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インタビュー

笠原 秀幸   (かさはら ひでゆき)

映画『BANDAGE バンデイジ』ではLANDSのメンバー・ケンジを演じ、大河ドラマ『龍馬伝』では勤皇志士・池田虎之進を熱演。更に月9ドラマ『夏の恋は虹色に輝く』で主人公・楠大雅の親友・植野慶太を演じながら、赤坂ACTシアター、大阪サンケイホールブリーゼで公演した『abc 赤坂ボーイズキャバレー』に出演。2010年を、まさに怒涛の勢いで突き進んで来た笠原秀幸が、現在放送中の『獣医ドリトル』でまた新たな一面を見せている。今後ますます活躍が期待される笠原秀幸に、『獣医ドリトル』の舞台裏を、そして、業界内で話題沸騰中? の"おしゃまブログ"について話を聞いた。

撮影/柳沼涼子 文/服部保悠

プロフィール 笠原 秀幸(かさはら ひでゆき)


1983年生まれ。東京都出身。95年に『大地の子』でデビュー。その後、ドラマ、映画、舞台と幅広く活動し、映画では『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『BANDAGE バンデイジ』といった、岩井俊二作品で重要な役どころを演じる。今年も『BANDAGE~』のほか、ドラマ『龍馬伝』『夏の恋は虹色に輝く』『獣医ドリトル』、舞台『abc 赤坂ボーイズキャバレー』に出演。今後、益々活躍が期待される俳優である。

── 今日(10月17日)は初回放送日ですが、今の心境はいかがですか?

「完成したのを見たんですが、ホッとしました。というのと、いよいよだなってちょっと興奮してる部分もあります。僕は放送時間に出演者の中で唯一撮影していて、リアルタイムで見られないんで…(笑)。もう今は、今日これからの撮影のことで頭がいっぱいです」


── ホッとしたというのは、具体的にどういった意味ですか?

「この作品は、個人的に色々と挑戦している作品なんです。獣医ってこともそうだし、自分のちょっと変わった役柄も。そういう意味もあって、1話を見てなんとなくホッとしました。あとは色々と間に合ってよかったなと(笑)」


── マンガ原作ですが、元々原作はご存じでしたか?

「元々は知らなかったんですけど、今回出演させて頂けることになってから原作を読みました。獣医を描いている作品って読んだことがなかったんですけど、ひとつひとつのエピソードが詳しく書かれていて引き込まれましたね。獣医は動物を治すスーパーマンってことだけじゃなくて、飼い主さんのことだったりペットと関わる人達のことをきちんと描いているので、そこが個人的には非常に好きで、あっという間に最後まで読みました」


── 原作がある作品にほかにも出演されていると思いますが、今までの作品も原作は読んでから撮影に臨んでいますか? それとも、作品によって違うとか。

「目を通しますけど、あんまり最後までは読まないですね。作品によってですけど。今回僕の役が原作には出てこないんですよ。だからあんまり原作を意識していないかな。でも単純に面白かったので全部読みました(笑)」


── 原作に目を通すだけの作品と最後まで読む作品は、自分の中でどういう意識があって分けているのですか?

「読み始めてみて、全部読みたいなと思ったら最後まで読むぐらいの感じです。あんまり原作を読んで役に活かそうというのは考えたりしないので。やっぱり映像にしていくと原作とは違うものになるので、あまり意識し過ぎないようにしてます。だから単純に作品が面白いかどうかってだけです。まあ今のところ全部の作品は原作を最後まで読んでますけど…ということにしないとまずいですね(笑)」


── では今までの作品は全て読んでるということですが(笑)、あまり原作に引っ張られたくないなという意識があると?

「そうですね。それはあります。もちろん監督と作品や役について話をした時に、"原作を全部読んでくれ"って言われたら全部読みますよ。それは現場に入っていく準備の中で、決めていく感じですね」


── 今回は演出の石井さんやプロデューサーの瀬戸口さんから、役について前もって言われたことはありましたか?

「僕が演じる役はわりと凡人だと。ドリトル先生(小栗旬)という天才獣医、花菱先生(成宮寛貴)というアイドル獣医、そして僕が演じる土門勇蔵という3人の獣医が出てきますが、僕は才能でいうと普通の獣医。でもお父さんにはビビっている二世獣医という面もあるんですよね。最初のほうはあまり勇蔵については描かれていないんですが、今後どうなっていくのか、というのを監督とも色々話し合っているところです」


── 正直、あまりいい人ではないですよね。

「そう! そうなんです」


── 最近はいい人って誰が見てもわかるような役が多かったように思いますが、今回の役は視聴者からすると悪い人に映るかもしれない。久しぶりに演じる悪い人はいかがですか?

「今までも悪い人を演じたこともあるし、いい人を常に演じたいという気持ちもないです。役がいい人か悪い人かっていうのは…あまり意識してないですね。ただ、台本や演出に忠実に演じていくことで、自分も色々と挑戦させてもらっている役なので、これからどうなっていくかわからないですが、僕自身凄い楽しみながらやらせてもらっています」


── 現場に入る前に具体的に準備したことはありますか?

