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インタビュー

中山卓也   (なかやま たくや)

「写真撮られるの苦手なんです……」。そう言って緊張した面持ちでカメラの前に立ち、時折はにかんだ笑顔を見せた、中山卓也。テレビ朝日の人気シリーズ『おみやさん』が10周年を迎え、『新・おみやさん』となってリスタートした今春、京都府警鴨川東警察署の新しい仲間として加わった。大ベテランに囲まれながらの京都ロケ、役者の仕事と向き合うことになったきっかけなどを、丁寧に語ってくれた。

撮影/吉田将史 文/須藤恵梨

プロフィール 中山卓也(なかやま たくや)


1988年12月13日生まれ、福井県出身。2005年の主演映画『青空のゆくえ』で本格的に俳優デビュー。出演作には、映画『椿三十郎』『恋愛戯曲~私と恋におちてください。~』『神様のカルテ』などがあり、2012年はNHK連続テレビ小説『カーネーション』への出演を果たした。

――現在『新・おみやさん』の撮影が真っ只中だと思いますが、舞台は京都ですよね。向こうでの撮影はいかがですか?

「1週間程滞在して、東京に1~2週間くらい戻って来たらまた京都に行く、という繰り返しなのですが、僕は一日中びっしり撮影していることがないので、みなさんより先に終えて、ひとりで京都の街をぶらぶらしています。夜になるとみんなで食事に行くので、そこにまた合流しています」


――では、京都を満喫されてるんですね。

「はい、かなり」


――みんなでご飯を食べるなんて、仲がいいんですね。

「そうですね。『おみやさん』の出演者達って、毎日みんなで同じお店に食事に行くんです。17時から20時って時間が決まっていて、何となく座る席も決まっています(笑)」


――スケジュールの一環なんですね。その場では、その日の反省点を話し合ったり、仕事の話が中心なんですか?

「いえ、プライベートな話もします。みんな揃っての食事は、『おみやさん』チームの昔からの習わしらしいです。僕は連続ドラマのレギュラー出演が今作初めてなので、そういうファミリー的な輪の中に参加出来ているのは、とても嬉しいです」


――でも、元からあるチームに入るのは緊張しませんでしたか? 話を聞く限り、ファミリー感が特に強そうですし。そういう場に溶け込むのは得意なほうですか?

「いえいえ、かなり苦手です。緊張しまくりでした。ただ、唯一救いだったのが、前回のシーズンにゲスト出演させて頂いたことで、少しだけ空気感がわかっていたんです。自己紹介の時に『去年も出てたんです!』って言ったら微妙な反応だったので、みなさんは覚えてなかったかもしれませんけど(笑)。でも、みなさん本当に優しくて、色々教えてもらっています」


――大先輩ばかりですよね。主演の渡瀬恒彦さんとの共演はどうですか?

「常に、これで大丈夫でしょうか……? という感じでやっています。ほかの方からはアドバイスを頂くことが結構あるのですが、渡瀬さんは何もおっしゃらないので……」


――鴨川東署の新人鑑識課員という役ですが、役作りはどうされたんですか? 鑑識は特殊な職業ですよね。

「まず、鑑識の仕事自体がよくわからなかったので、『相棒』シリーズの映画『鑑識・米沢守の事件簿』を観たり、知り合いの警察官に会って話を聞いたりしました。鑑識課とはどういうところなのか? 警察の仕組みとは? など色々と聞いて。鑑識課は細かい性格の人が多いとか、課によって働く人達の雰囲気が違うらしいんです。そういう部分を役に少し組み込めたら面白いなと思っています。それと、鑑識というのは、物語の重要なキーワードを伝える役目なので、“人にしっかり伝える”という点を大事に演じています」


――山田春馬というキャラクター像については、どんな風に捉えていますか?

「新人らしさを出していきたいとは思っています。現場で20代って僕ひとりなんです。なのに、セリフを喋っていても、みんなから『若さ出せよ!』『若さ足りないよ!』って言われていまして……。そこは意識しています」


――役作りでいえば、NHK連続テレビ小説『カーネーション』の篠山真役はどうでした? ヒロインの糸子が、夏木マリさんに代わってからの登場でしたが、岸和田弁など大変そうでしたよね。

「キツかったです。常にイントネーションの不安が付きまとっていたので、自分のやりたいことがあまり出来なくて……。言葉に縛られてしまったなと感じています。ちょうどキャストが入れ替わるタイミングだったので、撮影には入りやすかったんですけど、ほかの方達がみな関西人だったので、ずるいなと思いました(笑)。関西弁と岸和田弁は違うそうなんですけど、僕には違いがよくわからなかったので。キャストの方々にも教えて頂いたのですが、僕が何度も『もう一回言って下さい』ってお願いするものだから、『いいよ、それで大丈夫だよ……』ってウザがられてましたね(笑)」


――朝ドラに出ることが決まった時は、どういう気持ちでしたか?

「朝ドラのオーディションは、今まで5回くらい受けていたので、やっと出られる! という思いで嬉しかったです。最初に台本をもらった時は、2週間だけだって言われていたんですけど、結局最終話まで出られることになったんです。とにかく、見ている人の多さにびっくりしました。みんな早起きなんだなと(笑)。おばあちゃんも見てくれていて、改めてテレビの凄さを実感しました」


――そもそも、役者を始めたきっかけは何だったんですか?

「地元の福井で、養成所に通っていたんです」


――自分から希望して?

