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インタビュー

石井杏奈   (いしい あんな)

E-girlsのパフォーマーでありながら、女優としても活躍する石井杏奈。中島哲也監督が手がけたCMで注目を集め、数々のドラマや映画などに出演する彼女の初主演映画『ガールズ・ステップ』が公開となる。弱冠17歳でありながら、どんどん活躍の場を広げ、成長する石井がこの作品にどう挑んだのか? 初主演を務める心境を聞いた。

撮影/吉田将史 文/渡邊美樹

プロフィール 石井杏奈(いしい あんな)


1998年7月11日生まれ。東京都出身。大塚製薬『ポカリスエット–親から子へ篇-』の CMに出演後、女優業をスタート。2013年には中島哲也監督が手掛けた『ドコモdビデオ 』のCMにも出演。主な出演作は、ドラマ『LIVE!LOVE!SING!~生きて愛して歌うこと~』、映画『ソロモンの偽証』(前篇/後篇)など。現在“E-girls”としても活動中。出演映画『世界から猫が消えたなら』(16年公開予定)の公開が控える。

――今回、『ガールズ・ステップ』で映画初主演をされましたが、自分が主演だと聞いた時はどう思われましたか?

「自分が、映画で主演をやりますって言われた時は、実感がわかなかったです。でも、家に帰ってよくよく考えてみると、不安やプレッシャーだったり、責任感だったりっていうのがどんどん湧いてきちゃって」


――では、驚きのほうが大きかった感じですか?

「そうですね、最初は驚きの方が大きかったですね」


――その時、作品の内容については?

「ダンスの映画をやるというのは、一緒に伝えられました」


――実際、石井さんはダンス経験があるだけに、ダンス初心者の役を演じることに大変さはありませんでしたか?

「そっちよりも、演技の方を考えてました。ダンスは、ずっとダンスレッスンを皆で1カ月間くらいずっとやっていたので、どっちかっていうと役柄とか、あずさってどういう子なんだろうっていうのを考えてました」


――今回のドラマはダンスがメインではありますが、女の子同士の友情とか幼馴染みの男の子との関係性とか、そういうドラマがギュッと詰まっていると思います。ストーリーを読んだ時、どう感じられましたか?

「読んだ時に、あずさをやりますっていう前提で読んだので、あずさの気持ちになっちゃったんですけど。だから、客観視というよりもあずさとしてどういう風に物語が進むんだろうっていうことを考えながら読んでいたので、読み終わった結果は『あぁ、よかったねー!』って思いました(笑)。確かに、あるあるっていうことも多かったですし、きっと私があるあるって思ったものが、今の学生の方々にとっても共感できる部分なのかなって思いました」


――映画なので、女子高生達の関係性がより際立って描かれているのもあると思いますが、石井さんご自身、あずさのもやもやというのも共感出来たりしますか?

「共感しますね。学校にいたら誰しもみんなにいい顔をしたくなっちゃうというか、“人を傷つけないように、みんなにいい顔をしなきゃ”って思っちゃうのが普通だと思うんですよ。それがやっぱりあずさにもあって、あずさは不器用だから、ちゃんと区別を付けられない。昔の嫌な経験とかがあって、自分の意思がなくなっちゃったりとか、そういう部分で共感できる部分は多いですし。でも、やっぱり客観的に見ていると、『えー!そっちに行かないでよ!』て、思ったりするんですけど、いざ自分があずさの立場だったら、そっちに行っちゃうのかなーって考えたりしますね」


――では、そういう共感出来る部分があったことで、演技に感情が入りやすかったと いうのはあるんですか?

「そうですね。結構リアリティというか、等身大な部分も多かったので演技するときは、監督の言うことが一番なんですけど、その中でも高校生ならではのあるあるを取り入れながら、意識してやりました」


――監督から、アドバイスはあったのでしょうか?

「ありました。『他の人が個性が強い分、普通でいればそれが個性になる』っていう話をしていて。でも、“普通ってなんだろう?”って考えていくと、わからなくなっていくので…。監督が言ったことをちゃんと出来るような人になりたいって思いながら挑んでました」


――女子高生目線の意見を、監督に提案するというようなことはなかったんですか?

「物語自体、女子高生らしい内容だったので、もう、その物語と監督を信じてやりました」


――そうですね、脚本そのものに女子高生らしさが詰まってますよね。

「そうですね」


――共演した5人仲の良さが伝わってきたのですが、撮影期間中に仲良くなったのでしょうか?

「すーごく仲良くなりました! この同世代の5人でこの期間ずっといたし、みんなダンスをやってないところから、ダンスをやるっていう壁も乗り越えてってなったら、本当に凄い仲良くなりました。2時間くらい時間をかけて撮影現場まで移動してたんですけど、それももう2時間ずっと話してたり、手遊びゲームをしたりして遊んでました(笑)」


――この映画ならではですよね。ダンス未経験の4人にアドバイスとかされましたか?

