プラスアクト

インタビュー

古川雄輝   (ふるかわゆうき)

現在放送中のドラマ『僕とスターの99日』で、佐々木蔵之介演じる俳優・高鍋大和の付き人役として、コミカルな演技をみせている古川雄輝。2010年に芸能界入りしてからまだ日は浅いものの、ドラマ、映画、舞台と、コンスタントに出演を続け、2012年も出演映画が2本控えている。今後の活躍が期待される若手俳優に、間違いなく入るであろう期待の新人だ。

撮影/吉田将史  文/池上愛

プロフィール 古川雄輝(ふるかわゆうき)


東京都出身、1987年12月18日生まれ。7歳よりカナダへ移住。16歳で単身ニューヨークへ。2009年、ミスター慶應コンテストでグランプリに輝き、2010年、キャンパスターH★50with メンズノンノにて演技力を高く評価され、審査委員特別賞を受賞。主な出演作は、映画『高校デビュー』『men's egg Drummers』『富夫』、ドラマ『アスコーマーチ〜明日香工業高校物語〜』『となりの悪魔ちゃん ~ミズと溝の口~』。映画出演待機作に『ロボジー』『Miss Boys 友情のゆくえ編』がある。現在、ドラマ『僕とスターの99日』がフジテレビ系で放送中。来年4月には舞台『エンロン』も控える。

――ドラマ『僕とスターの99日』では、佐々木蔵之介さん演じる高鍋大和との絡みがとっても面白いです。

「蔵之介さんって台本どおりじゃなくって、セリフや行動をどんどん変えて来るんですよ。一応僕も演技プランを練るんですが、数倍面白い演技で蔵之介さんは臨んでくるので、毎回驚かされるというか、日々勉強です」


――例えばそれは、どんなシーンですか?

「代表的なのがビンタ。僕の演じる夏目純吉を高鍋さんがビンタするんですが、あれも台本には全く書いてありませんでした。本番直前のリハーサルでパーンって叩かれて、そのあとのセリフも全部アドリブ。監督も“いいね、それ!”ということで、本番でも高鍋さんからビンタを喰らいました(笑)。第1話でビンタされたもんだから、その後の台本にも『夏目はビンタされる』って小さく書かれていたりして、もう4~5回はビンタされましたね」


――佐々木さんの演技を受ける側としては、どんな心構えなのでしょうか?

「凄く面白くしてくれるので、僕的にはどんどんやってほしいです。それにおいしいですしね(笑)。ほかにも、“ファイヤー!”って叫びながら高鍋が自転車をこぐシーンがあるんですが、これも“ファイヤー”なんて台本には書いてありません。蔵之介さんは、想像を遥かに超える演技をぶつけて来る方。ほんとに凄いです」


――現場の雰囲気はいかがですか?

「凄く優しい方ばかりです。こんな現場はなかなかないんじゃないかなって思うくらい。主演の西島秀俊さんがとても優しい方なんですよ。キム・テヒさんはじめ、キャストのみんなに話しかけてくれて。きっとそういう雰囲気が、現場にも伝わってるんじゃないかと思います」


――ドラマは『アスコーマーチ~明日香工業高校物語~』『となりの悪魔ちゃん ~ミズと溝の口~』に続き3作目です。映画も『高校デビュー』や公開を控える『ロボジー』など、コンスタントに出演を重ねてらっしゃいますが、演技に対しての取り組み方に変化はありましたか?

「特にドラマをやり出してから随分と変わりました。映画は4本くらい撮影経験はあったんですが、ドラマは今年4月の『アスコーマーチ』が初めてです。映画とドラマってこんなに違うんだなっていうことに気づかされたし、この作品で凄く鍛えられたと思います」


――具体的に、映画とドラマはどういう違いがありますか?

