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インタビュー

浅香航大   (あさか・こうだい)

クラスの生徒全員の惨殺を目論む、生まれながらのサイコキラーを、『海猿』の伊藤英明が演じる。しかも監督は数々のエンターテインメント作品を手掛けてきた三池崇史だ。『海猿』シリーズとは打って変わって究極の悪人を怪演する伊藤と、強烈なバイオレンス描写をさく裂させる三池監督のタッグが話題の本作。伊藤が演じる英語教師のクラスの一員で、この大惨殺に巻き込まれてしまう男子生徒・夏越雄一郎を『桐島、部活やめるってよ』での好演が記憶に新しい、浅香航大が演じる。殺人鬼となった教師から逃げ惑いながら、必死に生き残ろうとする夏越の運命は!?

撮影/吉田将史 スタイリスト/honmaru(SMOOCH) ヘアメイク/細川昌子(ベレッツア スタジオ) 文/池上愛

衣装協力:カーディガン\17850(ヘクティク/リアルマッドヘクティク)、シャツ\14700(マスターピース/リアルマッドヘクティク)、パンツ\14700(カーキ/キッチン)、シューズ\16590(チャオパニック/チャオパニック原宿店)、ハット\3990(ベースコントロール/ベースコントロール)、その他スタイリスト私物

プロフィール 浅香航大(あさか・こうだい)


1992年8月24日生まれ、神奈川県出身。主な出演作品に、ドラマ『花ざかりの君たちへ ~イケメン☆パラダイス~2011』(11年)、映画『桐島、部活やめるってよ』(公開中)がある。舞台『タンブリング vol.3』をはじめ、舞台経験も豊富な期待の俳優。現在、出演ドラマ『TOKYOエアポート ~東京空港管制保安部~』(フジテレビ系、日曜21:00~)が放送中! そして来年1月2日の新春大型時代劇『白虎隊』(テレビ東京系)にも出演決定!
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/asaka-kodai/

――映画をご覧になった感想は?

「まだ客観視は出来ていないんですが、物凄く“ヤバイ”作品が出来たなと思いました。伊藤英明さんの演技もそうですし、出来上がった映像や音楽含め、凄くエンターテインメントな作品だなと思って。あと、原作を読んだ時は凄く気持ちが落ちたんですが、映画はスカッという気分にもなったんです」


――私もそう感じました。気分が高揚する部分もあったりして。

「そうなんです。美術や音楽がいい具合にマッチしていて、ノッている気分になりました。もちろん“生徒皆殺し”というショッキングな内容だし、映像的にもグロイところがあるかもしれないけど、個人的には意外にも観やすい作品でした。あとは、三池(崇史)監督がこう考えていたんだ! という驚きもありました。ここでこの音楽を使うんだ、このカットをこう入れたんだ、とか、映像を観て発見する部分が多かったです」


――伊藤英明さん演じる蓮実聖司(通称・ハスミン)が、生徒を殺す場面も、音楽がバックに流れて軽やかでした。文化祭前日の教室(注:映画では、文化祭準備のため生徒達が宿泊している校舎で惨劇が起こる)も、装飾が綺麗で。

「ハスミンが生徒を殺す様も、ノリノリでしたしね。映像美としても鮮やかで綺麗ですし。そこで生徒が必死に逃げ回り殺されていくっていうギャップも凄かったし…」


――浅香さんが演じた、夏越雄一郎の役どころについて聞かせて下さい。

「ごく普通の少年です。ただ学園生活を楽しんでいただけで、ハスミンに対して何かを抱いていた訳でもない。クラスの片桐怜香(二階堂ふみ)のことが好きで、親友とバカやって…なんてことない生活を送っていただけで。オタクでもないし、かといって目立つタイプでもないし、単純に素直な男の子というイメージです」


――夏越を演じるにあたって、どんなバックボーンを考えましたか?

「生まれた日とか、家族構成とか、友人関係とか…色々考えました。夏越に関しては、特に不自由ない環境に育って、幸せに暮らしてきた子だと思います。でも、現場に入ったらそういうことは全て忘れるようにしてるんです。バックボーンはあくまでバックボーンであって、敢えて演技で出すことではない。それに現場で生まれることや、監督や相手との芝居のやり取りで変わることだってあるじゃないですか。だから現場での対応力を持って臨むようにしようと思ってやってました。バックボーンは作るけれど、それは表立つものでもないのかなと」


――現場では結構台本と変わったりしました?