「獣医さんってどんな気持ちかなとか。常に24時間獣医でいるってことを意識して生活してましたね。なんとなくですけど」


── 実際に獣医さんのお話を聞いたとか。

「それもあります。この作品で医療指導をして下さってる先生達もそうですし、ほかにも獣医さんに話を聞きました。あとはお父さんに期待されている息子ということで、その辺も意識してますね」


── ブログのほうにも"これから医療指導"ということを書かれていましたが、これまで何時間ぐらい練習したんですか?

「今日の時点で、先生にならったのは2回3時間ぐらい。もちろん自分だけでも時間がある時に練習して。あとイメージトレーニングもしてるので、結構やってると思います」


── 具体的にはどういう指導を受けたのですか?

「実際に手術をするシーンがあるので、その具体的な指導ですね。一番長い時間練習してるのは縫合です。あとは手術の流れからメスの入れ方、器具の名前を覚えたり持ち方を教わったり」


── 名前を覚えるだけでも大変そうですね。

「名前を覚えるのは大変です。僕は日本最大の動物病院の獣医役なので、助手もたくさんいるんです(笑)。だから自分で何から何までやるんじゃなくて、道具の名前を言って持ってきてもらわないといけない。そこはドリトル先生とは違うところですね。全部ひとりでやるか、助手に器械出しをしてもらうか。あと気をつけなくてはならないのが持ち方です。実際の獣医さんも関心を持って見る作品だと思うので、"こいつしっかりやってるな"と思ってもらいたい。もしくは"こいつは実際の獣医さんから選ばれたの?"ぐらい(笑)、見せられればいいなと思ってます」


── 笠原さんのオフィシャルブログのこともお聞きしていいですか?

「はい。ブログ? 全然大丈夫です」


── 全部ご自身で書かれているんですよね?

「そうですね。凄い恥ずかしいんですけど」


── コミカルな文章で、凄い面白いな~って思ってたんです。

「あっ、ホントですか? ありがとうございます。あれは…あの…はい、僕が書いてます(笑)。今日みたいな放送日には書いたほうがいいなと思うので、ちゃんと1発で書いて事務所のスタッフに送ろうと思いますけど、いつもは気まぐれで書いてるので、基本は夜中に書いて朝起きて確認して修正して出してます」


── 夜中に書いて、それを朝起きて確認するというのは、何か根拠があってそうしてるんですか?

「ブログにも少し書いたんですが、『思考の生理学』って本で思考は寝かせろというのがあって。一度書いたのを寝かせて…オレも寝るみたいな(笑)。それで、朝起きて冷静になってもう一度見てみる。どうせ夜中にスタッフに送っても寝てるので、ビジネスタイムに送ると。そして送ったらなるべく早くアップしてほしいんですよ。取り返しがつかないようにしてほしいんです(笑)。っていう気持ちも込めて、だいたいお昼ごろ送ってます。誤字脱字も結構あって、アップ後に気づくこともあるんですが、もう直さない」


── 送って終わりにしたいって、お芝居と一緒ですね。取り返しがつかないところが。

「そうです。すれすれでやってたいんですよね。大丈夫なの? ぐらいがいいんですよ。スタッフもこのまま載せていいのかジャッジしにくいと思いますよ。"これでいいのかな?"ってギリギリのところを出していきたいですね。むしろ修正してほしいぐらいの気持ちで、いつも送ってます。修正されても全然いいし…最初のころ、アップしたら写真が横になってましたから(笑)。オレ、それすら言わなかったです。こういうことだよなって、このブログってこういうことだなって(笑)。ヒューマンエラーがあってもそれはそれでいいかなって思ってます。そういう色んな意味で、色々と振り切れる年齢になったのかもしれません、芝居も含めてね。それこそ若い時は、どう見られてるのかなって意識してましたけど。思春期だったんで(笑)。最近はもう、オレに才能があるとかここがいいとかは、周りの人に決めてもらえばいいやって。自分は一生懸命仕事をして、それを評価してもらおうと変わりました。そう思えるようになったのは、ここ1、2年ですけどね」


── "おしゃま"ってタイトルはどういう経緯で付けられたんですか?

「"おしゃま"って辞書引くと『小さな女の子が背伸びしてる様』って出てくるんですが、"おしゃれ"はなんか嫌だなと思って。だったら"おしゃま"のほうがいいなと。それでなんとなく始めたら『BANDAGE~』の現場で流行っちゃって。そこから色々派生していきました。未だにブログ読んでくれてる人もいますし、"おしゃま"って呼んでくれる人もいます」


── 小栗さんや勝地(涼)さんもブログに登場してますよね。

「仲いいから載せやすいんですよ。載りたがるし(笑)。勝地君なんてひどいですよ。一緒に遊んだ次の日は自分が載ってるか絶対にチェックしますから。それで何も書いてないと『なんで載せないんだ』って電話が来ます。小栗さんも必ずチェックしてるみたいですし」


── お父さん役の國村(隼)さんもいつかブログに出るかもしれないですね。一番共演シーンが多いと思いますが、一緒に演じてみていかがですか?

