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インタビュー

尚玄   (しょうげん)

端正な顔立ちと誰もが羨むスタイルでモデルとして活躍してきた尚玄。昨今、映画を中心に出演作も増え、目を惹く独特な雰囲気でその存在感を放っている。2月4日から公開される映画『忍道~SHINOBIDO~』でも、その魅力をいかんなく発揮。作品に奥深さを織り込ませた。

撮影/柳沼涼子 文/服部保悠

プロフィール 尚玄(しょうげん)


1978年生まれ、沖縄県出身。主演で俳優デビューを飾った『ハブと拳骨』以来、俳優業へと軸足を移し『カフーを待ちわびて』『アコークロー』など多数の映画に出演。モデルとしてもミラノコレクションに出演した経歴を持つ。12年は1月にオムニバス舞台『Kitchen』に出演。『忍道~SHINOBIDO~』が2月4日、伊藤歩とダブル主演を務めた『The Room』(公開日未定)も控えている。

――『忍道-SHINOBIDO-』が公開直前ですが、作品をご覧になっていかがでしたか?

「日光江戸村さんの25周年記念作品なんですよね。今回その記念に、忍者を題材にした時代劇をやりたいということで出演させて頂いた訳ですけど、王道の忍者映画という意味では凄くいい作品だと思います。海外にも目を向けている作品ということもあったので、参加することに凄く意義がありました。立場の違うふたりが惹かれあうというのも、わかりやすくてよかったですよね。その中でも独特な世界観は出せてたと思います。プロットの段階から作品や役についての意見を言わせて頂いたんですが、最初は僕が演じる駒彦は東五郎(ユキリョウイチ)の元妻・お凛(岩佐真悠子)の兄ではなかったんです。でも駒彦のキャラクターをもっと深く作るために、お凛とは兄妹という設定に変えてもらいました。東五郎との確執も、その設定を作ることで説得力が増すんですよ。そういう風に、自分の意見を言わせてもらうことが出来たし、実際に反映してもらえたんで、参加出来て面白かったしいい経験になりました」


――今までもそういう風にプロットの段階から参加した作品はありましたか?

「『ハブと拳骨』もシナリオハンティングから参加してるんです。日本にはあまりない形なのかもしれないですけど、アメリカにはよくある形で。芝居の勉強をしにニューヨークに行ってた時によく感じたんですけど、向こうの俳優は凄く自主的に作品作りに参加してるんです。歴史的なバックグラウンドからキャラクターの掘り下げ方まで凄く時間をかけて、ディスカッションをしながら作り上げていくんですね。自分の意見を言える場があるのは当たり前のことで、そこから生まれてくるものもあるじゃないですか。もちろん、日本は日本で素晴らしい映画の作り方があると思うんですけど、僕は作品をよりよくするために、言うべきことは言える環境が大事だなと。『忍道~』ではそれが出来たのがよかったですね。でも怖いのは、監督やスタッフへの越権行為。それはしてはいけないので、意見を言ってもきちんとバランスを取りながら、自分が参加する意義を見出していければと思います」


――そのバランスは物凄く難しいですよね。相手によっても違うだろうし。

「そうなんですよ。監督によってはそういうことを好まない方もいるし、逆に好きな方もいるので。周りの方にどういう監督か聞くこともありますけど、一番は本人にお会いして、その時の印象や話をしてみてバランスを決めますね」


――『忍道~』ではアクションもありましたが、撮影に入る前はどのような準備をされましたか?

「クランクインの5日前に現場入りしてみっちり稽古をしました。実は、僕の役が急遽拳銃使いに変わったんですよ。ユキさんからも、現場に入ったら殺陣の稽古を厳しくやるからって言われてたので意気込んで行ったら、いきなり“駒彦は拳銃使いになったから”って言われて(笑)。刀も使いたかったですけど、確かに悪役感は増したのかなって思ってます。あとは、カメラテストも実際の現場で出来たんですよ。日光江戸村のロケーション現場で。それは凄く贅沢な時間でした」


――男性は時代劇や歴史が好きな人が多いと思いますが、尚玄さんはいかがですか?

