プラスアクト

インタビュー

橋本 愛   (はしもと あい)

久々に現れた“正統派美少女”だ。橋本愛。松たか子主演の『告白』で注目を集め、いつしか立て続けに出演作が公開される女優に成長。『管制塔』『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』、そして主演作の『アバター』だ。携帯電話のアバターに支配される女子高生のサスペンスフルな状況を描く山田悠介の同名小説を映画化。鬼気迫る映像とフレッシュな出演陣の中、橋本の存在感が光る。ブレイク前夜の彼女に、話を聞いた。

撮影/柳沼涼子 文/田中大介

プロフィール 橋本 愛(はしもと あい)


1996年1月12日、熊本県生まれ。08年にソニーミュージック主催のSMAニューカム HuA HuA オーディションでグランプリを受賞。13歳で『SEVENTEEN』の専属モデルとなる。09年に映画『Give and Go』で映画初主演を飾り、中島哲也監督『告白』(10年)でクラス委員長役を演じ、注目を集めた。今年は『管制塔』『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』などの公開作が続く大型新人女優。主演作『アバター』では、携帯電話内の“アバター”に翻弄され、意外な展開を迎える女子高生役を熱演した。

── 『アバター』は怖い映画でしたね。

「そうですね」


── 実際の作品を観て、どんな感想を抱きましたか?

「やっぱり山田悠介さんの独特な世界というのが映像に表れていて……。『リアル鬼ごっこ』という作品を最初に観た時、やっぱり衝撃がありました。今回は出演している側なので、あんまりわからないんですけど、恐怖する部分はやっぱり『アバター』にもあったと思います」


── 撮影期間中、怖くなってしまうようなことはありませんでしたか?

「そうですねえ。撮影中“残酷だなあ”と思ったけれども、映像を観るとそれが倍増していました」


── 自分が演じている作品を観る時ってどんな気持ちになりますか?

「うーん、なんて言うんだろう。簡単に言うと“恥ずかしい”ってことなんですけど……。試写に行くと(自分が画面に)出て来てほしくないと思うこともあります。“そのまま出番がないまま終わってほしい”って(笑)。慣れないというのもあるし、それ以上に自分の演技に納得出来ていないから尚更そう思うのかもしれないです」


── 反省する気持ちになってしまう?

「今回の『アバター』は特にそれが大きかったような気がします。ほかの作品だと、どうだろう……。『告白』の時は撮ってから完成するまで時間がかかったので、映っている自分を観て“わあ、凄く幼いなあ”っていう感想でした。でも今なら、“ここはもっとこう出来るんじゃないか”と思いながら観ているような気がします。撮影やリハーサルの期間も長かったので、そんなことを思い出しながら観ていました」


── 『アバター』出演が決まったあとのことを教えて下さい。台本の感想は?

「“結構、原作に忠実に書かれているなあ”というのが最初の印象でした。今までの山田悠介さんの作品でもそうですが、主人公も女子高生で自分と近いし、“怖いなあ”と思いながら面白く読み進められました」


── 山田悠介さんは元々好きだったんですよね? 何かきっかけはあったんですか?

「きっかけは、『スイッチを押すとき』という作品を読んだことです。それから好きになりました。友達から教えてもらいました。私の周りの同級生や友達にも、山田悠介さんの小説が好きな子は結構いますね」


── 同世代に人気の作家さんが原作の映画に出た訳ですから、自慢出来ますね。

「最初にお話を頂いた時は嬉しかったです。特に周りに山田悠介さんが好きだと言っていた訳じゃないんですけど、好きな本について聞かれたり、アンケートに答えたりする時は、必ず山田さんの名前を出していたと思います」


── 夢が叶っちゃいましたね。

「映画の『スイッチを押すとき』にも凄く出たかったし、嬉しいです」


── 山田悠介作品のどこが好きですか?

「やっぱり、本当に独特で非現実的な世界があるということと、自分と世代の近い主人公が出てくるので入りやすいというのがあるんじゃないかなと思います。あとは……。残酷で救いようのない話なんですけど、心が揺さぶられて感動するし、すいすい読めちゃう面白さがあって好きなんです」


── 監督さんとはどんな話を?

