プラスアクト

インタビュー

小柳友   (こやなぎ・ゆう)

映画『がじまる食堂の恋』に出演する小柳友。沖縄を舞台に4人の男女の恋愛模様が展開する今作で、小柳は主人公・みずほ(波瑠)の前に突然現れ、彼女を翻弄する男・城島隼人役を演じる。今まで演じたことのない大人びたキャラクターはチャレンジだったと語る彼が、今作品で感じたものとは? 楽しすぎたという沖縄・名護でのロケの話しもたっぷり聞いた。

プロフィール 小柳友(こやなぎ・ゆう)


1988年8月29日生まれ、東京都出身。テレビ、映画、舞台などで幅広く活躍中。主な出演映画は『トウキョウソナタ』『大洗にも星はふるなり』『阪急電車 片道15分の奇跡』『カラスの親指』など。テレビドラマは連続テレビ小説『つばさ』『マルモのおきて』『私が恋愛できない理由』、大河ドラマ『平清盛』『ミス・パイロット』などがある。また、出演舞台『炎 アンサンディ』が、9月28日(日)~10月15日(水)東京、10/18(土)兵庫で上演予定。映画『アオハライド』が12月13日に公開。

撮影/中根佑子 文/渡邊美樹

――『がじまる食堂の恋』拝見致しました。ストレートな恋愛ドラマでオリジナルストーリーだったので、凄く新鮮な気持ちで観させて頂きました。

「(オリジナル作品が出来ることが)監督は凄く嬉しかったみたいです。そして、監督に『みんな一人ひとりのキャラクターを自分で作っていいんだからね』って言ってもらったりして、僕自身、嬉しかったですし、改めて自分で作っていくっていう作業が楽しかったですね」


――4人の男女のキャラクターがちゃんと描かれていました。そして、小柳さんはその4人の中で1番年上になると思うんですが、撮影現場はいかがでしたか?

「僕もそんな歳になったんだなーって思いました(笑)。今まではずっと、先輩達に甘えて、甘えて…だったんですけど、同じ役者さんから、『友さん、友さん』って呼ばれて、慕われている…あれ? って(笑)。もちろん、嬉しいんですけど、やっぱり自分は、みんなをまとめていかなくちゃいけないなっていう責任感というか、ひっぱっていきたいっていう風に思えたので。それって、自分の中で凄く成長出来た作品なんだろうなって思いましたね。波瑠ちゃんはもちろん主演ですので、組長としてやっぱりさすがだなって感じなんですけど(笑)。この4人の空気感をちゃんと保つのは、きっと僕の役目なのかなと思って、なるべくコミュニケーションを取ろうと思いました」


――沖縄でずっと撮影をされたとのことですが、そこで寝起きして撮影をするという生活はいかがでしたか?

「まぁ…、最高でしたよね(笑)。僕この役を頂いて、みずほに好きになってもらえるように役作りをしようと思って5キロぐらい痩せたんですよ。沖縄って自然が綺麗だし、毎朝走るのに最適じゃないですか。だから、撮影が始まってからも頑張ろうと思って行ったら、まさかのご飯がうますぎて…! 目の前に出てくるうまそうなご飯、プラス、オリオンビール。もう、これには敵わないわーって(笑)。本当にご飯がうまいんですよ。最高の環境で撮影出来たので、本当によかったな。でも、そこで自分に負けちゃいけないなと思ったので、毎朝10キロくらい走ってました。まぁ、前の晩に飲んじゃうので結果プラスマイナス0なんですけど(笑)。今まで走ったりしたことなかったので、名護が自分を変えてくれたっていうのが凄くあるのかなと。感謝してますね」


――今回の役どころが、ちょっと大人な役ですよね。『カラスの親指』の時の小柳さんの印象と全く違っていて凄く驚きました。

「あのー、えぇ、そうなんですよねー(笑)。自分自身が大人になって、セリフを言わなくちゃいけないっていうのは、正直難しかったですね。キャラクター一本勝負みたいな、そういうことでもないので(笑)、ちゃんと4人の人間関係があって、そこが絡み合っていかないとこれは成立しないなと思いました。なので、凄く苦労しましたね」


――キャラクターの裏設定などは、監督と話し合ったりはされたんですか?