「みんながここどうやるの? っていう質問をしてくれた時は、一緒に練習をしました。でも、みんな本当に凄くて、これが『ガールズ・ステップ』だなって思うくらい、この1ヶ月の間で凄い上達してました。最初に踊る『GO FOR IT』も、完璧に出来るようにして、崩していったりしたので、ダンスで絆が深まるっていうのは、まさにこれだなって思いました」


――一度、練習で一緒に過ごしてから撮影に入ると、気持ちも楽に挑めますよね。

「そうですね。それは大きかったですね」


――撮影中の印象的なエピソードはありましたか?

「走るシーンの時に、『初はまだみんなやる気がないから、もっとグダグダ走って』って言われて、『次は本気で走って』って言われて、もうみんな汗をだらだらかくくらい本気で走ったり、練習風景を撮るために階段を駆け登ったりっていうのを、テスト含めて何回もやるんですよ。息がすごく切れましたね(笑)。それで、『みんな、次が本番だよ』って、声を掛け合いながら乗り越えたりして、それもいい思い出だなって思いました」


――見ていて、かなりの距離走ってるなって感じました。

「カメラとかは車に乗っているんです。でも、自分達は車に追いつかないと行けないスピードで走らなくちゃいけないし、その中でも、役柄と立ち位置を守らなくてはいけないっていうのが難しかったです」


――考えながら走らないといけないんですね。

「そうです、“あ、ここで前にでちゃダメだ”とか、“でも急がなくちゃ”とか(笑)」


――それは大変ですね。

「はい、本当に大変でした。あと、面白かったのが、ケニー役の塚本高史さん。塚本さんのアドリブが面白くて、笑いを堪えるのが大変でした。ケニーさんだからふざけるんですよ、ふざけるというか、それがアドリブとして凄いんですけど、本当に面白くて。でも、“この場面では、ケニーのことまだ好きじゃなないから笑えない!”って。なかなか監督からカットかからないので、その間はずっと笑いを堪えてましたね」


――びっくりしませんでした?

「びっくりしました!『あ、ヤバイ!これアドリブだ!』って思って。アドリブ返しをする難しさを知りました」


――塚本さんと共演されて、演技の面でも勉強になった部分があったのではないでしょうか?

「ありました。アドリブをどんどんやっていくほうが、役になれるなって思いました。自分と合わせられる。だから、塚本さんは凄いなって思いました。全然、素は違うんですよ。男らしくて。なのにケニーになると、スタートしてカットがかかるまでケニーさんなんですよ。さすがだなって本当に思いました」


――俳優さんは色んなタイプがいると思うんですけど、ご自身はどういうタイプだと思いますか?

「現場では役になって、家に帰ると石井杏奈に戻りますね。役にずーっと入ってるのではなくて、場がたぶんそうさせるんだと思います。『ソロモンの偽証』とかも、結構、暗くて裏があるような役だったので、逆に引きずれなかったっていうか。だから、1回、1回、素に戻れました」


――『ソロモンの偽証』を観て、この作品を観た方は、全く違っているので驚くかと思います。ご自身で演じる時、そういう間逆な役柄でも自分の気持ちを役に持っていく過程には、差はないんですか?

「差はないと思います。どんな役でも一緒だと思います。『ソロモン~』の時は、(私が演じた)樹里の生い立ち、バックボーンを書いたりしました。自分はこうだったって思えるリアリティとかを書くようにって監督に言われて、それから書くようにしてるんですます。でも、『ソロモン~』が終わって、『ガールズ・ステップ』までの間は、樹里だったらこう思うだろうなって、『ソロモン~』のほうを引きずりながら、台本を読んだりしてました。『ガールズ・ステップ』のあずさは全然違う役ですが、役作りは全部一緒の工程なのかなって思います」


――アーティストとしても活躍して、女優としても活躍している10代の方って、あまりないのでは? と思うんですが、どちらもやっていて大変だとか、困ったりすることはありませんか?

「ないですね。むしろ、この役とか、ダンスもやっていて女優もやっているっていう自分だからこその役だと思うので、こういう経験をさせて頂いていることに感謝しかないです。自分がE-girlsに入って、ダンスを続けていることも、女優の仕事に活かしたり、女優の活動をE-girlsにつなげて行きたいって思える場があることも、自分の中では素敵な環境だなって思います。だから、あまり困ったりはないですね」


――むしろ、それが強みになりますよね。

「そうですね」


――ダンスシーンとか、スクリーンで見ていて凄く感動したんですけど、あのシーンは、1曲通して本番のように撮影したんですか?

「通して撮影もしましたが、サビだけとか、今日はポーズだけとか、いくつか分けて撮影してました。だから、3日間かけて『ALL FOR YOU』の撮影をしたんですよ」


――え、そうなんですか。

「10分くらいのことなんですけど、3日間で撮影しました。1曲丸々通して撮って、じゃ、こっちから撮りますって、角度を変えて撮影したりしました」


――そういう苦労が形になってる作品をご覧になった時は、どう感じましたか?