「いえ、親が勝手に……。人前で喋るのも苦手だったので、泣いて嫌がりましたよ。車でレッスン場に送ってもらったら、そのまま行ったふりして喫茶店で時間を潰し、2時間後に戻るというのを何年も続けてました」


――えぇっ!? さすがに毎回ではないですよね。

「ほぼ毎回です。しばらく後に僕が打ち明けるまで、親も気づいていなかったと思います」


――そんな状態だったのに、どの辺りから俳優の仕事を本格的にやっていこうと思い始めたんですか? 転機となる作品があったのでしょうか?

「高校生の時に、仕事で東京に来る機会があって。最初は、東京に来れるってことが単純に嬉しかったんだと思います。そして映画『青空のゆくえ』で初めて主演をやらせて頂いて、本気で芝居をしてみたら楽しかったんですよね。それまでは、まともに養成所に行ってなかったので」


――その頃はもう、人前に出ることも慣れてきてたんですか?

「いえ、それはやっぱり苦手で、緊張でいつもお腹を壊してました(笑)。それでも役者をずっとやっていきたいと思えたんです。そういえば、クランクインの時に、僕のトイレ待ちで30分くらい待たせてしまいましたね……」


――(笑)。その後、もっと演技の勉強をしてみたいと思い、日本大学芸術学部映画学科の演技コースへ進学を決めたんですか?

「それも、まずは東京に出たいという理由からでした(笑)。東京に出るためには大学に行かなきゃなと。ちょうど進路を考えている高校3年生の時に、森田芳光監督の映画『椿三十郎』に参加させて頂いたのですが、その現場には森田監督を始め、日芸出身者が多かったんです。みなさんから色々話を聞いて、監督からも『日芸はいいよ!』と勧められて、決めました」


――学校ではどんなことを学んでいたんですか?

「最初の1~2年は基礎的なことを学んで、3~4年になってからは、自分達で映画を作ったりしていました。ロケ場所探しからキャスト集めまで、制作も全て自分達でやらなきゃならなかったので大変でしたけど、とても楽しかったです。そういう経験があるからか、今、映画やドラマの現場で、制作さんのありがたみを凄く感じています」


――演技の面でも、その時に学んで役立っていることはありますか?

「僕は元々、監督さんと対話をするのがどうも苦手だったんです。でも自主制作となると、監督も同級生だったので、バチバチ思いっ切り言い合えるんですね。そういう経験を積み重ねているうちに、現場ではキチンと話をしたほうがいいんだろうな、話さなきゃいけないな、と気がつきました」


――では、今は自分の意見を言ったり、色々聞いたり出来ているんですか?

「はい、出来るだけそうしたいなと思っています。ただ、やっぱりガンガンは行けないので、様子を伺いつつ……ですね」


――学生時代の仲間達と、物作りの楽しさを味わってきただけに、制作する側にも興味ありますか? 例えば映画を撮りたいとか。

「監督は無理ですけど、仲間と一緒に自主製作をするのは楽しいですよね。映像系の仕事に就いている先輩が結構いるので、最近はないですけど、たまに作品に出てほしいと頼まれたりすると、嬉しいです」


――役者としての目標はありますか?

「たくさん映画に出たいです。監督と一緒に一から作っていける作品がいいですね。出来れば主演で」


――挑戦してみたい役は?

「大学生の青春ものなど、等身大の役をやりたいです。最近なかなかないんです。自分とは全然違う役を作っていくのも楽しいですが、僕は等身大の役が一番やりやすいですね」


――最後に、現在放送中の『新・おみやさん』の見どころを教えて下さい。

「僕が『おみやさん』シリーズを見たのは、去年が初めてだったんですけど、凄く温かいドラマだなと思いました。犯人が事件を起こしてしまうきっかけも、家族を守るためなど、ほかの刑事ものより、正義感のある理由だったりするんです。だから事件が解決した時、もの凄く温かい気持ちになるんですよね。そういうところがこの作品の一番の魅力だと思います」


――脚本自体の温かさはもちろんですが、そこに『おみやさん』チームのいい空気感もプラスされることで、作品全体から温かい雰囲気がにじみ出てくるんでしょうね。

「はい。あと、過去の話と今の事件を繋ぎ合わせて事件を解決するのが、漫画の『ONE PIECE』みたいだなと勝手に思っているんです(笑)。色々な伏線が張られている中、最後には謎が解明されるというのが……」


――そのふたつを結び付ける人はなかなかいないですよね(笑)。斬新な発想です。

「僕『ONE PIECE』の大ファンなんです! ファンには堪らないはずですよ(笑)」


『新・おみやさん』

原作/石ノ森章太郎
監督/石川一郎 吉田啓一郎 山下智彦 森本浩史 ほか
出演/渡瀬恒彦 京野ことみ 戸田恵子 鷲尾真知子 七瀬なつみ 不破万作 林泰文 中山卓也 ほか

テレビ朝日系にて、毎週木曜20時~放送中
http://www.tv-asahi.co.jp/omiyasan2012/

元敏腕刑事で今は資料課長の“おみやさん”こと鳥居勘三郎(渡瀬恒彦)が、迷宮入り(おみやいり)と呼ばれる過去の未解決事件を解明していく、大人気ドラマ『おみやさん』。シリーズが始まって10周年となる今春、『新・おみやさん』として生まれ変わった。おみやさんの相棒役に京野ことみ、刑事課の女性課長役に戸田恵子を迎え、ますますパワーアップして放送中だ。










2032年05月
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