「あんまりそれらしい話はなかったです。あんまりリハーサルの時のこと、憶えていないんです(笑)。監督と話し合うというよりは、クラスメイト役の子達と話していたことのほうが多かった気がします。実際の現場では、自分が1回やってみて、それがよかったら採用してもらえました」


── 道子という主人公を演じる上で、役に共感する部分はありましたか?

「私だけに限らず、色んな人が共感するだろうと思う部分が道子にはあると思います。例えば、ひとつのことに夢中になれるところはそうかもしれないです。私は普段、あまり夢中になって周りが見えなくなるようなことがないので別のタイプですけど」


── 作品は携帯電話が重要なモチーフですが、ケータイに依存しちゃうような子はまわりに多いですか?

「依存しているというのはわからないですけど、ほとんどの子が普通に触れているので……」


── ラストの対決シーンは圧巻でしたが、どのように撮ったのですか? 何か相談したことはありましたか?

「それが特にありませんでした(笑)。どんどん撮影が進んでいく感じでした」


── ロケは寒くなかったですか?

「寒かったです! 学校の渡り廊下にいるシーンは雨が降っていて、気温も凄く下がっていて、実は凄くかじかんでいました(笑)。制服のスカートも短いので。しかも上はシャツが1枚なので、カイロを貼ったら、うっすらとシャツの内側が見えてしまうんです。なので、カットがかかった瞬間上着を着込んでました」


── 共演者のみなさんとはどのように過ごしましたか?

「普通の女子同士の会話をしていました。映画の内容は怖いけど、現場は全然暗い雰囲気じゃなかったし、どちらかというと和気あいあいとした空気だったと思います。年齢はバラバラで、私が一番年下だったんですけど」


── 先輩後輩の感じもなく?

「そうですね。(坂田)梨香子ちゃんは『SEVENTEEN』で一緒になることもあったので、よく知っていましたし。でも、やっぱりこう、先輩の役者さんは現場を盛り上げたりして下さっていました。教室でのシーンで、凄く頭が痛くなった時があって。気分が悪くなっちゃったんです。その時は私が凄くおとなしいタイプと思われたみたいでした。だけどだんだんみんなと喋れるようになったので、本当にいい人達と一緒に出来たと思います」


── 内容は裏切りなどで満載なのですけどね。そういえば道子は冴えない時代があって、アバターによって自信満々のキャラに変貌します。同じ役でも切り替えが必要だったのでは?

「だんだん変わっていくのではなく、ハッキリと変わったので、そこの部分では苦労なく出来ました。メイクも全然違うんですよ」


── プラスアクト2011年5月号では竹野内豊さんに『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』について語って頂いています。橋本さんはこの作品にヨシコ役で出演していますね。

「映画は凄く面白かったです。ラストでは感動するところもあったりして、よかったです。『大木家~』は去年の春で、『アバター』は去年の秋から冬に撮影しました」


── 短い期間で全然違う役をやっていますね。気持ちの切り替えなどはどうやっているんですか?

「あんまり切り替えはしないです。前の現場でやったことを吸収して次の現場に活かしたいとは思いますけど、あんまりスイッチを入れ替えることがないです」


── 橋本さんはプラスアクトに初登場ですので、芸能活動をスタートした時のことも少し教えて下さい。オーディションにはお母さんが応募したそうですね。芸能界への興味や憧れは?

「それが全然なくて。テレビドラマも見る習慣がありませんでした。映画もアニメ系くらいで、実写の映画はほとんど観たことがなく、芸能人の名前も知らなくて、夢もなく(笑)」


── では、橋本さんの知らないところで書類を出したのですか?

「そういう訳ではないんですけど。なんか母親は面白がって出したみたいなところがあって。私もこういう世界をそもそも知らなかったから何も想像していなかったし、何も考えていませんでした。なので、お芝居をやるのも何も知らない状態で始めました。現場で吸収したり、台本を読んで、考えたりしています。今はドラマを見るようになって、時々参考にしています」


── お芝居をして面白いと思う瞬間はありますか?

