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インタビュー

八神蓮   (やがみ れん)

映画、ドラマ、ミュージカル、芝居と各分野でマルチに活躍する八神蓮。ミュージカル『テニスの王子様』の幸村精市役で人気を博し、当初は見た目のイメージのまま"王子"のあだ名がつき、役どころも王子様的なものが多かったが、ここ最近出演のドラマ『交渉人~THE NEGOTIATOR~2』『サラリーマン金太郎2』などでまた違った一面を見せ始め、役者として順調に成長していることがわかる。そんな彼の最新作『月と嘘と殺人』は、本格的群像サスペンス。心に闇を抱えながらも警察官としての職務を全うしようとする、今まで経験のない難しい役どころに挑戦した。

プロフィール 八神蓮(やがみ れん)


1985年12月14日生まれ。愛知県出身。2006年ミュージカル『テニスの王子様』でデビュー。07 年に「Pure Boys」を結成、08年に映画『トリコン!!! Triple complex』に初主演。09年、映画は『アニと僕と夫婦喧嘩』『第2写真部』、ドラマは09年『ゴッドハンド輝』『執事喫茶にお帰りなさいませ』『交渉人~THE NEGOTIATOR~2』『サラリーマン金太郎2』などに出演。2月14日に『4th写真集』を発売、映画『交渉人 THE MOVIE』も公開中。

オフィシャルブログ

http://ameblo.jp/yagami-ren/

── 映画の単独主演は3作目です。意識として変わったことはありますか?

以前主演をやらせて頂いた時は、"嬉しいしありがたいな…"という気持ちが強かったんですけど、今回は主演をやるのが怖かったんです。それは、デビューして 1~2年のときは、下積み時代も何もない時ですから、撮られるという感覚が今ひとつピンと来ていなかったんです。その点デビュー4年目の今回は1作目、2 作目とは随分意識が違いました。色々と経験させて頂いた結果、責任感も出てきましたし、仕事に対する意識とかも以前より高くなりました。中学も高校も3年間でおしまいだから、そう考えると、デビュー4年は僕の中でその節目だと思ったんでしょうね。新人、新人と言っていられない自分もあって、そういう部分でも怖かったし、プレッシャーを感じてました。


── 様々な現場を知った結果ですね。

今まで大人の方達と共演することがあまりなくて、同世代の方ばかりだったので。大人の方達と触れ、お芝居を観させて頂いて大変勉強になりました。今回は、プロットの部分から多少考えを言わせて頂く機会があったんですよ。だから準備稿から全部を見させて頂いて、"こうしたらいいんじゃないか"など、少し自分の思いを言わせて頂けました。


── その八神君の意見はかなり採用されたんですか?

そうですね。今まで出演した映画『トリコン!!!』や、『第2写真部』は、若い男の子が集まった作品だったんですが、今回はそれらとは違う雰囲気の作品にしたいな…と思ったので意見として伝えました。そして、ストーリーの最後についても僕がイメージしていることを話しました。結果、スタッフさんの考えも同じだったみたいでよかったんですけどね。


── 完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

僕がこんなことを言っちゃいけないのかもしれないですけど……映画は、公開されるまで半年~1年かかるりますよね。そうなると、その作品を撮ってからほかのドラマや映画を経験しているので、その時に昔の成長途中の自分を観るのが嫌なんです。まだ役者として出発したてで、色んなことを吸収する前の時期だからだと思うんですけど、1年前の自分は正直に言うとあまり見たくないんです。初号を見ましたが、自分のあら探しをしてしまって、気になる部分が多かったです。でも、今回はいいなと思える部分も見つけられたので、わりと普通の気持ちで見ることが出来ました。そういう目で見ちゃうから、お客様が見る目線とはちょっと違うかもしれないですね。


── 具体的にはどの部分が気に入ったんですか?

まだ1回しか観ていないので、細かくは忘れちゃったんですけど(笑)、1回目は全体を通して見たので、次はもう少し細かくじっくり見たいです。


── 作品のテーマが重く、全体を通して誰も笑わない作品でした。撮影現場はどんな感じでしたか?

共演の滝口君は今までも何度か一緒になったことがあって、いつも明るい子なんですが、シリアスなシーンの前は、楽屋でもシリアスだったんです。初めてそういう部分を見たので、意外だなと思いました。その点僕はあまり関係なくて…(笑)。シーンのイメージは現場に入る前に出来ているので、あとは想定していたどのパターンかな? とか、監督さんの指示を入れて芝居の組み立てをしている時は芝居に集中してますが、カットがかかればいつもの自分に戻りました。


── 現場に入る前、シーンのイメージはいくつくらい用意するんですか?

大体家で考えるんですが、お風呂で言い方や抑揚とかを考えて。パターンと言っても、箇条書きで書いたりする訳ではなく、スタンダードなことと、人物により踏み込んだパターンなど数パターン考えます。でもわりとスタンダードな芝居が採用されがちなので、最近はちょっと変えたいな…という気持ちと、余裕が出てきました。


── 現場で一番最初に出すのはスタンダードなパターンですか?

