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インタビュー

池田純矢   (いけだ・じゅんや)

池田純矢インタビュー-中島らも作、G2演出の舞台『ベイビーさん ~あるいは笑う曲馬団について』で主演を務める池田純矢。俳優以外にも精力的に活動をする彼に、表現することへの熱い想いを聞いた。

撮影/京介 文/渡邊美樹

プロフィール 池田純矢(いけだ・じゅんや)


1992年10月27日生まれ。大阪府出身。JUNONスーパーボーイコンテストで史上最年少準グランプリを獲得し、デビュー。主な出演作品に、ドラマ『海賊戦隊・ゴーカイジャー』『牙狼< GARO >~闇を照らす者~』など、映画『DIVE!!』『新宿スワン』などがある。2015年の舞台では、『ミュージカル薄桜鬼 藤堂平助篇』、少年社中『リチャード3世』にて主演。また『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』、『デジモンアドベンチャー tri.』等では声優を務める。今年の7月には、自ら企画・構成・脚本・演出・出演を務めた舞台「エン*ゲキ#01『君との距離は100億光年』」を上演した。映画『ライチ☆光クラブ』が今冬公開予定。
公式ホームページ http://www.ba-ru.com/

――『ベイビーさん~あるいは笑う曲馬団について』で主演を務められるということで、かなり気合が入っていると思いますが。

「そうですね、自分自身も決まってから発表されるまで、本当に出来るのかなと若干ドキドキしていて。発表されて『あ、本当にやるんだ』って思いました。その瞬間まで実感があまりなかったですね。元々、中島らもさんは好きでしたし、演出のG2さんとも、役者だったら一度はご一緒したい演出家さんなので。何度も作品を観てますし。そんな中で、まさか自分がこの立場でやらせてもらえるとは思ってなかったので、衝撃のほうが大きかったですね」


――今回の作品はストーリーがすでに書籍化されているので、私も読ませて頂きました。第2次世界大戦間近の満州を舞台に、日本軍の兵士と、そこへ慰問に訪れたサーカス団の姿を描いていていますが、なかなか独特な世界観ですよね。最初に読まれた時はどう感じられましたか?

「面白い作品だなと思いました。ショー的な要素や視覚聴覚的に楽しませるっていうアクションパートがあったり、更にコメディタッチで笑わせるとか、エンターテイメントの部分とかが凄いなと。そして、物語の最後、収束に向かって行く時に、ほろっとする描写もあったりしてエンターテイメントとは? っていうのが、全部つめ込まれているような作品だなと思いました。ただ、作品の内側にはもっと深い意味合いだとか、考えさせられる部分があったりするんです。笑っちゃう言葉一つにも、実は深く読み解くとこういう意味があったのかって考えさせられたりして、そういう意味では何度も楽しめる作品だなと思いました」


――池田さんが演じられる内海少尉という役は、一番観客の目線に近い存在ですよね。不思議な世界観の中でどう演じるのかなと思ったのですが。

「今まで、主演をやらせていただいても、どちらかと言うとその場をかき回すような物語を動かす役をやることが多かったので、いわいる翻弄されるというか、引っ張られていくという役柄はそこまで演じて来てなかったんです。だから、そういう意味では凄く難しいなと思う部分もありつつ、だからこそ楽しみです。今まで自分がやっていなかったアプローチをしなくてはいけないっていう緊張と同時に楽しみや、期待みたいなものがあります」


――現場でのみなさんとの絡みで作られていくキャラクターが内海なんじゃないかなと思います。共演者のみなさんとガッツリお話されるということは、これからという感じなのでしょうか?

「今回共演する鈴木勝吾とは、前々から作品で一緒になっていたりするので、少し話をしたりしました。とはいえ稽古もまだなので、自分が今感じている気持ちをこうすべきかな? とか、そういう思いはもちろんあるんですけど、僕らもまだ答え合わせをしていないので楽しみですよね、G2さんがどういったニュアンスで演出されるのか」


――そうですね。一度上演されている作品とは言え、G2さん演出できっと変わってくる部分もあるでしょうし。今の気持ちとしては、稽古が待ち遠しいという感じですか?

「そうですね、待ち遠しいですね!」


――初めてG2さんとご一緒されますが、今回の舞台をどうしたいとか思い描いているものはありますか?