「役の人生年表を1番最初にもらいました。何年に生まれて、どんなことがあったのか、隼人のプロフィールがずらーっと書いてありました。それを基に監督と話をしながら撮影していきました」


――こういう男性がいいっていう女性が、もしかして多いのではないかなと感じました。実際作品を見た方の声で、理想の男性だという声もあったそうです。こういう男性を小柳さんから見てどう思いますか?

「ミステリアスっていうのは、必要だろうなって思うんですけど。あんまりわからなすぎてもどうかと思いますが(笑)」


――なかなかいないタイプかもしれないですね。

「そうですね、最初に台本を読んだ時、なかなか特殊なタイプで、こういう人っているのかな? って思いました。でも、自分が演じていくうちに、いるかもしれないなと徐々に納得していきました。今までは、こういうパターンってなかったんですけど」


――確かに、小柳さんが演じるキャラクターでは初めてのタイプですね。

「初ですねー。なので、挑戦でもあり楽しかったです」


――地元の方の協力があって、この作品が出来たとのことですが、撮影中、現地の方との交流はあったのでしょうか?

「なるべくコミュニケーションを取ろうと思ってました。名護っていう街そのものが本当にフレンドリーっていうか。知らない人でも『おはよう』と挨拶をしてくれるんですよ。僕は毎朝海辺を走っていたんですけど、前から歩いてきたおばあちゃんに『あ、どうもー』って声をかけたら、おばあちゃんが『ハロー!』って(笑)。ちょうど撮影と同じ時期、名護にプロ野球チームのキャンプが来ていたので、これは多分、外国人選手と間違えられたなと。だから、一応『ハロー』って返しました」


――そういう地元の雰囲気を感じながら撮影出来たんですね。名護は確かにいい所ですよね。

「もう、本当にいいところです。名護を強く推したいです(笑)。ちょっと、空港からは離れているんですけど、名護にしかない空気があったり、商業的じゃないというか。地元の温かい感じがあると思うので」


――地域がこれで注目集めたらいいですよね。

「そうですね。本当にそう思います」


――どのくらいの期間名護にいらっしゃったんですか?

「約3週間です」


――でも、その間ずっと美味しいものを食べて、現地にいられるのは…

「幸せでした。色んなお店に連れて行ってもらったんですけど、グルクン(魚)をもずくで包んだ天ぷらが、すっごいおいしくて! それを食べてから禁酒解禁! ってなり、そこからビールを…(笑)」


――お芝居をする上で、環境って影響しますか?

「しますね。僕と桜田通君が話をしているシーンがあるんですけど、そこを撮影している時、凄く晴れたんですよ。実際映像を見た時に、晴れて気持ちいい時と、若干曇っている時とではやっぱり違うなーって、質感が違うっていうのは面白いと思いましたね」


――自然の保つ力が映像に出たということですよね。

「はい。景色が綺麗すぎて『負けちゃいけないな』って思いました(笑)。飲まれちゃいけないって、景色だけに目がいっちゃわないように僕も頑張らないと負けるぞって」


――明るい土地を舞台にしてますが、キャラクターそれぞれ過去を抱えている設定ですよね。過去に何か抱えているという裏設定を踏まえて演じることって、難しいところなどあったりするのでしょうか?

「僕の場合ですけど、あったことっていうのは事実じゃないですか。事実は覚えやすいというか、これがあったと思っちゃえばいい、という感覚がキャラクターの中にあって。それよりも、そこからの関係性のほうが難しく感じましたね」


――なるほど。では、それぞれ4人の関係性を演じる上で、お互いに意見交換することなどありましたか?