「一番の違いは割り本(台本とは別に、その日に撮影するシーンのカメラワークが細かく書いてある台本のこと)があるかないかですね。どこでどう自分が映るかがわかるので、カメラワークを知ってるのと知らないのでは、全然違うと思うんです。やっぱり知っていると逆算しながら演技出来るし。だからドラマをやり始めてからは、やたらとカメラの位置や映り方を気にするようになりました。このカットはひとりを狙っているから映り込まないようにしようとか、このセリフの時はここに立ってないと被っちゃうとか。映画の時はカメラなんて全然意識してなかったし、むしろカメラはないものとして撮っていました。割り本を見ていると、なんでこのカットを狙っているんだろう? っていう演出の意図が少しずつわかってきたりもします。監督に“ここはこう狙ってるよ”と言われると、こんな意図だから狙ってるのかなって考えるようにもなって。見方が随分と変わりましたね」


――ご自身の出演作はご覧になりますか?

「見ます。なんでここはカットだったんだろう? なんでこのシーンはこっちが使われたんだろう? って毎回考えながら見ています。多分、視聴者にとっては、どうでもいい部分を見てると思いますよ。『なんで俺はリアクションする時にこっち向かなかったんだ!』とか。視聴者にとってはどうでもいいことなんだろうけど、僕としては、こっちに顔を向けてたら映ってたのになあって……。なので、楽しくはないですよね(苦笑)。反省点ばかり見つかるので、自分の作品を見るのはあまり好きじゃありません」


――『アスコーマーチ』ではヤンキー役でしたが、自分とはかけ離れた役を演じるとまどいはありましたか?

「そうですね。映画で演じた役は、結構自分に似た男の子を演じることが多かったので、自分に置き換えて演じることが出来た。だけど『アスコーマーチ』では、ヤンキー役。僕はヤンキーじゃないし、友達にもヤンキーはいなかったので、どうしていいかわからずに悩みましたね」


――その時はどうやって克服しましたか?

「ヤンキーのドラマや映画を見て研究しました。だけど僕がやると僕のヤンキーになっちゃうんで……他の人が演じるヤンキーを参考にしても、結局そうはならないんですよね。監督から“顔が怖くない!”って言われましたけど、そもそも僕は顔の作りが怖くないし(笑)。だからどうやって怖い表情を作れるかやってみたり……。ただ、コミカルな演技を求められることが多かったので、ドラマ向けというと変かもしれませんが、わかりやすい表情の作り方を心がけました。例えば鼻をこする仕草でも、カメラが僕を抜いている時のタイミングを狙ってやるとか」


――その気づきは、自分で気づくんですか? それとも周りから教わるんですか?

「4割は周り、6割は自分です」


――俳優初めてまだ1年足らずで、そこまで自分で気づくことが出来る人はなかなかいないと思いますよ。

「きっと共演者に恵まれているからだと思います。特に『アスコーマーチ』がそうです。僕と同世代の子ばかりでしたが、みんな演技がめちゃくちゃ上手くて。その中でも飛びぬけて上手い人がいたんですよ」


――どなたかお聞きしてもいいですか?

「金井勇太君ですね。圧倒的に上手い。その子の動きをずっと見ながら勉強していました。金井君の演技で、凄く印象的なシーンがあるんです。普通、机を挟んで向こう側にいる人のところに行くときって、ドアをガラガラっと開けて机をよけて、その人のところに向かいますよね? そういうシーンの撮影だったんですが、金井君は、ヤンキーはそんなことしないって言って、ドアを開けたら、ズカズカと机の上を登って歩いたんです。それは監督からの指示でもなんでもなくて、自分で考えてやった行動。やっぱこの人は考え方が全然違うなって思いました」


――なるほど。

「しかも机の上に立つのって、画としても凄く目立つじゃないですか。金井君は全部それを考えてやっていました。そういう演技を間近で見ていたから、学ぶことが出来たんだと思います。演技の上手い人を挙げろって言われたら、間違いなく蔵之介さんと金井君を挙げます」


――自分の出演作以外に、ドラマや映画は見ますか?