「え、いつ撮ったんだっけ!? って思いました(笑)。こんな映像になってるなんて、凄いなって。5人の仲の良さも伝わって来ますし、試写を観て下さった事務所の方々もこのシーンよかったよとか、こういう恋愛ではない青春っていう映画はなかなかないから、凄い新鮮だったとか、声を下さったりとか。楽しかったことが、スクリーンに出てました。本気で楽しんでました(笑)」


――きっと、それも映像に写っていたからよかったんでしょうね。そして、幼馴染みの彼とのシーンは、凄く切ないなと思いながら観てました。そういうシーンを演じてみていかがでした?

「恥ずかしかったです! 本当の事じゃないってわかってるんですけど、好きですって言うのって、こんなに勇気がいることなのかって、あずさになって考えますね。あずさも、別に彼からの返事はいらないっていう心構えで行くんですけど、それでもやっぱり、人に自分の想いを伝えるって、凄い緊張するし。だからこそ、恋愛関係だけじゃなくて、この4人にも素で話すまでには時間がかかるし、仲良くなるまでに時間がかかるっていうのは、こういうことなんだろうなっていうのは、映画を通して実感します」


――そうですよね。だんだんみんなと仲良くなるんだけど、途中で覆っちゃうところとか、見ていて感情移入してしまいますね。あと、5人で泣きながら冬の海に入るシーンがありましたけど、撮影した時の様子はどうだったんですか?

「重要なシーンだったので、最後の方に撮影したんですけど、それまで結構みんなで楽しんで撮影をしてて、仲を深めていたので、自分達もみんなに感情移入してました。だからこそ、自分を撮っているわけじゃないのに、人のことを撮っているのに号泣しちゃったりとか、カメラがこっちを向いているから泣こうとかじゃなくて、その人が訴えくれているから涙がでるっていうのが、本当にこの5人でよかったなって思える一番のシーンだったなって思います」


――本当に感情があって泣いている感じが伝わってきました。そして、そこから海に入るっていう。寒そうだなって思いましたけど、大丈夫でしたか?

「寒かったです! しかも、雹が降ったんです! もう、本当にお芝居してても手とかヤバいって思うくらい寒くて。でも意外と海の中のほうが温かかったです。しかも、みんな感情も高ぶっていて無我夢中だから、水とかをバンバン掛け合うんですよ。もう、鼻とか口に海水が入って『しょっぱい!』っていうこともありました」


――あれは、遠くから見てるから寒さとか感じずに見れますけど、実際は大変だったんですね。

「そうですね。でも、一番の楽しみでもありました。これが終わりでもあるし、達成感もありつつ、初めての試みで。冬に海に入るって」


――冬の海に入る役ってなかなかないですよね。

「ないですね」


――舞台になった湘南の町の景色が凄い綺麗でした。自転車で坂を降りていくシーンとかが印象的で。でも、だいぶスピード出てるなーと思って観てました。

「はい、おっしゃるとおりです(笑)。速かったです。あれも、元気にスピードを出してって言われていたので、ブレーキもかけずに。こんなにスピード出したのは初めてってくらいに速くて。ペダルも回転が速すぎてこげないんですよ。足が持って行かれちゃうので、足をずっと開いてたんですけど(笑)。あと、涙がでるくらい目が風でカピカピになりました」


――あのスピード感は、監督のこだわりだったんですか?

「そうですね。でも、多分普通の高校生もこういうことしてる人、多いのかなって思いました。自分も結構坂道とかになったら、スピード出しちゃうし。だから、楽しかったです。何回も何回もやって。楽しかったですね」


――そういう青春らしい演出がこの作品にはたくさんある気がしました。そして、年齢を問わず楽しめる作品だなと感じました。

「そうですね、もちろん女性が観て共感できる作品ですが、大人の人も楽しめると思います。懐かしいとか。男性も『女子ってこんな感じなんだ!』って思ってもらえると思いますし(笑)。あとは、本当に同世代の方に観ていただいて共感して欲しいですね」


――今後、石井さんはどんな女優になっていきたいなど、思い描いているものはありますか?

「今は、17歳ならではのキラキラとした夢が詰まった青春物語とかをやれる時だと思うんです。なので、今与えられた学生とか、今しか出来ない役を、最大のキラキラで演じて行きたいなって思います。この先、20代、30代になったらお母さんの役とかも出来るようになって、そういう役で輝ける人になりたいですし。おばあちゃんになった時には、おばあちゃんの役で輝ける人になりたいって思います。その年、その年で、そのよさが出せるような役者さんになりたいです」


『ガールズ・ステップ』

八方美人の高校2年生のあずさ(石井杏奈)は、周囲から嫌われないために本音を隠して学校生活を送っていた。ある日、ひょんなことからクラスで浮いている女子4人「ジミーズ」と、ダンスチームを結成することに。最初はやる気のなかったあずさ達だが、次第に本気でダンスに挑むようになっていく。しかし、5人のチームワークを揺るがす出来事が起きる。

監督/ 川村泰祐
原作/宇山佳佑『ガールズ・ステップ』(集英社文庫)
出演/石井杏奈 小芝風花 小野花梨 秋月三佳 上原実矩 磯村勇斗 大東駿介 音月桂 山本裕典 塚本高史
配給/東映
9月12日(土)全国公開

©宇山佳佑/集英社  ©2015「ガールズ・ステップ」製作委員会

2021年12月
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