「上手く出来た時の嬉しさや、出来なかった時の悔しさを感じる面白さもあるし、普段出来ないようなことを経験出来たり、セリフでも普段言わないようなことを言えたりするのが楽しいですね。あと、衣裳も楽しみのひとつだったりします」


── 橋本さんは志田未来さんを目標の女優さんに挙げていますが、それはどんな理由が?

「年齢はあんまり変わらないのに凄く活躍されているので。お芝居が自然で、観ていて凄く上手だなと思わされるし。『借りぐらしのアリエッティ』を観に行ったんですが、やっぱり全然違うキャラクターに聞こえるくらいに役になっているのが凄くて、尊敬します」


── これまでの共演者で憧れるような人は?

「『告白』の松(たか子)さんはとても凄い方だと思いました。リハーサルの時、松さんがあとから入ってきた時、オーラがあって凄くかっこよかった」


── 話は変わりますが、自分の性格を「負けず嫌い」としていますね。

「それが長所になったり短所になったりするんですけど。モデル仲間とかにも、競争心みたいなものを持ってしまうことがよくなかったり、逆に影響を受けていいこともあるんですけど。仲間だし、友達なのにどこかそういう感情を少しでも抱いてしまうのが嫌だなと思うことがあります」


── また映画の話に戻りますが、『アバター』に出てよかったと思うことを挙げるとすれば、なんですか?

「私には反省することがたくさんあるんですが、作品としては好きだし面白いと思います。主演として、反省して自分を見直す機会を頂いたと思います。観ていて発見もあったので、それが今後に役立てば……」


── そうやって考えるなんて、自分に対して厳しいですね。

「いや、全然甘いですよ。なんかこういう風に後悔したり反省したりというのは、わりと多いですね。仕事だけじゃなくて、先生に同じことで怒られた時なんかもそうです」


── それは凄く真面目な姿勢だと思いますよ。橋本さんは全く知らない人に自己紹介する時、自分をどういう人だと説明しますか?

「学校では、明るくて変だって言われます(笑)。だけど自分で内面を見ていくと、欠点や甘いところが多かったり、弱い部分を持っていたりするので」


── 若いのに、それをわかって自覚しているのが凄いじゃないですか。

「わかっているのに何もしないんですよ」


── 大人でも自分で気づいていない人もたくさんいるから、やっぱり偉いと思いますよ。橋本さんは自分に客観的なのかもしれません。

「この仕事をし始めてから、人間観察もするようになりました。自分の性格もお芝居に活かせたらいいなと思うようになってきたんです。周りのことも気になるようになって、お芝居する上で色々じっくり見るようにはなりました」


── 最後に、女優さんとしての目標を教えて下さい。どんなことでもかまいません。

「目標とか夢と言っていいのかわからないですけど、映画が多かったからドラマに出てみたいです。なので、それを夢と言っていいかどうか(笑)」



作品紹介『アバター』

監督/和田篤司

原作/山田悠介「アバター」(角川書店)

脚本/野口照夫

出演/橋本愛 坂田梨香子 水沢奈子 はねゆり 佐野和真 加藤虎ノ介 紺野まひる ほか

配給/太秦

ⓒ2010 山田悠介/角川書店/「アバター」製作委員会

http://www.ava-q.com

女子高生の阿武隈川道子(橋本愛)は10歳の時に事故で父を亡くし、母の恭子(紺野まひる)とふたりで暮らしている。クラスでは地味な存在で、学園で発言力のある阿波野妙子(坂田梨香子)に苛められている。妙子から強制的に携帯電話のSNSサイトに入会させられるが、とある出来事をきっかけに携帯電話サイト上の自分の分身“アバター”にハマっていく。希少なアイテムを獲得し“アバター”で力をつけた道子は、妙子を押し退いて“学園の女王”に君臨するのだが……

4月30日(土)より、シアターN渋谷ほか全国順次公開

2020年12月
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