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インタビュー

原菜乃華   (はら・なのか)

11歳、小学校5年生にして芸歴6年目の原菜乃華。現在放送中のドラマ『ビンタ! 弁護士事務員ミノワが愛で解決します』で主人公ミノワ(箕輪文太/松本利夫<EXILE>)の異母兄妹・箕輪カナ役で出演。なかなか心を開かない難しい役どころに挑戦し、存在感を示している。女優として活躍する傍らで雑誌『キラピチ』の専属モデルも務めるなど、多忙な日々を送る彼女。仕事の話だけではなく、普段どんな生活をしているのかなど色んな質問をぶつけた。

撮影/中根佑子 文/今津三奈

プロフィール 原菜乃華(はら・なのか)


2003年8月26日生まれ。東京都出身。ドラマ『夫のカノジョ』、映画『地獄でなぜ悪い』、『ピラメキ子役恋ものがたり』などに出演。雑誌『キラピチ』の専属モデルも務める。特技は泣きの演技と水泳。

――撮影中の佇まいはとても小学5年生とは思えず、表情の変化はさすが女優さんだなと思いました。いきなりですが……学校がある日、仕事の日では過ごし方が違うと思いますが、普段はどんな日々を過ごしているんですか?

「学校に行っている日は結構忙しいです。お仕事で休むことも多いので、たまっている宿題を一気にやらなきゃいけないし、セリフを憶えたりとやることがたくさんあって。だから学校の友達とはほとんど遊べていません。でも『仕事だからごめん』と言えば友達も理解してくれるし、それに対して『頑張って』とも言ってくれる。友達はたくさんいるのでそれほど悲しいとは思わないんですが、先日林間学校に行けなかったのはさすがに悲しかったです」


――ドラマの撮影と重なってしまったんですか?

「どうしても外せない撮影と重なってしまったんです」


――それは残念でしたね…。お仕事の現場にはひとりで行くんですか?

「妹がまだ10カ月の赤ちゃんなので、お母さんはなかなか外出出来ないんです。ひとりで行ける場所はひとりで行きますが、ほとんど、マネージャーさんと途中の駅で待ち合わせをして行ってます」


――とてもしっかりしていますが、元々そういう性格だったのか、仕事をして変わったのか、どちらですか?

「実は私、なまけものなんです(笑)。仕事の時は気合いを入れてしっかりするようにしているんですけど、家に帰って時間が出来るとダラーンとしてます」


――女優・モデルのお仕事をしていると、家に帰ってからもセリフを憶えたり、運動や美容などやることが多そうですが…。

「時間が短縮出来るから、何かをやりながら同時にやるのが好きなので、お風呂の中ではやります。そして休む時間をちゃんと作ります」


――休む時は何をするんですか?

「今は妹と遊びます。疲れて帰ってきても、妹がキャッキャと声をあげているので、抱っこをしてお口のにおいをかぐと安心するんです」


――なぜ口のにおいをかぐんですか?

「ミルクのいいにおいがほわーっとして癒されるんです。でも最近は歯がしっかり生えてきたので、ガブっとかまれます。加減を知らないから凄く痛くて。『痛いよー、やめてー』と言っても離してくれなくて(笑)」


――可愛くて仕方ないんですね。

「小さいころは妹が凄く欲しかったんですけど、8歳、9歳になると、ひとりっ子はひとりっ子でいいところもあるから、このまま自由にひとりの時間を楽しもうと思っていたんですけど、急に赤ちゃんが出来たのでびっくりしちゃって。最初は嬉しい気持ちと複雑な気持ちがごっちゃになりましたが、今は生まれてきてくれて本当によかったです」


――菜乃華さんは幼稚園生の時に見たアニメ『きらりん☆レボリューション』のアイドルに憧れて芸能界に入りたいと思ったそうですね。

「ベビーカーに乗っているころからスカウトされていたようなんですが、お母さんはまだ早いと思っていて。でも私が『きらりん~』のアイドルみたいになりたいと言ったら、『スカウトされたこともあるし、読者モデルから始めてみようか』と言ってくれて。読者モデルからスタートして、お仕事が来るようになってから事務所に入りました」


――スカウトされたことは憶えてますか?