「そういうのは、あんまりなかったかな。とにかく、現場を楽しくっていうので、もっと密になっていくというか。お互いがお互いのことを、本人同士が知っていって、そこから生まれてくるものというか、それを出したほうがいいんじゃないかって。こうしようっていう決め事を作るのが、監督的にも嫌だったのかな? 僕もあんまりこういうキャラクターだからとか、こうしてくれっていうのではなくて、キャラクターも人に壊されてまた作り直してっていうのをやっていったほうが、キャラクター自体が大きくなっていくと思うので。なるべく決めないようにやっていたと思いますね」


――そういう作品をやった後って、どんな役をやりたくなりますか?

「あー、やっぱり狂気したものがやりたくなりましたね。なんというか、人間関係というよりも、人自身がおかしくなっているっていう、ちょっとずれてるような役はやりたいなって思ってました」


――真逆の方向ですね。

「それで、これは不思議なんですけど、めぐり合わせというか。この役をやった後に、ドラマ『BORDER』って、波瑠さんが出ていたドラマ作品で、犯人役で出させて頂きました」


――見てました。1話ですよね。

「そうです。狂気した役で。その時、すっごい気持ち悪いメイクをしていたので、波瑠ちゃんが本当に引いちゃって、『え、私たち沖縄で恋愛映画撮ってたよね…? 』って(笑)。なんか申し訳ないなーって思いながら(笑)」


――役者としては、凄い大成功なんですけど…

「凄い、嬉しいんですけどね(笑)。役者冥利に尽きるというか、本当に嬉しんですけど…。なんとも(笑)」


――あのような役はやりがいありますよね?

「やりがいはありましたね。楽しかったです。ガーッと入り込んでいくような感じとか。遠藤憲一さんにもアドバイスを頂いたりとか。よくお話させて頂きました」


――どういうお話しをされたんですか?

「芝居を作っていく感じをいろいろディスカッション出来たので楽しかったですね」


――そう思うと面白いですね。映画の時は1番年上で、ドラマの現場では自分が教わる立場になるっていうのは。

「別の立場になりますからね。凄くいい成長ができている期間だったと思います」


――舞台もまた控えてますしね。そう思うと、映画、舞台、ドラマと色々活躍の場が増えてますけど、自分で変化とか成長というのを感じたりしますか?

「今までなかった欲というのが出てきたなって思います。こうしたい、ああしたいって。もっと自分がこうなったら、上の世界が見えるんじゃないかとか。仕事に対する欲っていうのもが、もちろん昔からあったと思うんですけど、少なかったなと思うので。そこからひとつ上のものを求めるようになったなと」


――それは、何かきっかけがあったとかではなく?

「きっかけというか、もっと中に入りたいというか、もっと密な芝居をしてみたいなって思うようになってからですかね」


――では、最後にこの作品の見どころを。

「えー、名護市長が出てます(笑)」


――自分の演技とかじゃないんですか!?(笑)

「そうですね、もう街を宣伝したいです! もちろん、僕らも見て欲しいんですけど、映画を観ていただいて、いつか名護に行きたいなって思ってもらえたら一番いいなと思うので。是非、映画を観て、名護に行って頂きたいと思います」


『がじまる食堂の恋』

監督:大谷健太郎
脚本:永田優子
出演:波瑠/小柳友/竹富聖花/桜田通 ほか
配給:BS-TBS
©2014名護まち活性計画有限責任事業組合

沖縄・名護にある「がじまる食堂」のオーナーであるみずほ(波瑠)は、ひとりで食堂を切り盛りしていた。ある日、見知らぬ旅行者・隼人(小柳友)が、「財布をなくした」とみずほの元に転がり込んでくる。隼人の行動に困惑するみずほだったが、時を同じくして幼なじみで元恋人の翔太(桜田通)が5年ぶりに東京から帰郷。更に困り果てるみずほに、隼人はあなたの恋人になりましょうか? と、期間限定で恋人のふりをすることを申し出た。そして、画家でもある翔太が絵のモデルとして呼んだ謎の美女・莉子(竹富聖花)も加わり、4人の恋のドラマが動き出す。

9月20日(土)全国ロードショー

2021年07月
12345678910111213141516171819202122232425262728293031
« »


アーカイブ


最近のインタビュー記事