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インタビュー

柴田杏花   (しばた・きょうか)

アンジェラ・アキの名曲「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を基に生み出されたベストセラー小説の映画化『くちびるに歌を』。元天才ピアニストの臨時教員と、五島列島の中学校合唱部との交流を描いた本作で、期待の若手女優・柴田杏花が、懸命に合唱部をまとめようと奮闘する生徒・辻エリを演じる。1カ月半にわたる五島列島での撮影の様子、そして合唱部メンバーと過ごした思い出を語ってもらった。

撮影/吉田将史 文/池上愛

プロフィール 柴田杏花(しばた・きょうか)


1999年東京都生まれ。2007年『名探偵コナンドラマスペシャル「工藤新一の復活!黒の組織との対決」』でデビュー。2009年度「りぼんガール」準グランプリ。主な出演ドラマは、『JIN-仁―』(09年)、『ハガネの女』(10年)、『贖罪』(12年)、『幽かな彼女』(13年)。映画『瀬戸内海賊物語』(14年)で初主演し、その他には『アオハライド』(14年)がある。公開待機作は『迷宮カフェ』(3月7日公開)。

――今日は、映画の役衣裳ですね。

「はい。実際の学校はセーラー服ではないので、着慣れてないんです(笑)」


――とても似合っています。柴田さんの演じた辻エリは、実年齢と同じ中学3年生ですね。この役はオーディションだったのですか?

「そうです。オーディションを受けて、そこで辻エリの役に決まりました」


――どういうオーディション内容だったんですか?

「演技審査と、『手紙』を歌いました」


――劇中の合唱曲ですね。

「偶然なんですけど、一昨年の11月、私の通う学校の合唱コンクールで『手紙』を歌ったんです。もともと凄く好きな曲で、“歌いたい!”ってリクエストしたのも私で。だからオーディションで歌うのも凄く楽しかったです」


――素敵な巡り合わせですね。映画ではアルトパートでしたけど、学校でもアルトを?

「いいえ。学校ではソプラノを歌っていました。だから映画ではイチから覚え直しです(笑)」


――歌の練習はどのようにやったのですか?

「出演が決まってからクランクインするまでの半年間、土日は合唱部メンバーで集まって練習していました。最初はボロボロで、これで本番を迎えられるのかな? っていうくらい不安でした。合唱は声をひとつにしなければいけないので、みんなの息を合わせるのが凄く難しくて。声量がある人達ばかりだったので、一人ひとりの声が目立ってしまって、声の色を合わせるのにはとても苦労しました。息継ぎの場所も、最初のころは“せーの!”っていう感じで合わせていました(笑)」


――合唱部の3年生という役どころなので、ある程度歌えるレベルでないといけないですからね。

「そうなんです。ある程度歌えなくちゃいけないし、合唱部のメンバーとも“ずっと前からの仲間”みたいな関係性でいなくちゃいけません。でも半年間練習しただけあって、レベルもちょっとずつ上がっていきましたし、団結力も芽生えてきました」


――五島列島での撮影期間は、合宿のような感じだったと聞いていますが。

「1カ月半くらい五島列島にいたんですけど、合唱部のメンバーとはずっと一緒でした。撮影終わったら宿に戻って、歌の練習をして、また次の日の撮影をして、終わったら歌の練習を…という感じ。撮影はほぼ台本通りに進んでいて、公会堂での合唱コンクールの撮影が最後のほうの撮影だったので、コンクールの撮影を目標にしてみんなで頑張っていました。だから、映画を撮っているというよりも、本当にコンクールを目指す私達の過程を撮られているような感覚でした。だからコンクールのシーンは、物凄く力が入りました」


――部活では教室や外で歌うことばっかりでしたからね。公会堂だとやっぱり気合入りますよね。

「そうですね。広い会場だったので、本当に後ろの人まで声を届けないといけませんでした」


――歌のシーンはカット割りも考えると、何回も歌ったんですか?

「コンクールのシーンは1日中歌っていました。ある角度から撮影したら、水を飲んで喉を潤して、また別のカットで撮影して、飲み物を飲んでっていう…(笑)」


――喉が強くなりそう(笑)。

「強くなった気がします(笑)」


――長い期間お家を離れていた訳ですけど、寂しくはなかったですか?

「全然! むしろ撮影が終わっても、まだ帰りたくない! という気持ちのほうが大きかったです。地元の方もとても優しい方ばかりでしたし、景色もとっても綺麗でした。全校集会のシーンは、地元の中学生達がエキストラに参加していたんですけど、体育館でみんなで座っているシーンだったので、ぺちゃくちゃお喋りしたりして一気に仲良くなりました」


――スタッフの方達とバーベキューもされたとか。

「そうなんです。凄く楽しかったです。海にも連れてもらいましたし、ブルーベリー狩りにも行きました」


――キャンプみたいですね(笑)。

「ほんとそんな感じでした(笑)」


――五島の方言は難しくなかったですか?

「事前に方言が録音されたCDを頂き、撮影が始まるまで何回も聞いていました。なので、セリフ部分は方言で喋れるようになったんですけど、自然なアドリブを入れるのがなかなか難しくて。でも、宿に泊まっていた現地の方々が話しかけて下さったので、徐々に身についてきました。方言指導の方もずっと付いて下さったので、撮影が始まると、方言はだいぶ喋れるようになったと思います」


――エリの中面については、どう演じようと考えました?

