました。その3週間後、撮影が再開されたのですが、『こんな時にドラマを作るべきなのか何度も話し合いを重ねてきましたが、こういう時期だからこそ、誠意を込めてよいドラマを作りたいと思います。この作品を被災地にも届けましょう』とスタッフさんがおっしゃって…。撮影が再開された日のみんなの決意は、とっても大きなものでした。そういう思いで作ったドラマが映画化になることが出来て本当に嬉しいです。全員の決意が、映画を観て下さる方々に届けばいいですね」


――屋上で蘇美ちゃんがジャンプするシーンは、観ている人の心をぐっと掴むと思いますよ。私もじーんときました。

「あぁ、嬉しいです。みなさん何か感じて下さると嬉しいです」


――あのシーンはCGだと思ってたのですが、実際に屋上から跳んでるんですよね?

「はい。ワイヤーに吊るされて思い切りジャンプしました」


――高いところは平気ですか?

「得意ではないですけど、不思議と撮影時は怖くなかったです。多分、蘇美ちゃんとして跳んだから怖くなかったのかも。カットがかかって、ふと下を見たら、足元に何もなくて空中に浮いていたので、その時はちょっと怖かったです(笑)。あのジャンプが出来たのは、きっと、蘇美ちゃんにパワーをもらっていたんだと思います」


『映画 鈴木先生』

出演/長谷川博己 臼田あさ美 土屋太鳳 風間俊介/田畑智子 斉木しげる でんでん 富田靖子 ほか
原作/武富健治『鈴木先生』(双葉社刊/漫画アクション連載)
監督/河合勇人 脚本/古沢良太
音楽:大友良英
主題歌:androp「Rainbows」(WARNER MUSIC JAPAN/unBORDE/respire)
企画・制作プロダクション:ROBOT
製作:映画「鈴木先生」製作委員会(テレビ東京/角川書店/双葉社/ROBOT/電通/ミラクルヴォイス/テレビ大阪/GyaO!/ワーナーミュージック・ジャパン)
共同配給:角川書店/テレビ東京
配給協力・宣伝:ミラクルヴォイス
(C)2013映画「鈴木先生」製作委員会

緋桜山中学の2学期、鈴木先生(長谷川博己)の担当クラスは、生徒会選挙と文化祭で披露する演劇の練習にと、慌ただしい日々を送っていた。休暇を取っていた足子先生(富田靖子)も復帰し、再び不穏な空気に。そんなある日、演劇の練習に使っていた近所の公園に、不審者がたむろしているということで喫煙所が撤去されてしまう。唯一の憩いの場だった公園を奪われた、卒業生のユウジ(風間俊介)とミツル(浜野謙太)はショックを受け、これが後に思いもよらぬ展開を生む……。
2013年1月12日全国ロードショー

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