「結構変わりました。ガラリとセリフが変ることもありましたね。なので、あんまり気負い過ぎずに、力を抜いて臨むくらいがちょうどよかったかも。台本とは変わったとしても、三池監督の説明は凄くわかりやすいんです。その場で監督が演じてみてくださったりもするんです。監督が『自分らしくやろう』って言って下さったんですけど、監督も僕のことを受け入れてくれてるんだなぁって…凄く嬉しかったですね。信頼して頂いている感じがしました」


――先程、「夏越は普通の男の子」と仰いましたが、特徴がないというのは、演じるうえで難しいのかなとも思ったのですが。

「そうですね。普通って言っても、何が普通だ? と。僕は夏越として、その場の空気を吸って芝居をしていただけ…ただそれだけのことで。最初ころは難しいなと思うこともあったんですが、監督や共演者の方に助けられながら、夏越を作っていったので、現場そのものが夏越を作っていった感じがします」


――役どころとしては、二階堂さん演じる怜香と染谷将太さん演じる早水圭介とのからみが多いですよね。おふたりと一緒に芝居の掛け合いをした感想は?

「全てが刺激的でした。ふたりのことは勝手にライバルだと思ってますけど、同時に、果たして対等に演じられるのか? というプレッシャーも感じていました。本当にふたりお芝居が上手ですから! ただ、そのふたりの芝居の上手さが、僕の芝居を引き出してくれたんです。ふたりが生み出した演技によって、僕も生まれてくる演技があったりして。凄く楽しかったですね。ふたりとやれたことは財産だと思っています」


――伊藤さんの演技はいかがでしたか?

「実際の撮影現場では、伊藤さんが生徒を殺していく演技は見れてないんです。僕は必至で逃げているだけだったので。だから完成作を観て、英明さんの表情、目つき…ほんとに凄かったです。“うわっ、こえ~~!”みたいな。なんか……僕、実は、英明さんのこと怖いって思ってたんですけど……」


――普段の伊藤さんがってこと?

「それまでお会いしたことはなかったので、勝手な僕の想像なんですけど(笑)。だけど、実際の英明さんはめちゃくちゃ温かい人で! 現場での居方も凄く勉強になったり、学ぶことが本当に多かったです」


――蓮実から逃げるシーンは、カットがかかっても心臓はバクバクするものですか?

「はい。常に鳥肌は立っていたし、泣きそうにもなりました」


――蓮実によって多くの生徒が殺される中、夏越は最後まで生き残ろうと逃げ惑います。

「怜香を守りたい。生き残りたいっていう気持ちが強かったというのもありますが、早々に殺されなかったのは、多分、運がよかったんだと思います。だって夏越は、“どうしようどうしよう”てなってただけだし、ハスミンの散弾銃も、なんとかスレスレですり抜けただけですし。ただ逃げること、生きることに必死だったんだと思います。僕自身も、浅香航大として撮影期間を必死にやって、気付いたら撮影が終わってました(笑)」


――撮影はどれくらいの期間だったんですか?

「2カ月くらいです。廃校を使って撮影したんですが、あの学校にはめちゃくちゃ愛着が湧きました」


――物凄い惨劇の舞台ですけどね(笑)。

「(笑)。文化祭の装飾とかほんとに凄かったんですよ。お化け屋敷のセットも怖くって。二階堂さんと“ちょっとお化け屋敷行ってみようぜ!”って教室内に入ったんですけど、めちゃくちゃ怖かった(笑)。ほんとの学園祭前夜みたいで撮影期間は凄く楽しかったです。ただ深夜に撮影していたので、トイレに行くのが凄い怖かったです。学校自体は廃校なので、体育館のトイレしか使えなかったんですよ」


――うわぁ! そこまでの道のりは怖いですね。

「そうなんです。ひとりじゃ行けなくって。だけど、だんだん誘う友達もハスミンに殺されていなくなっていく訳ですよ。だから最後のほうでは二階堂さんを誘って一緒に行ってもらいました(笑)」


――物語の後半は、生徒を次々に殺していく様子が描かれていますが、個人的には、前半の穏やかなシーンが好きでした。あのシーンがあるからこそ、蓮実の狂気っぷりが余計に怖く感じました。

