俳優を初めてわずか1年弱という短い期間ながらも、映画『BECK』、ドラマ『東京DOGS』『ブラッディ・マンデイ Season2』『月の恋人~Moon Lovers~』と、立て続けに話題作へ出 演する若手俳優・水上剣星。NYへ留学後、25歳で役者としてスタートをきったばかりだが、期待の大型新人が現れた・・・という予感がしてならない!
── 『BECK』が俳優としての初めてのお仕事だったそうですね。
「はい。僕がちょうど俳優を始める1カ月前に、後輩から面白い漫画があるって言われて借りた漫画が『BECK』だったんです。だから俳優としての最初の仕事で、こう いう映画やるからって言われた時は、凄く驚きました」
── では、水上さん演じる栄二という役についても、認識はされていたんですね。
「はい。栄二は天才ギタリストと言われていて、水嶋(ヒロ)さん演じる竜介のライバル。ギターが凄く上手い役なので、練習をとにかくやりました。撮影に入る1カ月半く らい前から練習していたんですが、僕は音楽が好きなので、撮影が始まるのが楽しみでしょうがなかったですね」
── ギターの経験は?
「前に少しだけ。ゼロからのスタートではなかったので、その点は助かりました」
── ギター指導の先生や監督から、何か言われたことはありましたか?
「監督からは、演技面ではあまり言われなかったですけど、指の動きには気を付けてと言われましたね。あと先生からは、こうやると上手く弾いているように見える・・・など 、見せ方についてのアドバイスを頂きました。やっぱり初めての演技だったので、正直余裕もなくて。相当な技術を持ったギタリストということを頭に叩きこむだけで精いっぱいでした。そ のほかのことについては、ほとんど考えられなかったです(笑)」
── 撮影が終わってだいぶ経ちましたが、ギターはまだ弾いていますか?
「たまに弾きますね。クランクアップ直後の時は、癖で触りたくなることが多かったですけど。練習も凄く楽しかったですし」
── 先程から"楽しい"という言葉が何度も出てきますが、初演技で緊張はしなかったですか?
「音楽があったというのが凄く大きかったと思います。水嶋さんとも音楽の話ばかりしていたし、現場もシリアスなムードではなく、ライブを観に行ってるような感覚でしたから 。僕も見ていて楽しかったし、ステージに立っている時は本当にライブをしているような気持ちになりました。いい意味での緊張はありましたが、不安はほとんどなくて、毎日楽しみなが ら撮影出来たと思います」
── 最後のフェスのシーンは圧巻でしたね。雨が降る中のライブというのは、野外フェスの醍醐味でもありますが、撮影は相当大変だったのでは?
「あのシーンは富士急ハイランドで撮ったんですけど、撮影で一番印象に残っています。エキストラの方々も500名近く集まって下さって、朝から晩まで1日中かけて撮影しました。 雨を降らしていたので、みんなびちょびちょになりましたし(笑)。でも不思議と疲れたりテンションが落ちたりはしなかったですね。あんな会場で演じられることなんて滅多にないことだか ら、凄く興奮しました。機材もフェンダーとか凄くいいギターを使ってたんですけど、それも全部びちょびちょ(笑)。だけど凄く楽しかったし、映像を見ても感動しました」
── ご自身の姿をスクリーンで観た時は、どんな気持ちでしたか?
「恥ずかしかったです(笑)。正直、この作品が僕にとって初めてだったので・・・吸収したことも沢山あるんだろうけど、あっという間に終わった気がします。それに、あまり考 えずに臨んだので、伸び伸びとやれたんじゃないかなと。逆に今のほうが色々考えちゃって・・・緊張することのほうが多いんです。だから、もう一度あの時の感覚で演技が出来たらなと 思うんですよ」
── 今は、どういうことを考えてしまうんですか?
「撮影が終わるたびに、演技することって深いなと毎回考えてしまいます。クランクインした時は、最後まで出来るのかっていつも不安ですし、クランクアップしても満足は するんですけど、改めて過去の自分を振り返ると、全然成長出来てないと反省することが多いです。簡単には行かない世界だな、と日々感じています」
── 実際に出演して、驚いたことはありますか?
