驚く程顔が小さく、端正な目鼻立ち。スラリと手足が長く、身長は183センチ! こんな人が街を歩いていたら、誰もが振り向いてしまうだろう。この取材の撮影中も、通りすがりの人々が立ち止まり見惚れてしまう程だった。デビューから1年3カ月。すでに4本のドラマにレギュラー出演を果たした竜星涼は、7月からの新ドラマ『桜蘭高校ホスト部』で、黒魔術部の部長・猫澤梅人役で出演する。今までにはないひと際変わった役どころに、どう挑むのだろうか。ドラマ撮影の合間に話を聞いたのだが、“本当に18歳?”と思う程落ち着きのある、礼儀正しい青年だった。
撮影/柳沼涼子 文/今津三奈
――挨拶がとても丁寧で礼儀正しいですね。
「学生時代も、ひとつ上の先輩達には敬語を使わないと怒られる環境でしたし、1歳でも年上だったら、やっぱりちゃんとしなきゃいけないと思うんです。だから、自分より年下の人の話し方がなってないと、ムカっときちゃうこともあります(笑)」
――後輩の指導は厳しいんですか?
「そんなことはないです。でも中学・高校の部活は規律が厳しかったから、その時はしっかりやってました」
――部活は何をしていたんですか?
「小学校から中学まではサッカーをやってました。バスケも凄く好きでやりたかったんですが、中学にバスケ部がなくて。それで中学でも小学校の延長でサッカーをやりました。高校では念願のバスケ部に入ったんですが、続けることが出来なくて。楽しかったんですが、辞めてしまいました」
――ずっとスポーツをやっていたんですね。今回出演するドラマ『桜蘭高校ホスト部』はその名の通り、学校内にホスト部を舞台にしたお話で、竜星君は黒魔術部の部長役です。今まで4本のドラマに出演されてますが、今までにない凄く個性の強い役ですね。現場に入ってみていかがですか?
「今、毎日ドラマの現場に行ってますが、本当に凄く楽しいんです。ほかにはない面白い役で、役衣裳を着るだけでその世界に入れてしまう。役自体を楽んでいる自分がいるなと思います」
――台本を読ませて頂いたら、CGを使った演出もあるようですね。
「そうなんです。随所にCGを入れて、物凄くファンタジーな世界観になっています。こういう作品に携わることは、なかなかないだろうし、僕自身凄くテレビっ子で色んな作品を見てきましたけど、これだけCGを使った演出は見たことがありません。どんな風に出来るんでしょうね? 演じている側の人間も出来上がりが楽しみです」
――体が壁にのめり込んだり、大きくなったり小さくなったりもするようですね。
「僕が登場する時は黒い煙のようなものがモワモワっと出たりするんですよ。見るのが凄く楽しみです」
――そうなると、演出されたことをイメージしてお芝居しているんですね。難しそうですが…。
「原作もあるしアニメ化もされていたので、演出のイメージはしやすかったです。あとは自分のニュアンスを出しつつやっていけたらなと。最初は探りながらでしたが、どんどん確信に変わっていくんです。演じていて凄く楽しいですよ」
――黒魔術部の部長って、とても特殊な役ですよね。黒魔術や占いの世界はすぐにイメージ出来ましたか?
「イメージしやすいか? と言う意味ではしやすかったです。僕自身、占いは結構信じるほうなんです」
――朝のテレビ番組の占いも信じるほう?
「僕は都合よく解釈するほうで、1位~5位くらいまでだったら、“ヨッシャー”って思うし、それ以降~12位だったら、“いやいや、そんなの信じないから…”って(笑)。いいことだけ取り入れて、悪いことはあまり気にしないんです」
――役ではいいことよりも、不吉なことを伝えることが多いようですが(笑)。
「今回面白いのは、僕が演じる猫澤梅人が出てきて何かをつぶやいたところから、物語やアクシデントが始まるんです。だから僕はいい意味でホスト部をかき回していきたいし、ちょっかい出して行けたら面白いなと思ってます」
――先程原作やアニメがあったから、イメージしやすかったと仰ってましたが、原作はご存知でしたか?
「知りませんでした。今回ドラマ出演が決まってから原作やアニメに触れました」
――見た時、どんな印象でしたか?
「マンガはよく読むんですけど、もっと軽くパパパパっと読めると思ってたんです。少女マンガが全てそうなのかわかりませんけど、結構字が多くてこれは簡単には読めないなと思って。何時間もかけて本気で読みました。登場人物の個性が確立されていて、似たキャラクターがひとりもいないというのが面白いですね。学園モノになると、内面的なことは違っていても、生徒としてのくくりでは結構似てしまう部分がありますから」
――部活は、何か目標を持って活動するものですよね。ホスト部は、セレブの学校のお嬢様達を楽しませるという目的がありますが、黒魔術部の目的ってなんだと思いますか?