「小さい時のことは全然憶えていません。でも事務所に入ってから、原宿の竹下通りでスカウトされることはあります」


――モデルを経て女優の仕事もするようになり、8歳の時に出演した映画『地獄でなぜ悪い』ではミツコ(二階堂ふみ)の子供時代を演じましたね。あの役の印象は強烈でした。それまで園子温監督の作品は観たことは……当然ないですよね?

「決まるまでは観たことがなかったんですけど、決まってからお母さんが『冷たい熱帯魚』や『ヒミズ』を借りてきてくれて。『冷たい熱帯魚』は私が学校に行っている間にお母さんが観て『これは夜眠れなくなるから観ないほうがいいね』と言って、『ヒミズ』だけ観ました」


――『ヒミズ』も大人なら理解出来るけれど、当時8歳の菜乃華さんには難しい内容だったのでは?

「わからないところはあったけど、ある程度はわかりました。わからないところはお母さんに聞いて、『この先もう少し見ているとわかるよ』と言われてそのまま観ていると『ああ、なるほど』と思ったりして」


――『地獄~』はオーディションで決まったんですか?

「はい。園監督とは最終面接で会いました」


――その最終オーディションではどんなことをしたんですか?

「劇中で歌うものとは違うものだったんですけど、前の日にCDが配られて。ダンスの先生が踊るのを憶えるんですが、鏡のない部屋だったので左右がわかりづらくて。お母さんと一緒に何度も確認しましたが、大変でした」


――本番では上手く出来ましたか?

「猛特訓した甲斐があり上手くやれました。知っている子も何人かいましたが、みんなあまり憶えられていなくて。私はみんなより上手く出来るぞ! と思って頑張りました」


――負けず嫌いですか?

「そうですね。口には出さないけど、心の中で燃えてるタイプです」


――ストーリーもミツコという役も、菜乃華ちゃんの年齢で理解するのは難しかったと思うんですが、ミチコをどう演じようと思ったんですか?

「台本を初めて読んだ時、台本に“血がドバー”っとか書いてあって衝撃が強かったです。題名が『地獄でなぜ悪い』だから、ある程度は怖いものだと想像していたし、園監督の傾向からもそうだろうとは思っていました。でも結構セリフが面白くて、コメディーみたいなところもあって。大人になったミツコ役は二階堂ふみさんが演じられたのですが、『ヒミズ』を観て凄く目力のある人だなと思っていたので、私も目力は強く、二階堂ふみさんの幼少期に見えるように気を付けました。


――監督からアドバイスされたことは憶えてますか?

「特に何も言われませんでした。自由にやっていいという感じだったので、本当に自由にやらせて頂きました」


――お芝居は自分でイメージを作り、いくつかパターンを作っていったりするんですか?

「自分の中でこれというのはあるんですけど、ちょっと違うバージョンも作り、監督さんに言われたらやれるようにしておきます」


――ちなみにミツコのお芝居は自分の思ったお芝居だったんですか?

「はい、そうです」


――劇中の歌とダンスも印象的に残ってますが、以前から得意だったんですか?

「全然得意ではないし習ったこともなかったんですが、歌とダンスが単純に好きで。だからただ踊るんじゃなくて、曲に合わせて表情をつけたり、明るくわーっとやってみたり。鏡を見ながらどうやったら可愛く映るか研究しました」


――さっきの撮影の時も表情が豊かでカメラマンの要望に応えようとしてましたものね。

「読者モデルのころ、最初はひきつって笑えなかったんです。カメラの前で1+1は2!! と言って無理矢理笑う表情を作ったりしていて。でも『maria』という子供のファッションの雑誌を小学校に上がる前までやっていて、そこでどうしたらいい表情になるのか身に付けました」


――幼稚園の時にそんなことが出来ていたんですか…。

「撮られるのは大好きでした。鏡を見てポージングをしながら、この服だったらこのポージングのほうがスタイルがよく見えるとか、こういうポーズのほうがこの服の印象に合うとか…」


――菜乃華ちゃんとの会話は大人と話しているのと変わらないのだけど、大人の世界で過ごすことは楽しいですか? 怖いですか?