「音楽の入れ方はびっくりしました。撮影した映像に、こうやって音が乗るんだな~とか。あとは、夜撮影したシーンが昼間みたいに明るくなっているシーンもあって。こんなことも出来る んだと驚きました。撮影中に驚いたことは、こんなに同じシーンを撮影するんだということ。しかも時系列通りに撮影するのではなく、撮れるシーンからバラバラに撮影しますから、繋が りも気にしなきゃならないですし。今まで普通に映画を観ていた時は何も考えず観てましたけど、こうやって撮影を経験したあとに映画を観ると、"このシーンは撮影が大変だっただろ うな"とか"何回も同じ撮影したんだろうな"とか、考えるようになりました。『ソフトボーイ』に雨のシーンがあるんですが、寒い中何度も撮影したんですね。だから、ほかの映画で雨のシ ーンがあったら、"寒かっただろうな"って、きっと思いながら観ると思います。あと、これは一番感じたことなんですが、役者よりもスタッフさんのほうが忙しいってことです」
── どんな部分が難しいと感じますか?
「台本を読み込んで、しっかりとその役を入れていくことも大事だと思うんですが、僕は、自分の素の部分を出すことがより大事なんじゃないかと思うんです。僕はまだ、それに慣れない 部分があるんですよ。その時の感情だったり、緊張しているかそうでないかだったり・・・。今は自分の中で色んなことが起きていて、まだ整理が出来ない状態。慣れも必要だと思うけ ど、出来るだけ自分の素のままの感情を出せるようになりたいですね」
── 自分と全く違う役を演じることもあると思いますが、その時も自分の素の状態を出すのですか?
「僕はまだ演技を語れる立場じゃないので、わからないことも多いですが・・・。人って優しい部分や嫌な部分、人に見せていないだけで色んな側面を持っていると思うん です。それを隠しながら生きていると思うから、演じる時に、その隠し持っていた自分を出せるか出せないか、ということなんじゃないかと。僕はモデルもやっていたんですが、"表現"する という部分では同じですけど、やり方は違いますよね。モデルっていう職業は服を見せることだし、音楽も自分の感情を音に表すけど、役者って完全に自分を使って表現することだと 思う。だから役者って "表現"することにおいては、究極だと思っています。まだまだ難しい部分はいっぱいありますね」
── では、現在放送中のドラマ『月の恋人~Moon Lovers~』についてもお伺いしたいのですが、3本目のドラマのお仕事ですが、『BECK』の時に比べて、取り組み方や気 持ちに変化はありました?
「それぞれ現場の雰囲気が違うので、慣れたころには撮影が終わっちゃうんだろうなって思っています(笑)。僕は木村(拓哉)さん演じる葉月蓮介の会社『レゴリス』の 社員・小泉桂一を演じているんですが、彼は社内で少しつらい立ち周りに居ることが多いんです。若手社員でこれから頑張りたいんだけど、すれ違いが多いというか。プロジェクトも 任されるんだけど、なかなか上手く進まなくて葛藤する、自分の想像していたことと違って悩んでしまう役。そこの葛藤が小泉を演じる上で一番のテーマだと思うので、その部分をしっ かりと表現出来ればいいですね」
── 『東京DOGS』ではミステリアスな役、『ブラッディ・マンデイ Season2』では警察官という、両者とも少し特殊な役回りでしたが、今回はごく普通の社会人という役ですね 。
『ブラッディ・マンデイ』は、警察組織の中の新人という立場だったので、今回の役と立場は似ています。そういう意味では、同じような演技にならないように、気を付けて います。あと、僕自身が役者として新人なので、自分自身の経験で使えるところは使いたいなと」
── 共演者で絡みが多いのは、どなたですか?
「木村拓哉さんと渡辺いっけいさんです」
── 木村さんとの共演はいかがですか?