「目的か…。うーーーん、なんだろう…。もし本当に黒魔術部があったとしたら、ひきこもりがちな人が多いように見られると思うんです。でもそういう人達って、見た目は黒くて暗い感じがしていても、中には金色に光るものを秘めて、何かを妄想したり、自分の世界観の中で凄く楽しんでいるんです。だから猫澤も、誰かに助言をすることを楽しみ、目的としていて、その瞬間に金色の部分が出てくるんだと思います」
――それを演じるのは難しいですね
「確かに難しいです。今はどんどんチャレンジして、感覚を自分で掴んでいくしかないかなと」
――演じる上で監督に相談しましたか?
「監督さんと最初に話したのが、『もし実在する猫澤を想像したら、暗くてボソボソと話すような人かもしれないけど、本当にそうしちゃうと面白くないよね。だからお芝居としては、舞台演技ぐらいのニュアンスでやったほうがいいんじゃない』と言われて。でも僕もそう思っていたんです。だから暗いキャラではなく、むしろ日々の生活を楽しんでいて、みんなに微笑みかけちゃうようなキャラで演じています」
――共演者の方は同世代の方が多いですけど、現場はどんな雰囲気ですか?
「僕が一番年下なんですが、今回凄くやりやすくて。みなさんハタチを超えていて大人の方々です。僕は同世代とやるより、やっぱり年上の方達とやったほうが楽しいですね。今回みなさん気さくに話しかけて下さるし、凄くやりやすい環境です」
――アドバイスを受けたりするんですか?
「いえ、仕事の話はあまりなくて、普通の会話を楽しんでいます」
――どんな話で盛り上がるのでしょう?
「この間はマンガの話で盛り上がりましたが、内容は人それぞれですね」
――先程、先輩には礼儀を…みたいなお話をされてましたが、「喉が渇いたな~」なんて先輩が言ったら、買いに走ったりとか!?
「それはしないです(笑)」
――同じ事務所の川口春奈ちゃんと共演ですが、何か話しましたか?
「事務所のレッスンで一緒になることはありますが、ドラマのことは特に話してないです。僕自身、自分から作品のことを話すのがあまり好きじゃないので、共演者の方に作品について話かけることはほとんどありません。もちろん、作品について話しかけられたら、僕も本気で話します。でも今回決まった時は、『一緒なんだね。宜しくお願いします』みたいな会話くらいかな。ドラマについて話さなくても、顔見知りの川口さんがいることで、僕自身も現場で心強かったです」
――今の現場が一番楽しいと仰っていましたが、前の現場が今に活きてるなと思うことはありますか?
「この間まで『リバウンド』をやっていたんですが、僕自身ちょっとスランプに陥ったんです。高校を卒業して、これから俳優の仕事一本で行こうと心に決めた最初のドラマだったんで、少しプレッシャーがあったのかもしれません。セリフが出てこなくなったことがトラウマになって…。次は大丈夫かな? と不安になっていたんです。でもいずれは越えなきゃと思いながら頑張った結果、最後のほうは共演の俳優さんとも色々お話させて頂いて、現場を楽しむことが出来ました。だから今の現場でもそうですけど、もちろん緊張は大事ですが、自分が楽しむということを忘れちゃいけないと思いました」
――学業と両立ではなく、社会人として第一歩のドラマで気持ちが変わったんですね。
「そうですね。自分自身も緊張していたんだと思います」
――具体的にどう気持ちが変わったんでしょうか。
「ガラッと変わったかというと、それほどではありません。でも、この役者という仕事がなくなったら、生きていけないという自覚が生まれました」
――事務所に所属するきっかけは、スカウトでしたね。それまでに俳優になろうと思ったことはありましたか?
「凄いテレビっ子であり、ドラマが大好きだったんですが、テレビを見ている側の僕がテレビの中の世界に入るなんて考えられませんでした。だから自分に置き換えることなんか出来なかったですし、これからの職業の選択肢には入っていませんでした。スカウトして頂いた時も、正直に言うとそんなに興味がなかったんです。でも頂いた名刺を見てみたら、名刺の裏に所属タレントさんの名前が書いてあって。その中に反町隆史さんの名前が入っていたんです。僕、反町さんのファンだったので“おおおおおおーーー”と思って。更によく見たら竹野内豊さんのお名前も見つけて、“『ビーチボーイズ』か…”って(笑)。もしかして、反町さんや竹野内さんに会えるかもしれない! という気軽な気持ちで連絡をしたのがきっかけなんです。そしたらこういう形で仕事になって。不思議ですよね」
――では、そこから急に役者という仕事を意識し始めたんですね。
「演技のレッスンを受けていくうちに、演技が楽しいなと思えたんです。ならば職業としてもありなんだろうなと明確になり始めて、今に至ります」
――俳優じゃなかったら、何になろうと思っていたんですか?