そうですね。そうそう、最近、初めて割本が大事だということがわかったんです。ドラマ『交渉人』の時くらいからかな…。今までは台本を覚えていけばいいと思っていたし、割本があっても、それはセリフが長かったり、流れがつかめなかったり、忘れちゃったときに使うものかな?…と思っていたんです。でもよく見たら、割本には色んなことが書いてあって、自分のプランとかとは違うことが演出されていて、色んなことが書いてあって結構大切なものなんだと気づいたんです。誰もそういう使い方を教えてくれないし、付き人とかしていたりしたら、その人のスタイルみたいなもので知ったかもしれないですけど。でも、それが正解だとは思わないので、自分で学べたからいいかなと思ってます。


── 八神君が月を眺めるシーンがありましたが、自分が置かれている環境によって、同じ月の見え方も変わるんだろうなと感じましたが、今回、月をどのように見ましたか。

そう捉えていただけると嬉しいです。月は不思議な存在ですよね。この作品に携わってから、月をよく見るようになったし、東京でもわりと月が綺麗に見られるんだなと思いました。気持ちとか、自分がすさんだりしたら、もっと見え方が違うのかもしれませんけど(笑)。


── この作品は、自分にはどうにも出来ない運命に翻弄されていて、とっても重いテーマでした。この作品を通して考えたことはありますか?

シーンを撮る前に、自分の父親や大事な人を亡くしたことを自分の部屋でソファーに座って考えていたら、なんだか涙が出たんです。僕は今までのほほんと幸せに暮らしてきたけど、その当たり前なことも大切だと思いましたし、運良く色んなことが進んできたけど、だからこそ危機感を持っていないとダメだとも思いました。この映画を見て幸せな気分にはなれないと思いますけど(笑)、少しでも影響を与えられたらなと思います。


── 1年前にインタビューさせて頂いたときと比べて、プロ意識がかなり高くなったなと感じますが、改めてお芝居の魅力は何だと思いますか?

まだいいことが言える段階ではありませんが、役を通して色んな人について考えることが出来ることが自分にとってプラスだと感じます。普通は神様からひとつずつしか貰えない命を、その役ごとに命をもらえている感じがするので、凄く特別なことをやらせてもらっている感じ。楽しいです。


── 最近、映画やドラマの現場でベテランの方と一緒になる機会がありましたが、いかがでしたか?

やっぱりだいぶ意識が変わりました。年をとっているから凄いとかではなく、ちゃんと年を積み重ねていらっしゃるんだなと感じました。僕は同世代よりも早く上手くなりたいので、出番がなくても現場に行って先輩方と話をしたり、動きを見学したりしてました。


── いつも参考にしてる方はいらっしゃいますか?

『交渉人~』や『金太郎~』に出演されていた、笹野高史さんは凄いんですよ。自分でもまだ理解しきれないくらい凄いんです。毎回予想外なことをサラッと演じて、本当にびっくりさせられました。昨日もたまたま見たテレビで知ったんですが、山田洋次監督の作品に、笹野さんは11作品も出ているんですって。『男はつらいよ』は、普通はひとり一役だから1回出たらもう出ないそうなんですが、笹野さんだけは色んな役で11本も出演されていて。笹野さんの若い頃の作品を見ても凄いなと思いました。


── お仕事がひと段落したようですが、最近はどのように過ごしているんですか?

色んな撮影が全て落ち着いてしまって、実は今、暇なんです(笑)。デビューして1年くらいは3~4日しか休みがなかったのが、2年目は10日くらい。今、4 年目はもう少しあって、20日間くらいかな。でも、今まではポツポツと1日休むくらいだっのが、最近は2~3日空くことがあって、暇が嫌いで仕方ないんです。だから昨夜はDVDを見て、なぜか嫌いだったホラーを観てしまいました。しかもひとりで。


── 映画のほかに何か見たりして影響を受けているものはありますか?

この間は博物館に恐竜の化石を見に行きました。絵画なども大きな展示が来たときは、上野の美術館に見に行きます。それから自分で絵も描いたりもしますね。鉛筆で。あとはスノボやサーフィンもしに行きたいんですが、怪我をしたら仕事に迷惑をかけちゃうから怖くて行けなくて。本当はそこで何か得られるものもあるんじゃないかな…と思ったりもしてるんですが。


まずはお芝居のスタンダードを学ぼうかなと思ってます。違うお芝居をするにも、まずはスタンダードを極めないと…ですよね。実ははこれは森本レオさんにアドバイスして頂いたんです。森本さんが、"スタンダードが100出来るようになってから、そこから違うことをやると100以上のことが出来るから、まずは 10年スタンダードをやって、その後10年は違うことを探ったほうがいいよ"と仰ったんです。でも一週間後くらいに会ったら、"八神くん、この間10年って言ったけど、今の時代10年じゃダメだ。3年でやりなさい。10年やってたら売れないわ"って言われて(笑)。僕にアドバイスしたことを覚えていて、さらに考えて下さったことも嬉しかったですね。今のベテランの方々が作ってきた基盤を、いつかそれをちょっと崩せるくらいの、何か違うことをやれたらと思ってるので、そのためにも、今はスタンダードなことを頑張る時ですね。



作品紹介『月と嘘と殺人』

監督・脚本/高橋正弥

出演/八神蓮 滝口幸広 真山明大 高橋優太 森陽太 福永マリカ ほか

配給/リベロ マジカル

公式サイト/http://www.tsukiuso.net/

2月27日(土)シネマート六本木ほかにて全国順次ロードショー


警察学校で同期の相田省吾(八神蓮)と奥寺耕介(滝口幸広)。ふたりが勤務する警察管轄内でひったくり事件と殺人事件が発生。ひったくり事件を起こしているのは、高校生の3人。ある夜、千鳥足で歩く大城勇二(鳥羽潤)の鞄をひったくるが、この鞄の中には大量のドラッグが入っていた。大城は、かつて巡査だった相田の父を死に追いやった容疑者だたが、不起訴で釈放された身だった…。


(C)2010『月と嘘と殺人』フィルムパートナーズ

2019年06月
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