「ドラマは録画出来るものは録画して、時間のある時に一気に見ています。映画は最近なかなか観る機会がないけれど、観たあとは、携帯に思ったことをメモしたりしますね」


――それは何をメモするんですか?

「監督と今後ご一緒する機会があったら、その時にきちんと言えるためにメモしています」


――へえ! そうなんですか。もしかして自分のインタビューも読んだりしますか?

「読みますね」


――事前にこんなこと言おうって考えるとか?

「そこまではしないです。あまり話すのは得意ではないので、いい意味で気軽に臨もうと思っています。友達と話す感覚というか。だからこうやって今も話すことが出来るんですけど、共演者となると話は別です。人見知りな性格というのもあるけど、みなさんお仕事で来ている訳じゃないですか。なので自分から話しかけるということはほとんどしないですね。もちろん自分が主役の場合は、話しかけたりしますけど」


――大学時代はダンスサークルの代表を務めてらっしゃったそうですね。先程から話を伺っていると、向上心や学ぼうとする力が凄く感じられるのですが、サークル時代は、どんな代表だったんでしょうか?

「相当厳しかったと思いますよ。ダンスを真面目にやっていたので、“楽しそうだからちょっとやってみよう”みたいな後輩がいると……厳しく注意してました。だから“あの先輩超こえ~”とか思われてたでしょうね(笑)」


――幼少時代から中学まではカナダで過ごされいました。高校は単身ニューヨークに渡ったそうですが、その理由を聞かせて下さい。

「とにかく日本人の学校に行きたかったんです。でも日本語がその時はあまり上手くなくて。高校はニューヨークにある慶應義塾ニューヨーク学院に進学したんですが、そこは英語のテストで受けられるんですよ。だからその学校に進学して、僕だけ寮生活を始めました」


――なぜ日本の学校に行きたかったんですか?

「やることがないんですよね、カナダって。まずコンビニがない。僕が住んでいた地域は、10分以上歩かないとコンビニはありませんでした。あとは娯楽がない。学校の友達と、カラオケ行こう、ゲーセン行こうということが出来ないんです。一番近いところでも、電車で40分くらいかかりました。それに、なんか日本人と遊ぶほうが楽しかったんですよね。だからずっと日本に行きたくてたまらなかったんです」


――高校卒業後は慶應義塾大学に進学し、2009年にミスター慶応に輝きます。

「毎年うちのダンスサークルの代表がミスターに出場していたということもあって、僕も代表をやっていたので、じゃあ出てみようということになりました。その頃の僕は就職活動の時期だったんですが、大学ではダンスばかりでほかのことは何もやってこなかった。そんな時に高校の同期に誘われたので、タイミングがよかったんですよね。そこでミスターになったのがきっかけで、ホリプロの新人発掘オーディションを受けました。俳優になりたかった訳じゃないけど、何事も経験だなと思ってオーディションに出場しました。といいつつも、出るからにはグランプリを取りたいじゃないですか。僕はグランプリを取ったら就職活動も辞めて、受かっていた大学院も進まずにそのまま芸能活動をやってみようって考えてたんです。だけど結果は、グランプリではなく審査員特別賞。だから最初は、芸能界に入るのを止めようと思っていて。だけど、このまま普通に就職したり大学院に進んで、少しでもつまらないと思った時に“なんであの時、芸能界に進まなかったんだ”って後悔すると思ったんです。それが嫌だったから、俳優をやってみようと決意しました。でも最初は全然仕事も決まらなかったんですよ」


――オーディションを受けては落ちての繰り返し?

「そう。色々受けましたね。バスケットをしに行くオーディションなんかもありました(笑)。でも全然決まらなくて。ようやく決まったのが、『恋ばば14歳』という舞台と、映画『高校デビュー』です」


――『高校デビュー』では主要な役を演じられていましたが、決まった時はどんな気持ちでしたか?

