プラスアクト

EDITOR'S DIARY
丹下タクシー
プラスアクト (2011年01月21日 11:00) | コメント( 0 ) | トラックバック(0)

こんにちは。(田)です。

私事で恐縮ですが、昨年秋に左足を骨折し、年末まで松葉杖の生活を余儀なくされました。
肩は凝るわ、腕は腫れるわ、松葉杖で移動するのが大変でした。
余計な出費は痛いけど、背に腹は代えられず。
その間の移動手段はタクシーに頼りました。

思い返しても人生であんなにタクシーを乗りまくった日々はありません。
2カ月あまりで集まったレシートは150枚超!

驚かされたのはタクシー運転手さんのバラエティー豊かなキャラクター性です。
なかでも強烈だった東京M線のゲンさん(仮名)をご紹介したいと思います。

昨年11月某日。打ち合わせ先から直帰しようと停めた1台のタクシー。
ドアを開けてくれたのは「丹下段平をリアルな人間の顔にしたらこんなかな?」と
思わせるような若干コワモテの運転手。デカイ身体を無理矢理車内に閉じ込めていました。

「すみません、目黒までお願いします」(田)
「かしこまりました」(ゲンさん、以降ゲ)

とまあ、ここまでは普通のタクシー運転手と客のやり取り。
夜遅く疲れていたし、目を閉じてウトウトし始めたら。

「お客さん! お客さん! ほら、あれ! あれ!」(ゲ)

何のことかと驚き、ミラー越しにゲンさんを見つめると......。

「お客さん、あそこの角に青いタイルのビルあるでしょ」(ゲ)
「ああ、あれですか? はい」(田)
「あそこの1階のスナック。あそこでウチの嫁さん昔パートしてたの。がはははは!」

起こすなよ、そんなことで! 大声で笑ってるけど事情がまったくわからんよ!
キレてやろうかと思いましたが、ゲンさんは眼光鋭く身体はデカそう。第一勝ち目なし。

「はあ」としか返せずにいると、ゲンさんは矢継ぎ早に続けます。

「でさあ、あそこのコンビニん上に嫁さんと仲良しのナカムラさんが住んでんだよ」(ゲ)

話の方向がまったくつかめないまま、ゲンさんのペースに合わせることにしました。
眠かったけど、家までわずか15分程度のことだ。敢えて話に乗ってみよう。
異常に盛り上がってみると、何か別の喜びを得るかもしれない。

「そうなんですか! ナカムラさんて誰ですか?」(田)
「お嬢さんがこないだ結婚しちゃってね。ナカムラさんは俺のお客」(ゲ)

えっ? 何?
一瞬脳内で整理ができなくなりましたが、少ない情報から理解してみようと努める(田)。


・ゲンさんの奥さんは昔スナックでパートしていた。
・その奥さんと仲良しなのがナカムラさん。
・最近、ナカムラさんのお嬢さんが結婚した。
・ナカムラさんはゲンさんとも知り合いで、タクシーをよく利用してくれる乗客でもある。


奥さんがかつてスナックで働いていた過去も気になるけど、とりあえず上記のように理解。
会話を続けようとした矢先、鼻の差でゲンさんがまた話を続けます。

「まあ、ナカムラさんも辞めちゃったけどね。がははは!」(ゲ)


何を? で、なんで笑ってるの?
ゲンさんの話には主語、述語、修飾語の重要な部分が欠けていて、話の全容がつかめない。

「何を辞めたんですか?」(田)
「誰が?」(ゲ)
「いや、あの。ナカムラさん」(田)
「だからスナックだって」(ゲ)
「えっ。ナカムラさんもスナックで働いていたんですか」(田)
「そうだよ」(ゲ)
「奥さんと一緒に?」(田)
「そうですね」(ゲ)
「じゃあ、奥さんもナカムラさんもあのスナックをすでに辞めている訳だ」(田)
「タエちゃんのほうが先に辞めてるけどね」(ゲ)

ちょっと待て! なんでゲンさんは説明なしに新キャラを登場させるの?
「嫁さん」「ナカムラさん」「タエちゃん」。これらの固有名詞を僕は知らない。
だけど、ゲンさんは僕がすでに知っているかのように話すから、ことはやっかいだ。

「タエちゃんて誰」(田)
「だからナカムラさんの娘」(ゲ)

だからって言うなよゲンさん。

ということはあれか、ナカムラさんと娘のタエさんは同じスナックに勤めていたということか。

うーん、いろいろ謎が深まる。
ゲンさんの奥さんがスナックに勤めていた理由。
ナカムラさんとタエさんは親子でホステスをしているという不思議な事実。
もしかしたらタエさんは結婚を機にスナックを辞めたのかもしれないという僕の勝手な類推。

謎はもうひとつ。ナカムラさんはゲンさんのお客だというけれど。
本当はゲンさんがお客でナカムラさんが勤めるスナックに通っていたのではないだろうか......。

そんなことを考えているうちに自宅が近付いてきた。
釈然としないことだらけだが、ゲンさんに最後の質問をぶつけてみる。

「ナカムラさんは、運転手さんのお客さんなんでしょ。それってどういうこと?」(田)
「だってそれはニシダさんがいるからしょうがないじゃない(苦笑)」(ゲ)

ゲンさんよ。話は尽きないがもう自宅についた。

支払いを終え、物凄い疲労感とともにタクシーを出ました。
自宅に戻りて真っ先にテレビをつけると、画面に西田敏行が映っています。
ゲンさんの口から最後に飛び出したニシダさんて、誰だろう?

その夜、僕は原因不明の微熱に悩まされました。
(田)
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