「僕も歴史は好きです。日本人に生まれたからには、時代ものとヤクザものは絶対に出たいと思ってて。これからもチャンスがあれば出たいです。中野裕之監督作の『七人の侍』に出させて頂いた時に殺陣と乗馬はみっちりやったので、ベースは出来てるつもりですし、今後もその経験を活かして時代ものは出たいと思ってるので……、やっぱり観てても演じててもいいですよね。所作とかもっと奥が深い部分もやってみたいです」


――和服が似合いますよね。

「僕は顔の作りが西洋的だと言われるんですけど、意外と時代ものははまるって言われるんですよ。それは不思議ですね(笑)」


――特に好きな時代はあるんですか?

「やっぱり江戸ですね。特に幕末が好きです。あの激動の時代。ユキさんが凄く面白い人で、江戸の文化を物凄く勉強されてるんです。だからユキさんと話してると勉強にもなるし、江戸村にいた時も色んな話を聞きました」


――好きな人物は?

「幕末だとやっぱり坂本龍馬ですね。幕末を書いた本で、いつかは映画にしたい小説があるんですよ。タイトルは内緒にさせて欲しいんですが、鯨取りを題材にした坂本龍馬とか実在した人物も出て来る作品。それをユキさんに話したら、偶然にも同じことを思ってたみたいで。そこから一気に仲良くなって、そしたらまた偶然にも同じ作品に出ることになったんです」/p>


――制作側にも興味はあるんですか?

「ありますね。これもアメリカの話になっちゃいますけど、向こうは自分で作って自分が出るっていうのは結構よくある話で。クリエイティブな面から役者も参加していくことは、今後必要になってくるんじゃないかなと思います」


――制作側なら、特にこれをやりたいっていうポジションはありますか?

「脚本には参加したいです。いくつか書いてる話はあるんですけど、今の僕がひとりで書くと個人的な要素が強くなっちゃうので、最初は共同でやるのがいいんじゃないかなと思うんですよ。いずれは監督もやりたいですね。その前に、まずはしっかり俳優をやるところからですけど(笑)」


――今年は年明けすぐに舞台にも出演されましたね。5年振りの舞台はどうでしたか?

「楽しかったです。5年前は芝居を始めて間もなくてホントに未熟でしたけど、さすがにそのころより少しは芝居というものをわかってるので。ニューヨークでステージアクティング、舞台芝居の勉強もしてたので、日本に戻ってきて舞台も出たいなとは思ってたんです。それに、新しい環境で芝居をして、自分を1回追い込みたかったというのもありますね」


――映像と舞台の芝居では違う部分も多いと思いますが、ニューヨークで学んだ経験もあってすぐに適応出来たんでしょうか?

「僕マイペースなんで、最初は自分のペースで探りながらやってました。作・演出家の広瀬格さんと舞台が全て終わったあと話したら、最初は大丈夫かなって心配してたらしいです。マイペースだし探り探りだし。でも、言われたことは一つひとつちゃんと解釈して自分のものにしてたので、やる度によくなっていってたとも言ってくれました。うしろに戻ることがなかったと。毎回成長してたので、途中からは信頼してくれてたみたいです。そう思ってくれてたことは自分の中でも自信になりましたし、また舞台をやりたいなって気持ちになりますよね」


――今回の舞台で、一番悩んだり大変だったところはどの部分ですか?

「やっぱり途中で本性を出すところですね。事件の真相を暴くために最初はおとなしいナヨナヨした男を演じてるんですけど、そこからガラっと変わるところは難しかったです。映像だと舞台と違う表現が出来たり色々とやりようがあると思うんですけど、ずっと繋がった一連の流れで急に変わるのは…苦労しました。舞台なりの魅せ方はありますが、あまり嘘っぽくはしたくなかったので、どのぐらいのバランスでいこうかずっと悩んでましたね。広瀬さんにも相談はしましたが、あの部分は自分の中で納得して演じないとお客さんにばれちゃうと思うので。結果的に、最初の臆病な作家の時はちょっとコミカルな感じでやらせてもらったんですけど、それが個人的には凄く面白かったんです。観て下さった方も、そのコミカルな部分が面白かったって言って下さる人が多くて」


――知り合いの方も観にいらっしゃったと思いますが、みなさんの反応はどうでしたか?