「え? ほんとに? っていう感じ。決まると思ってなかったし、今回もまた落ちてるんだろうな~って思っていたので、決まったと言われても現実味がなかったです。なんとも言えない気分というか(笑)。それにいざ映画に出ると決まったら“よっしゃー!”とか、気合がみなぎるものなのかと思っていたんですが、気がついたら撮影が終わっていて、あれ? みたいな(笑)」


――クランクインの前日は緊張して眠れない! とかはなかったですか?

「全然! 映画に出るんだっていう感覚がなかったんですかね? ほんとあっという間に終わった感じでした」


――今では映画、ドラマ、舞台と様々な作品にご出演されています。来年も映画が『ロボジー』『Miss Boys 友情のゆくえ編』と続きますね。

「『Miss Boys~』は、フェミニンな男の子役で、凄く面白く演じさせて頂きました。化粧もバリバリやってるんで、非常に気持ち悪いと思います(笑)。『ロボジー』では、矢口史靖監督の一言一句拘るところが、凄く勉強になりました。今までは、自分の言いやすいようにセリフ回しを変えて喋ることが多くて、それがOKな現場だったんです。でも『ロボジー』では、このセリフの時はここに立つ、セリフも台本のまま忠実にやりました。最初はやりにくい部分もあったんですけど、監督の演出は非常に細かくて凝ってらっしゃる。そんな現場でやれたことで、学ぶことも多かったです」


――来年4月からは舞台『エンロン』も控えています。

「今まで小劇場でしかやったことがないので、銀河劇場という大きな会場でやらせて頂けるのが凄く楽しみです。あと、演出家がデヴィッド・グリンドレーというイギリスの方なので、そこも楽しみ。英語が喋れるという強みを生かして、いい関係を築ければいいですね。将来は海外でもたくさん仕事をやってみたいなと思っています」


――将来の野望は、海外進出ですか?

「野望……(笑)。そうですね、海外でやってみたい気持ちが大きいです。せっかく英語を喋れるんだから、武器にしたいです」


――勉強になったという『アスコーマーチ』を含め、この1年で様々な作品に出演されて、非常に飛躍した1年になったのではと思いますが。

「そうですね。今年の4月がドラマ&スクリーンデビュー。最近のことなんですけど、随分昔のことのようにも思います。それだけ今年は休みがなくて忙しかった。今年は、ようやくスクリーンデビュー出来たのが一番嬉しかったかな。僕の俳優業を認めてくれなかった人が少し認めてくれたのが一番嬉しかった……まぁ……親なんですが」


――ご両親は、まさか息子が俳優をやるなんて思ってなかったでしょう?

「そうですね。そんなんで食っていけるか! って言われてました。今ではただのミーハーです(笑)」


――(笑)。

「やっぱ映画に出てる姿を観ると嬉しいみたいです。今ではただのミーハーですけど、こうやって自分のやってることで喜んでくれるのは嬉しいですよ。親孝行っていうのかなぁ。そう考えると、俳優って凄くいい職業ですね」


『僕とスターの99日』

脚本/武田有起
出演/西島秀俊 キム・テヒ 桜庭ななみ テギョン(2PM) 朝加真由美 生田智子 片桐はいり 石黒英雄 倍賞美津子 要潤 佐々木蔵之介 ほか

並木航平(西島秀俊)は、警備会社で20年もバイトを続けている38歳の独身男性。社長の三枝恵実子(倍賞美津子)に翌日の休日返上を言い渡され、趣味であり唯一の楽しみである天体観測に行けなくなるとふてくされていた。そんなある日、韓国のスター女優ハン・ユナ(キム・テヒ)が、日本でのドラマ撮影のために来日。ひょんなことから、航平はユナのボディーガードを務めることに。契約期間はユナの日本滞在が終了するまでの99日。大スターとボディーガードの、秘密の恋が始まる。
フジテレビ系 日曜21時より好評放送中。

2019年04月
123456789101112131415161718192021222324252627282930
« »


アーカイブ


最近のインタビュー記事