「原作のエリとは違う、自分なりのエリを演じたいと思ってやっていました。エリは、ナズナ(恒松祐里)みたいに自分の思ったことをあんまり言わない、ちょっと控えめな性格じゃないですか。そういう部分、ちょっと私に似てるんです。だから私もエリのように、普段から周りの人をサポートしていこうと、撮影中に心がけていました。あとは、撮影の前に三木(孝浩)監督とお話ししたことを心がけて。そのお話というのは、エリのキャラクターが、葵わかなちゃんの演じるチナツと似ている部分があるので、そこの違いをどうつけるのか、ということ。劇中で、“え?”とエリが言ったら、チナツがあとから“え?”と言ったりするので、セリフの言い方に違いをつけるように、わかなちゃんと色々相談しました」


――三木監督はアドバイスするけれど、実際にどうするのかは自分達で考えていくという感じだったのですね。

「そうです。自由にやってみて、という感じでした」


――自由にやるということは、難しいことではないですか?

「難しかった……ですけど、その難しいことを経験出来たのが、とても嬉しかったです。わかなちゃんと相談した時間も楽しかったですし、撮影が終わったあとの達成感もいっぱいありました」


――柏木先生を演じた新垣結衣さんとは、何かお話されました?

「新垣さんは、最初のほうは“喋りかけてもいいのかな…?”というオーラがある方で、なかなか近づきがたい感じだったんです。これは後から知ったのですが、映画では最初は距離感のある先生と生徒だけど徐々に距離が縮まっていく設定のように、新垣さん自身が私達に、映画の柏木先生のように接していたんだそうです。だから最初はあまりお話していなかったんですけど、撮影が進んでいくと、私達がお喋りしている中に新垣さんも入って来て下さって、どんどん距離が縮まっていきました。そのことを後から知ったので…凄く深いなぁと勉強になりました」


――ところで、全国キャンペーンとして地方を回ってらっしゃいますが、印象深かった都市はありますか?

「全部で18都市回るんですが、仙台では牛たんを食べました。それが凄く美味しくて! あと北海道も凄く印象に残ってます。東京ってあまり雪が降らないから、雪景色にとにかく感動しました。それと、また合唱部メンバーで集まって色んな地域で歌えることも、とても楽しいです。地元の合唱部の方々とも交流出来るので、この映画でたくさんの方々と出会うことが出来ました」


――映画のお気に入りシーンや、ここを見てほしいというシーンはありますか?

「お気に入りのシーンは、緑の丘で歌うシーンです。この撮影の時は風がとっても強くて、髪の毛がぐじゃぐじゃになりました(笑)。どんなシーンになるんだろうと思っていたんですけど、試写で観たら凄く綺麗でびっくりしました。五島列島の景色は是非観てほしいですね。それと、合唱ってひとりでは出来ないこと。みんなのために自分がいる、と感じさせてくれるものだなと、この映画を観て思いました。この映画を観ると勇気をもらえる気がするので、そういう部分も注目して欲しいです」


――公開を楽しみにしています。最後に柴田さんのパーソナルな部分も聞きたいんですが、女優さんになりたいと思ったきっかけは何ですか?

「小さいころ、お母さんがミュージカルや舞台によく連れて行ってくれて、それで私もミュージカルや舞台に出たくってスクールに入っていたんです。そのスクールでは年上のお姉さん達が色んなお仕事をしていました。そんなお姉さん達の姿を見て、かっこいいなという憧れを持つようになりました。それでお母さんに“私も女優さんのお仕事がしたい”と言ったのがきっかけです」


――憧れの女優さんはいますか?

「中谷美紀さんです。前に中谷さんの演じる役の子供時代を演じたことがあるんですが、将来は中谷さんのように色んな役を演じられる女優さんになりたいです」


――やっぱりお芝居の楽しいところは、色んな人になれることですか?

「はい。現場でその役の衣裳を着て、髪型になってという、色んな外見になれるっていうのもそうだし、色んな性格の人を演じられるのが楽しいですね」


――これからやってみたい役はありますか?

「自分の性格と違う役をやりたいです。凄く暗い影をもった女の子や、とっても元気で明るい役とか…人間じゃない役もやってみたいです」


――お~。幽霊とか?

「そうですね(笑)。幽霊とか妖怪とか(笑)。色んな役にチャレンジしたいです。飛び抜けた役でも自然に演じられるようになりたいです」


『くちびるに歌を』

監督/三木孝浩
原作/中田永一「くちびるに歌を」(小学館刊)
出演/新垣結衣 ・ 木村文乃  桐谷健太  恒松祐里 下田翔大 葵わかな  柴田杏花 山口まゆ 佐野勇斗  室井響 渡辺大知  眞島秀和  石田ひかり(特別出演)  木村多江 ・ 小木茂光 ・ 角替和枝 井川比佐志
主題歌/アンジェラ・アキ「手紙 拝啓 十五の君へ」(EPICレコードジャパン)
配給/アスミック・エース
http://kuchibiru.jp/

長崎県の五島列島の中学校に天才ピアニストだったと噂される臨時教員の柏木がやって来る。合唱部の顧問となった彼女は、冷めた表情で挨拶をし、「ピアノは弾かない」と言い放ち、生徒たちを戸惑わせる。そんな中、彼女は部員たちに"15年後の自分"へ手紙を書く課題を出す。そこには15歳の彼らが抱える悩みと秘密が綴られていた。その手紙はある理由からピアノが弾けなくなっていた柏木の心を動かして……。

2015年2月28日公開

2021年12月
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