「物語自体は本当にエンターテイメント作品なので、間違いなく楽しい舞台ではあると思うんです。お客さん全員が泣けるだろうし、笑えるだろうし、楽しい気持ちになるっていうところは第一にあって…。あとは、そこから先ですよね。その先に何を残せるのかっていうのは、役者の仕事だと思いますし、G2さん含めてこの面白い戯曲をどう表現していくのか。この面白い本を伝えるっていうのが第一目標で、次に、その先どこまで何を残していけるか。僕は、キャラクターを通して作って行かなきゃいけないなっていう気持ちです」


――先程、お名前が出ましたが、原作者の中島らもさんを元々お好きだとおっしゃってましたね。彼のどんなところに魅力を感じていらっしゃるのでしょうか?

「中島らもさんって、演出家、劇作家、そして俳優の顔もあります。でも、お芝居の人かと言ったら、それだけではなくてコピーライターやミュージシャン、小説家だったり…。本当に色んな顔を持っていて職業不明ですよね。でも、どの作品も一級品で時代に刺さるものをいっぱい作っていて、究極のエンターテイナーなんだなと思います。形に捕らわれず、その作品に似合うコンテンツはなんなんだろうというところから、じゃ、これをやればいい、あれをやればいいって、表現の形を広げられる人っていうのは、本当に凄いことだと思います。僕自身も表現の形に捕らわれたくないという思いがあって、この夏、自らの作、演出で舞台をやったんです。もちろん役者としてこれからもずっとやっていくつもりですけど、“その枠内でどうにかする”じゃ、どうにもならないことが出てきた時に、諦めてしまうのは嫌だなって。僕も、その枠から抜け出せる人間でありたいって思うので、凄く中島らもさんに憧れます。あとは、やっぱりらもさんの演劇への考え方ですね。自分が作る物語は、面白ければそれでいい。そして、劇場を出た瞬間、何が面白いか忘れちゃう。それでいいっていう。なんか、そういう精神って凄く素敵だなって思います。もちろん、作品を演じる人としては、深いところまでしっかり考えて臨みます。でも、別にそれは観客には伝わらなくていいと思うんです。舞台を観て、その瞬間面白ければそれでいいじゃんて、言えるクリエイターって凄く素敵だなって思います」


――ご自身でやられた舞台「エン*ゲキ#01『君との距離は100億光年』」についてお伺いしたいのですが、実際に舞台を終えてみていかがでしたか?

「大変なことをやったなと。今回、舞台監督さんとか、美術さんとか照明さん、音響さんみんなと打ち合わせをして、自分の想いを伝えて、そこから色んな要素を引き出して頂いたんです。ひとつの舞台が出来るっていうことに対して、今までもひとりでやっているつもりはもちろんなかったですけども、よりひとりでは出来ないっていう気持ちが強くなりました」


――実際経験してみないとわからないですよね。今後、ご自身で発信していく活動というのは…?

「そうですね、続けて行きたいと思ってます」


――脚本も書かれるというのは、かなり時間がかかると思うんですが。

「かかりますね、大変です」


――昔から書くことが好きだったんですか?

「そうですね、小説とか書くのは好きです。この前やったやつは、5、6年前に僕が書いた小説を上演台本にしてやったので、割と早く出来たんですけど。次もしやるのなら、一から上演台本を作りたいなと思っているので、そしたら相当時間がかかるなと…」


――そういう活動をされている20代前半の俳優さんはなかなかいらっしゃらないと思います。池田さんの表現することへの貪欲さっていうのはどこから来るのかなと思ったのですが。

「なんですかねー。でも、僕はある意味、自分を一番の観客だと思っているんです。自分が出演する作品は、自分が観客だったら“こんな芝居を見たい”と、いうことを想像して演技します。もちろん、作品は演出家のものだと思いますが、まずは自分が見たい芝居をやってみます。見たい芝居っていうのは、変に作ってどうこうっていうのではなくて、作品には、台本という骨組みがある訳ですけど、こういう肉付きをしていたら美しいよねとか、こんな風に血が通っていたら素敵だよねって、そういう自分が思う表現をやりたいなと思っています」


――表現したいから作るというよりも、見たいから作るという視点なんですね。

「そうですね。だから、先日の脚本・演出で作品を上演させてもらったり、日々役者の仕事とか、あとはアニメ声優とかもやったりするんですけど。それも自分が好きだからやっていて。好きで面白ければ、形に捕らわれなくてもいいよねって、凄く思います。たまに、俳優ではない土俵で違うことをやっていると、厳しい目もあったりもしますが、どれも表現には変わりなくて。もっと言えば、役者っていう部分では一緒だって、思うんですよね。もっと広い意味で言ったら、ミュージシャンも作家もコピーライターも表現者という意味では一緒だと思うんです。なので、どんな媒体であれ、プロセスであれ、形であれ、何かしらを表現するという意味では変わらないので、自分が面白いと思うことをやりたいって思います」


――柔軟ですね。このお仕事を始められて池田さんは10年になりますよね。デビューした当時、10年後こんな風になっているって想像してましたか?