「ご一緒させて頂くのは今回が初めてだったんですけど、とても勉強になります。たくさん出演作を見てたので、役の影響かちょっと怖い印象があったんですね。でも凄い気さくな方で、優しくして下さってます。いつも冗談言って笑ってるし笑わしてくれるし。でも本番に入る時のあの切り替わり方を、インしてからずっと目の当たりにしてるので、何か盗めるところはないかなとずっと見てますね」


── 役の関係性と全然違いますね。

「そうですね。でもホント凄いな~と思って見てます。細かいことを色々と相談させてもらってますし、役の間柄とは違いますね」


── 笠原さんは、休憩中と本番でスイッチを切り替えて気持ちを変えるタイプなのか、それとも事前にしっかり準備をしつつ本番に入るほうなのか。

「毎回変えてみてます。例えば、明るい役をやる時に現場から明るく過ごす時もありますし、その逆でシリアスな役なのに現場ではニコニコして色んな人とコミュニケーションを取ってリラックスしながら演じてみたり。自分の中では毎回変えてますね」


── それは自分を試すために?

「それもあります。あとはどうしたほうがいいのかなとか、どうしたら入りやすいのかなというのを試すというか。例えば、昔殺人犯の役をやった時に、現場に入った時からピリピリして演じたんです。それはそれでよかったんですけど、もしリラックスしながら演じてたらどうなってたのかなって思うんですよね。そういう細かい調整は、状況や作品に応じて色々分けてますし、毎回違います。今回の現場はわりとリラックスしてます」


── その細かい調整は一度現場に入ってみて決めるのか、ある程度前もって決めてくるのか、どちらですか?

「それは現場に入ってからです。今回はリラックスしてる…というのはたまたまですが、國村さんがリラックスして演じられているのが大きいかもしれないですね。どんな感じで現場に居て、どう演じてるんだろうって気になってたので」


── 國村さんとご一緒されて、盗ませてもらおうと思ったところも多いんじゃないですか?

「いくつもありますね。僕なんかが言うと生意気なんですが、見せようとしないというか。と思っていたら今度は凄い見せてきたり。上手く説明出来ないんですが…。細かいことなんですけど、表情ひとつとっても見てて勉強になりますし、一緒に演じていて負けたくないって思います」


── 小栗さんや成宮さんといった同年代の役者さんも出ていますが、役と同様、役者としてのライバル意識はありますか?

「それは…あります(笑)。役もライバル同士の役ですし。作品の中の獣医としての技術は負けていますが、役者としては負けたくないです」


── 今年に入って、『BANDAGE~』が公開されて、月9があって大河ドラマにも出演されて。そして今回の『~ドリトル』と、凄い躍進した年になったんじゃないですか?

「どうなんですかね。今年みたいな年があったりなかったりするので。もちろん色々な作品に出れるのはありがたいですし、自分の気持ちも変わってきます。色々と目的が明確になったり、課題も見えてきた年になりました」


── その明確になった目的とは?

「今の自分が見ている目的=課題というか。課題がホントに見えてきたんです。例えば連ドラをずっとレギュラーで出させて頂くのは、前回の月9が始めてで。それで、また今回も出させて頂き、やっぱり連ドラにレギュラーで出ると色々課題も見えてくるし。最初からぶれないように役を作るにはどうしたらいいんだろうってことだったり、逆に焦らなくてもいいんだっていうのがわかったり。そういう新しい課題が見えてきて、それを乗り越えることが今の目的なんじゃないかなと思います」


── 目指している俳優像は具体的にありますか?

「國村さんもそうですし、大森南朋さんや緒形拳さんも凄い尊敬してるんですよ。もちろん色んな役を幅広くやっていきたいですけど、ふたりみたいに狂気的な役者になれたらいいなって思っています」



作品紹介 『獣医ドリトル』

脚本/橋本裕志

演出/石井康晴 坪井敏雄 大澤祐樹

プロデュース/瀬戸口克陽

制作/TBSテレビ

出演/小栗旬 井上真央 成宮寛貴 藤澤恵麻(友情出演) 笠原秀幸 菅田将暉 石坂浩二 國村隼 ほか

TBS系にて毎週日曜午後9時~オンエア中

腕は一流だが口の悪さと高額な治療費からトラブルが絶えない『鳥取動物病院』院長の鳥取健一、通称ドリトル(小栗旬)。飼い主の知識や注意が足りず、病気や怪我に遭いながら苦しみを伝えられない動物達を救うだけでなく、問題を抱えた飼い主の心までも治療していく。そんなドリトルと大学の同期でライバルでもあるカリスマ獣医の花菱優(成宮寛貴)。日本最大の動物病院チェーン、エンペラー動物病院の土門大蔵(國村隼)・勇蔵(笠原秀幸)親子など、動物医療に対して違う考えを持つ者同士が、それぞれのやり方で日本の動物医療界を変えようとするが…。

2019年06月
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