「最初はすっごく緊張したし、知らない大人がたくさんいて怖いな、何をされるんだろうと思いました。だけど、やっているうちにされることもわかってきたし、ちっとも怖くなくて楽しくなりました。これはこうすべき…というのがわかってくると、こうしたほうが喜んでくれるかなと考えられるようになって楽しくなりました」


――楽しくなったきっかけはありますか?

「『maria』の時です。メイクさん、スタイリストさんといつも一緒に話をしたり、モデルさん達とも仲良くなってきたりして。初めて会った人ともコミュニケーションが取れるようになってきました」


――人と話したりするのは好きですか?

「大好きです。止められるまで、ずーーーーっと何時間でも喋っていられます!」


――自分からどんどん話しかけていくんですか?

「人見知りではありません」


――今回初めての連続ドラマ『ビンタ! 弁護士事務員ミノワが愛で解決します』に出演しています。演じている箕輪カナ役は大人びた役だから、今の菜乃華さんが内容を理解するのは難しいのでは…と思ったけど、気持ちや役柄はしっかり理解出来ていそうですね。

「はい。結構理解出来ています。カナちゃんの言ってることは凄くわかります。私でもそう思うだろうと思うんですけど、私はカナちゃんみたいに口に出して言わないタイプで、心の中でひっそり思うほうなんです。だから、カナちゃんは私の心の声を口に出している感じなので、結構やりやすいです」


――菜乃華さんの自身、普段は言わないけど、実は口に出して言ってみたい…という願望はあるんですか?

「結構心の中では色々思っているんですけど、サバサバしているタイプではないんです。“ここは違うんじゃないかな?”と、ほんわか思っています」


――撮影現場では大人の役者さんばかりですね。どんな雰囲気ですか?

「とても楽しいです。もんじゃを食べるシーンがあって、(高田夏美役の)山口(紗弥加)さんのお気に入りのもんじゃを食べさせてもらったりして」


――セリフを合わせたりするよりも、お仕事と関係ないことをして楽しんでいるんですね。

「セリフはひとりでやって、休み時間は違う話で盛り上がっています。少し前はスイーツの話をしました。MATSUさんはスイーツ男子らしく、ショートケーキが好きだと言ってました」


――今のドラマはセリフがたくさんありますが、セリフ憶えはいいほうですか? いつもどんな風に憶えているんですか?

「まずは全部読んで話の筋をつかんだあと、自分のシーン全体と自分のセリフを読んでから憶え始めます。今日はここのシーンを憶えると決めたら何回も読みます。最初にパーっと読むだけで大体頭の中に入っているので、次のシーンを読むとほとんど憶えてます。でも、以前どうしても覚えられないシーンかあって、どうやったら憶えられるのかネットで調べたことがあるんです。そしたら、歩きながらだと憶えられると書いてあって、お母さんと一緒に真夜中にうとウトウトしながら公園を歩きつつ台本を読みました。次の日がオーディションだったので心配でしたが、翌日のことを考えて台本を枕の隣に置いて寝たら……朝起きたら全部憶えていたんです! あんなに憶えられなかったのに…。以来、精一杯頑張ったところで寝ちゃいます。不思議と朝になれば憶えているので」


――凄いですね。

「本当なので試してみて下さい」


――ドラマを見るのが好きと聞きましたが、どんなドラマが好きですか?

「最近だと『昼顔』と『ファーストクラス』です(笑)


――もしかして、菜乃華さんは意地悪ですか(笑)?

「意地悪じゃないです(笑)! ドラマのストーリーの先を読むのが好きで、いつも想像しています。『昼顔』の最終回のあたり、ちょうどこのドラマのロケが始まっていたんですが、移動のロケバスの中でマネージャーさんと次のストーリーを予想したりしてました。お父さんとお母さんも先を読むのが好きで、このあとに言うセリフを当てるんです。お父さんは特に得意で、よく当てるんですよ」


――さてさて、『ビンタ!』の話に戻りますが、カナちゃんも心境にもだんだん変化が出てきていますが、台本はどのくらいまで読んでいるんですか?