「普段あまりやらないようなコミカルな役が観れて面白かったって言ってくれましたね。本も面白かったじゃないですか。30分の中にコミカルな部分とサスペンスを上手く入れ込んでいて。楽しんで帰ってくれたようなのでよかったです」


――話を聞いていると、尚玄さんもホントに楽しめたようですね。

「はい。楽しかったしやってよかったと思ってます。年末年始を挟んで準備をしてたので、大変な部分もありましたけどね。でも、舞台のこと以外は興味がなくなるぐらいのめり込みました」


――年末年始も舞台のことばかり考えていたとか。

「そうですね。休み自体もあまりなかったですし、実は東京で年末年始を過ごすことも始めてだったんです。だいたい沖縄の実家に帰るか、海外に住んでたかどちらかなので。でも舞台のことがあったので今回は東京にいました。年末年始はお店も閉まってるところが多いから、ファミレスで台本を読んでましたね」


――正月休みの間も舞台のことを忘れることが出来なかったんですね。

「そんな余裕がなかったです。友達と会ったり飲んだりはしましたよ。でも、常に舞台のことは頭にあったし、そういう経験が出来たのもよかったです」


――舞台に限らず、自分の役が現場以外でも残っちゃうほうですか?

「残りますね。ほかのことは考えられないです。ずっと役や作品のことを考えちゃってます。何かしてても、今度演じる彼ならどういう行動を取るのかなとか。友達と喋ってても、彼ならこういう時こう言うんだろうなとかは、ずっと考えてますね。もちろん、そう思ってても言わないですけど、周りから見たらボーっとしてるなって思われてるかもしれません。多少は、言動も変わってるのかもしれませんね。自分では気づかないだけで。でもひとりの時のほうが、よりわかりやすいかもしれないです。舞台の最中は臆病な作家バージョンの役に合わせてずっとメガネをかけてたんですけど、街を歩いていてもいつもみたいに歩いてなかったですよ。姿勢が全然違ってたと思います。背中を少し丸める感じで、堂々とは歩いてなかったはずです。人間って、頭の中心点に重心を置いて、それを前にするかうしろにするかで感情が変わってくるんですよ。例えば(実際に立って実演をしながら)、うしろにするとちょっと堂々とした感じに見えるじゃないですか。ずっとこのまま歩いてると、行動や考えもそれによって変わってくるんです。前かうしろか、どのぐらい片寄らせるかで違うんですけど、そういうトレーニングもやったことがあって。『愛・命~新宿歌舞伎町駆け込み寺~』というドラマで、自分に自信のあるホスト役を演じたんですけど、その時は重心をうしろにして歩いてましたね」


――今回の舞台で、一番得たものはなんですか?

「いっぱいありましたけどね、一番か……。今回は、大人数の会話劇じゃないですか。早いテンポを重視する作りだったので、個というよりも全体の調和を学びました。自分がこういう芝居をしたいというだけでは成り立たない作品だったので、周りといかに合わせるかが大事。映像じゃないから、編集でテンポは作れないですしね。そういうことを経験出来たのは大きかったです」


――今後はどういう作品に出たい、どういう役をやりたいというのはありますか?

「やりたい作品も役もいっぱいありますけど、新しいことにはどんどん挑戦していきたいです。これまでは映画メインでやっていたので、今後は舞台のお話があればまたやってみたいですし、ドラマもほかのジャンルも幅広くやってきたいと思ってます」


『忍道~SHINOBIDO~』

監督/森岡利行
出演/佐津川愛美 ユキリョウイチ 菊地あやか(AKB48) 尚玄 黒沢年雄 岩佐真悠子 三浦孝太 真勝國之 金山一彦/研ナオコ 長谷川初範 ほか
配給/ジョリー・ロジャー
忍の里で女忍として成長したお甲(佐津川愛美)は、偵察任務のために居酒屋の女中に扮して町へ潜入する。忍の壊滅を狙う隠密組織・黒羽衆の情報を得るために、怪しいとされる東五郎(ユキリョウイチ)を監視するお甲。しかし、普段の心優しき東五郎の姿を見ているうちにお甲は惹かれてしまい、仲間に「東五郎は黒羽衆ではない」と伝えてしまう。
2月4日(土)全国ロードショー
(C)2011 EDO WONDERLAND Studio

2021年11月
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