「生徒を皆殺しっていう非現実的な内容かもしれないけど、もしかしたら実際にもありえるかもしれないとは思います。将来、自分の子供がハスミンみたいになるかもしれないし…。実際にハスミンも両親を手にかけてますしね。何気ない学園生活のシーンがあることで、日常に潜む恐怖みたいなものを、より感じられると思います」


――詳しくは書けないのですが、とある場面で、夏越と怜香がハスミンを見つめるシーンがありました。あのシーンも個人的には凄く印象的で。

「あのシーンは、人間じゃない何かと対面している感じに近い気がします。ハスミンという恐ろしいものへの恐怖と、怜香を守り抜くっていう気持ちと……言葉に表すのが難しいですね。今度もう一度作品を観て、そのシーンをチェックしてみたいと思います(笑)」


――簡単には語れないのが『悪の教典』の面白さかなとも思います。

「そうなんですよ。言葉にすることは簡単なんだけど、一言では言い表せないというか。だから僕的には、観た人に感想を聞いてみたいという気持ちが大きいです」


――映画以外のお話も聞きたいのですが。8月に20歳を迎えられたということで、役者に対する気持ちの変化みたいなものはありますか?

「変化は特にない…かな。20歳という年齢ではなく、作品を通して心境の変化があることはあります。役者で飯を食っていかなきゃ! とは思いますけど」


――役者一本で頑張ろうと。

「もちろんです」


――例えばですが、将来役者以上にやりたいことが見つかる可能性もあったりしますよね?

「いやいや!! 無理です無理です! ほかの仕事なんて僕には出来ないですよ。役者をやるってことは事務所に入った時から思ってることでもありますから。僕は絶対この仕事しか出来ない人間だと思ってます」


――役者のどういうところに惹かれますか?

「めちゃくちゃ楽しいから(笑)。表現することが好きなのかもしれないです」


――役者仲間と仕事の話はしますか?

「あまりしません。自分の手の内を明かすのが好きじゃないんです。僕、ケチなんで(笑)。とはいえ、プライベートでも仲のいい役者がいるっていうのは、凄く刺激になります。負けたくないっていうライバル心もありますし」


――そういえば、とある俳優さんが『桐島、部活やめるってよ』を大絶賛されていました。その映画を観たあと、役者さん同士で熱く語りあったそうです。

「ほんとですか!? めちゃくちゃ嬉しいですね」


――映画を観て刺激になることはありますか?

「あります。最近は70~80年代の邦画を見ることが多いんですけど、昔の作品ならではの“なんでもやっちゃえ!”的なギラギラしているところは凄く刺激を受けます」


――どんなジャンルがお好きなんですか?

「ジャンルは関係ないです。大規模のものから小規模のものまで、ちょっと変わってるエ映画なんかも観ます。役者仲間に『最近、なんかいい映画あった?』って聞くことはありますね。何をいいと思うかは役者でも違ったりするし、人それぞれだとは思いますが。自分がいいなと思った映画をたくさん観て、自分の色を濃くしていきたいです」


――出演ドラマ『TOKYOエアポート~東京空港管制保安部~』も放送がスタートしましたし、『悪の教典』含め、これからの活躍を期待しています。

「ありがとうございます。ドラマでも今までやってきたことを全力でぶつけられればと思います」


『悪の教典』

監督・脚本/三池崇史
原作/貴志祐介
出演/伊藤英明 二階堂ふみ 染谷将太 林遣都 浅香航大 水野絵梨奈 山田孝之 平岳大 吹越満 ほか 配給/東宝
(C)2012 「悪の教典」製作委員会

私立高校の教師・蓮実聖司(伊藤英明)は、親しみやすく明るいキャラクターと、工夫を凝らした授業で生徒から絶大な人気を誇っていた。だが、それは彼のうわべにすぎなかった。蓮実は他者への共感能力が欠如した生まれついてのサイコキラーだったのだ。彼はこれまでも邪魔者は何の躊躇もせず殺害してきた。そんな彼の異常性を感じ取る生徒がいることに気づいた蓮実は、とある計画を起こし……。
2012年11月10日全国ロードショー

映画の前日譚を描く配信ドラマ「悪の教典-序章-」も放送中!
『悪の教典-序章-』
「dマーケット VIDEOストア powered by BeeTV」&「BeeTV」で10月15日より配信中!

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