「最終話まで読んでます」


――今後カナちゃんはどうなっているんでしょうか?

「ミノワをだんだんとお兄ちゃんとして意識していき、どんどん心を開いていく感じです。でも最終回は内緒!」


――これから色んな役に挑戦すると思うんですけど、そのために努力していることはありますか?

「趣味がドラマ鑑賞なんですが、ドラマはたくさん観るようにしています。こういう役だったらこうするかなとか考えたり。『リーガルハイ』も好きで、セリフを憶えて全部の役を演じてみてます。今後は意地悪な役をやってみたいですね。お母さんに言われたんですが、顔が悪い子顔だから(笑)、いじめっ子の役もやりたいし、変わっている役もやってみたい。『Q10』のようなロボット役や、学園モノのメガネをかけている優等生もやってみたい。やりたい役だらけです」


――演じる楽しさってなんですか?

「身ぶり手ぶりはこうしたほうが伝わるんじゃないかとか、ここに手があいていたら動きをつけてみようとか、自分で考えるのが楽しいです」


――そういう考え方は誰かに教えてもらったんですか?

「教えられたものではないんですが、ドラマを見てきた中で、この人のこの動きが好きとか、この人がこのセリフが言うのは想像つかなったとか考えるようになりました」


――こういうお芝居をしたいと思う、好きな女優さんはいますか?

「やっぱり二階堂ふみさんです。目力が強いし色んな役が出来るし、作品で全然印象が違うのは凄いですね。男性は堺雅人さんです。表情が豊かで、コメディーも真面目なのも見ていて面白いです」


――もうキャリア6年ですが、これから色んなことが出来るから楽しみがたくさんありますね。来年の今ごろはどんな風になっていると思いますか?

「連ドラをやっていたいです。あとは身長をとにかく伸ばしたいです。ランニングのあとに牛乳を飲んで、お肉をガッツリ食べて寝ると次の日伸びているんです。最近は時間がなくて走るのが難しいんですけど、土日の朝とか夜に走ってます。ちなみに日中は日焼けするので走りません! 夏は私の生まれた季節なんですけど、好きじゃないです(笑)」


――身長を伸ばしたいのはなぜ?

「今はやっと標準になったんですけど、背が高いほうが絶対有利。スタイルがよく見えるから!」


――将来の目標は?

「色んな演技が出来て、なおかつ周りのスタッフさんや共演者さん達に細かな気配りが出来る親切な女優さんになりたいです」


――親切な女優さん? そういう女優さんに出会ったんですか?

「以前、船越英一郎さんと共演させて頂いたんですが、ロケ地が雪の降る山奥だったんです。ずーっと山奥のホテルに泊まっていたんですけど、山を下りないとコンビニもない所で。撮影中、手袋もなく寒そうにしいるスタッフさんを見て『手袋を買いに行ってあげるよ』と言って山の下まで降りて買ってきて下さって。いつもお茶を配ったりみんなと楽しく話したりしていて、“ああ、凄いなぁ。この人は大物だ!”と思い、船越さんみたいになりたいと思いました」


『ビンタ! 弁護士事務員ミノワが愛で解決します』

原作/『特攻事務員ミノワ』小川圭(講談社 ヤングマガジンKC所載)
脚本/大石哲也 川嶋澄乃 高山直也 稲本達郎
監督/国本雅広 本多繁勝
チーフプロデューサー/木谷俊樹
プロデューサー/中間利彦 宮川晶
制作協力/ケイファクトリー
制作著作/読売テレビ
出演/松本利夫(EXILE) 山口紗弥加 石黒英雄 原菜乃華 西村雅彦 ほか

法律事務所に勤めるが、弁護士ではなく法律の知識もない新人事務員の箕輪文太・通称ミノワ(松本利夫<EXILE>)。正義感と善意で、遺産相続、離婚トラブル、債務整理トラブル、モンスターペアレントなどの問題を次々と解決していく1話完結型のドラマ。箕輪カナはミノワの異母兄妹で、放蕩者の父に苦労させられた影響か、どこか冷めていて現実的。誰に対してもなかなか心を開こうとしない。

2020年06月
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