「全然違いました。一番最初は、ハリウッドスターになりたいとか言っていたので(笑)」


――大きな野望ですね(笑)。でもそれは、どの辺から意識が変わって行ったんですか?

「デビューして、割りとすぐ…。何においても自分が一番になったことがないので。二番になれても一番にはなれなくて。それこそデビューするきっかけになったコンテストで準グランプリ、二番だったんですよ。その時は、『やったー!』って喜んでいたんですけど、後日報道されているのを見たら、グランプリの名前しか出てなくて、凄く悔しかったんです。だから、一番最初の原動力ってそこなんです。恥ずかしいですけど。でも、もちろん、役者を続けているのは悔しいからかと言ったら、全然そうではないんです。初めてオーディションを受けて、初めて出演した映画で『DIVE!!』という作品があるんですが、その撮影の時、監督にボロクソに言われて(笑)。めっちゃ怖かったんですけど、ラストシーンで、一発OKが出たんですよ。監督に『今のよかったよ。今ぐらいのを最初からやってくれれば』って言われて(笑)。でも、その時にめちゃめちゃ嬉しかったんです。そして、その時に、なぜその演技がOKだったのかが分からなくはなかったんですよ。やった時に、『あ…。あれ?これかもしれない…』って思って。それでOKをもらったので、なるほどこういうことか! って。その時に、『芝居って面白いな』と思いました。劇場で『DIVE!!』を観た時に、もちろん、自分の恥ずかしいところも見えたんですけど、ラストシーンにはぐっときたんです。最後、エンドロールで、キャスト、スタッフの名前がでてきて。ものすごい数のスタッフさんの名前がでてくるんですけど、それを見ながら、こんなことがあったとか、あの人にこんなことを言われたなとか、色々思い出して、その時に凄い感動して、めちゃめちゃ泣いたんです。エンドロールで(笑)」それが役者をつづけようと思った一番のきっかけですね。


――思い出が蘇って(笑)

「そうです。その時に、この仕事をしていこうと思いました。周りのお客さんも泣いていて、もちろんそれはストーリーで感動しての涙ですけど、でも、その時に自分もお客さんに何を伝えられたのかなって思って。そして、話は戻りますが、それでも色々やっていく中で、一番にはなれないというのがあって。でも、一番になれないなら、ならなくていいやって思ったんです。何かひとつ極めたとしても絶対成功できるかといえば、そうではないし…。じゃ、自分が表現したいことを現実にするためにはどうすればいいかと言ったら、全部でニ番になればいいって思ったんです」


――なるほど、凄い考え方ですね!

「一番になれないのなら、アクションでも、演技でも、歌でもなんでもいいから、全部二番くらいの実力を持てば、どこにでもいけるだろうって。何やらせても凄いって言われる人間になりたいなって」


――今、ご自身でその目標に近づけている実感はありますか?

「どうでしょうね? でも、出来ることが増えているっていう実感はあります。だから、もっと増やしていきたいと思ってますけど」


――じゃ、今スピードが加速して勢いがある感じですか?

「うーん、勢いではないかも。感覚としては。100メートル走をやっている感じではなくて、ハードル走をやってる感じ。ハードル走も、ぴょんぴょん飛んでいくのではなくて、ハードルを一個一個ぶち壊しながらやってる感じです(笑)。ゆっくりでも、前に進んで行っている感じですね」


――では、今回の作品もそのひとつのハードルかもしれませんね。

「そうですね。こういう作品は、リアリティを持ってやらないと。要素が多いからこそ、説得力を高めないと伝わらないなと思ってます」


――それも含めてどんな作品になるのか楽しみにしています。

「ありがとうございます。よろしくお願いします!」


『ベイビーさん ~あるいは笑う曲馬団について』

第2次世界大戦間近の満州・新京。あるサーカス団が軍隊の慰問に訪れた。内海少尉(池田純矢)ら日本軍達は、彼らが行うことに対して厳しい目を光らせ、険悪な雰囲気が漂っていた。ある日、彼らを視察するために八代大佐(小須田康人)がやってきたのだが、八代は、そのサーカス団で飼われている、餌を食べない不思議な動物“ベイビーさん”に目を付け、部下である内海少尉にベイビーさんを捕まえてくるように命令を出す…。

作/中島らも 演出/G2
出演/池田純矢 鈴木勝吾 / 小須田康人 / 松尾貴史 ほか

日程 2015年11月7日(土)~11月14日(土)
会場 Zeppブルーシアター六本木
チケット発売日 2015年9月26日(土)
公式サイト http://baby-san.com/

2020年08月
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