「ドラマ『アンティーク~西洋骨董洋菓子店~』の影響なんですけど、小学生の頃からパティシエに憧れていて、高校を卒業したらパティシエの専門学校に行こうと思ってました。でもケーキの美味しいさを追求するのではなく、見た目の美しさ、造形美に惹かれてました」
――ではイメージしたものを美しく仕上げる作業や、色んなことを想像するのは好きなんですね。
「はい、好きです。風景も好きで、小学生の頃はある程度高い建物の上に行って、そこから景色を眺めていました、色んな高いところに上りましたね。だから今、テレビ局に行くたびに高層階まで上がって…。上まで行くと凄い景色が広がっていて感動するんです(笑)」
――景色を見下ろすのが好きなんですか?
「とにかく上から見ると綺麗で“美”を感じるんです。実際に傍で見たら凄く大きいものも、見下ろすと小さく見えて。そういう感覚も好きだし、同時ににおいも感じています。その高さで感じるにおいがあるんですよ。僕は朝起きて外に出た時、“あ、今日はこれは小学校の時の雨の時のにおいだな”とか懐かしいことがよみがえるんです。この歳にして懐がりだし、それが楽しいと思うタイプなんです(笑)」
――そういう経験が積み重なり、色んな感情を振り返ることが出来ると思うと、これから歳を重ねるのが楽しみですね。
「そうなんですよね。だから前回のドラマ時のにおいを思い出しては、少し苦しい感情になったり(笑)、そういうことを楽しみながら生きています」
――18歳とは思えないしっかりものの印象がありますが、大好きな矢沢永吉さんの生き方が影響していたりするのでしょうか?
「はい。男を感じますし、生き方がやっぱり凄いんです。矢沢さんの言葉は全て好きです」
――矢沢さんのことを話すと口調も変わったような(笑)
「矢沢さんの本『成りあがり』の中には、生きていく上で大事なことが全部書いてあって、最高にいい本だと思うんです。そういう男で僕もありたいし、永ちゃんのように高い位置を目指したいです」
――矢沢さんもお芝居をされてますから、いずれは共演なんてことも…。
「同じ役者の世界に入ったら、同じ土俵でやりたいと思いますが、でも永ちゃんは同じ域の方として考えられないというか…、とにかく僕はファンとしてずっといると思うので。会えてサインをもらえたらそれでいいです。もう考えただけで……どうしよう………緊張する(笑)」
――では共演は難しいですか?
「『僕らの音楽』という役者とミュージシャンが一緒に出る番組がありますが、そういう感じお会い出来たら理想的です」
――今回の役でまたステップアップしたな感じますが、当面の目標はありますか?
「意識を高く持っていたいと思っているので、まずは主役になりたいと思います。でも主役になってそれでホッとしたら、それで終わってしまいます。ステップが上がるたびにまた新しい必要なことが明確に見えてくると思うし、僕の中で決めているのは、“スーパースターになる”ということ。『成りあがり』にも書いてありますけど、普通のスターや、スターに照らされているスターというのは、わりと簡単になれると思うんですけど、自分が輝き、太陽みたいに輝き続けるというのは並大抵のことではありません。でもやるからには僕はそういう風になりたいと思うし、海外でもある程度名を残したい。同世代だとゴルフの石川遼選手のようなイメージで、海外でも評価されてるからこそ国民的人気がある訳です。どこに行っても『お、竜星だ!』と言って頂けるように頑張りたいと思ってます」
チーフプロデューサー/伊與田英徳 杉山 剛(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
プロデューサー/韓哲 橘康仁
演出/韓哲 佐藤敦司 芝﨑弘記
原作/『桜蘭高校ホスト部』/葉鳥ビスコ (白泉社)
脚本/池田奈津子(TBS連ドラシナリオ大賞出身者)
特別協力/ソニー・ミュージックエンタテインメント
制作協力/ドリマックス・テレビジョン
製作・著作/TBS
出演/川口春奈 山本裕典 竜星涼 中村昌也 千葉雄大 高木心平 高木万平/大東俊介 ほか
良家の子息・令嬢が通う超セレブな名門学校・桜蘭高校に、特待生で入学した庶民の藤岡ハルヒ(川口春奈)。暇を持て余すお嬢様女子学生を喜ばすために、校内には美男子6人が揃う“ホスト部”があるのだが、ハルヒはひょんなことからホスト部に迷い込み、男子学生に間違えられた上に800万円の借金を作ってしまう。借金を返すために仕方なく男装してホスト部の活動を始めたところ、ある日ハルヒが女の子であることが判明。ホスト部部長の環(山本裕典)は瞬時にハルヒを好きになってしまう。そんな中、黒魔術部部長の猫澤(竜星涼)は、ハルヒの背後に現れては悪霊占いで見えたことをアドバイスするが…。