「主演というあり方というか、存在感というか・・・凄くオーラのある方です。すべてにおいて勉強になります。僕自身が、木村さんの恋愛ドラマというだけで凄く見てみたいと 思うんですよね。台本を読んでいるのでストーリーは知ってるんですけど、恋愛絡みの部分は現場を知らないので、そこがどうなっているのか楽しみです」
── 役者として1年近く経ちますが、この1年での気持ちの変化はありますか?
「うーん・・・まだ自分の中では始まったばっかりで、まだまだやらなきゃならないことがたくさんあります。そのことをきちんと踏まえながら、楽しんでやっていきたいです」
── 水上さんは、役者になる前にNYに留学されていましたね。なぜNYに留学を?
「自分の好きな音楽やファッションを学びたいなと思っていたので、高校を出てすぐに留学を決めました。あと、NYには色んな国の人がいるじゃないですか。スモールワー ルドみたいな。そこも魅力的だなと思っていたので、NYしか考えていませんでした。最初は英語も喋れなかったのですが、運よくアパレルの仕事に就けたので、仕事をしながら英語を 学びました。昼は働いて、夜はスタジオに入って音楽制作の毎日。最初は全然コミュニケーションが取れなくて苦労しましたね。電話の線を1本繋ぐだけでも、どう伝えていいのかわ からなくて(笑)。でも次第に仕事や音楽を通じて、徐々にコミュニケーションも取れるようになっていきました」
── 帰国するタイミングは?
「1~2年で帰ろうとは思っていなかったんですけど、アメリカで5年間過ごして、ある程度満足も出来たし、英語も喋れるようになった。だけどそこで暮らしていくことは考 えなかったです。ずっと作曲活動をしていたので、音楽で食えればいいなと思っていましたが、そう甘くはないですし。家族も日本にいるので、ある程度日本で基盤を作りたいなと思 い、日本に戻りました。それで留学する前にスカウトして下さった方に帰国後偶然再会して。それでまた改めて誘って頂いて、役者の道に進んだんです」
── 今後やってみたいことはありますか?
「また映画をやってみたいですね。『バッファロー'66』とか『シティ・オブ・ゴッド』とかが好きなので、そういうカルチャー映画に出れたらと思います」
── 映画の音楽を作ってみたいとは思わないですか?
「あ~、思います! 色んなことをやりたいです。でも今は役者としてお仕事を頂いているので、今は役者に集中したいです。出来るだけ自分を見失わないように、自 分自身を表現していければ最高ですね」
監督/堤幸彦
原作/ハロルド作石
出演/水嶋ヒロ、佐藤健、桐谷健太、中村蒼、向井理、忽那汐里 ほか
配給/松竹
(C)2010「BECK」製作委員会
平凡な男子高生コユキ(佐藤健)は、NY帰りの天才ギタリスト・竜介(水嶋ヒロ)に偶然出会う。竜介は、ラッパーの千葉(桐谷健太)とベースの平(向井理)を誘い、そこにコユキ とドラムのサク(中村蒼)を加えてバンド「BECK」を結成。初めは上手く行かないコユキだったが、バンド活動を重ねるうち、ギターの楽しさ、そしてボーカルとしての才能を開花させていく・・・。
出演/木村拓哉、篠原涼子、リン・チーリン、松田翔太、北川景子 ほか
フジテレビ系列月曜21:00~ 放送中!
インテリア専門メーカー国内No.1シェアの大手家具会社にも迫ろうという勢いを持つ「レゴリス」の社長・葉月蓮介(木村拓哉)。続々と店舗数を増やし、ついに中国・上海に一号店を構えることに。そこで葉月は中国人女性・リュウ・シュウメイ(リン・チーリン)と出会い、心を揺さぶられ始める。そんな中、葉月の同級生でインテリアデザイナーの二宮真絵美(篠原涼子)、資産家の娘にして容姿端麗な人気モデル・大貫柚月(北川景子)は、自分の欲求を満たすために、葉月に狙いを定めていた・・・。