大ヒット映画『GANTZ』、『GANTZ PERFECT ANSWER』の出演も記憶に新しい若葉竜也。今年は10月1日公開の『DOG×POLICE 純白の絆』、12月10日公開の『源氏物語 千年の謎』と出演作が続く、今注目の俳優だ。演じた役柄の特性上、詳しく作品について掘り下げて聞くことは出来なかったが、『DOG×POLICE~』の話を中心に、若葉竜也の深層に迫ってみた。
撮影/柳沼涼子 文/服部保悠
――10月1日から『DOG×POLICE~』が公開されますが、どういうきっかけで出演が決まったんですか?
「最初は、『GANTZ』の時にお世話になった佐藤(貴博)プロデューサーや以前にお世話になったスタッフの方から、“面白い役があるから監督と会ってみない?”と言って頂いて。それで、七髙(剛)監督とお話しさせてもらったんです。お話しさせてもらったというか、基本的にただ見つめ合ってただけなんですけど(笑)。あとは体つきを見られたり。時間にしたら15分ぐらいですかね。本当に言葉はあまり交わさなかったです。それで帰っている途中に、“若葉君に決めたよ”って連絡をもらいました」
――ブログを拝見したんですが、役作りをしないと書かれていたのが印象的でした。それはこの映画も同じですか?
「役作りって何かわかってない部分もあるんですけど…。役作りってあとづけじゃないかなと思っていて。行ったことないところに行って、面白いものを見てきたり出会ったことがないような人に会ったりするほうが役を演じる上でよっぽど材料になるんじゃないかなと。人によってやり方は様々だと思うんですけど、俺の中では今回もそうですし、いつも撮影に入る前に役を作っていくという作業はしてないんですよ」
――若葉さんの中では、役に関わるものを調べたり誰かに話を聞いたりという、その作品や役に対してピンポイントで行なう準備は役作りに入るんですか?
「もちろん役を演じる上で知っておいたほうがいいことや、調べておいたほうがいいことは事前に準備します。でもそれを基に色々と作り上げて現場に行くというよりは、そういう材料だけを持って、現場で監督や共演者の人達と作り上げていく感じですかね。役って100人いたら100通りの解釈があると思うんです。それならオリジナリティーのあるものを演じたい。作品にとって一番いい形を目指したいので、自分が持ってる材料でいかに現場で作り上げていけるかですね」
――じゃあ敢えて、役に対する自分の考えは現場には持っていかないということですか?
「そうですね。自分の中である程度の考えは持っているとは思いますけど、基本はそういう考えも現場で作っていきたいというか。監督がOKを出せばその作品にとってはそれが正解ということなので、現場での判断に委ねています。やっぱり映画は監督のものという意識が強いので、自分の持っていったものに自信があったとしても、監督が違うと言えば違うと思うし。そういう部分は凝り固まらないようにして、現場に行くようにしています。あとはテストでどう試すかというのもありますね。個人的にはセリフで“こう言ったほうがいいかな?”と思う部分は、テストで言ってみて、監督からそれでいいよと言われればそれでいくし、台本通りでいこうと言われればもちろん戻します。台本は何回も読み込むほうなんですけど、今回の役は特に一つひとつのセリフの語尾だったりニュアンスが大事だと思っていたので、そこも現場で監督と作っていきました」
――今回はひとりのシーンが多いですよね。
「ほとんどひとりでしたね。今回は監督とマンツーマンでやらせて頂いた感じです。これはこれで贅沢というか、ガッツリとやりたいことをさせてもらったなと思っています」
――でも今までやったことないことを経験出来るのは、今後のことを考えると大きいですよね。
「誰もやったことないこと、やっていないことをやるのは好きです。役柄もそうですし、ホントに初めてのことが色々あったので自分でやってても楽しかったですね。」
――共演者の方とは現場で話したりされました?
「ほとんど話さなかったです。市原(隼人)君とは少し世間話程度ですけど、お話しました。でもそれぐらいで、ほとんどひとりでいましたね。別に役のために話さないとかではなかったんですけど、基本部屋に引きこもってました。病んでいたのかな(笑)」
――それってどこか役に影響されて…ということはないんですか?
「どうなんですかね。影響されてるのかは正直わからないんですけど、振り返ると、なんであんなことしてたんだろうって思うことはあります。意識してなくても、普段とは少し違う自分になってるんだと思います」
――テンション高い役を演じている時は、自分では気づかなくても友達からテンション高いなって思われてたり。
「そうですね、遊び方も変わっちゃうんですよ。役を私生活まで引きずってる程ではないと思うんですけど」
――完成した作品はご覧になってどうでしたか? 自分の出演作品って客観的に観れますか?
「いや~自分が出た作品を最初に観る時は粗探しになっちゃうんですよね。“あのシーンこうしとけばよかったな”とか。自分の演技に100点を出したことはないので。もし100点が出ちゃったらこの仕事に興味を持てなくなっちゃうかもしれません。それでも、100点を出したくてずっとやってるんですけど…まあ出ないでしょうね」
――100点出たらその先どうしようかっていうのもありますよね。
「“ヨッシャー!!”ってなるとは思うんですけど、ちょっと寂しいというか(笑)。でも出してみたいです。そのあとは出してから考えれば」
――合格ラインは何点なんですか?
「ん~合格ラインまでいった記憶はまだないですね。今回はよかったな、手応えばっちりだって思ったことはなくて、どうしても不安が残るというか。ホント些細なことなんですけど、色々気になっちゃって。“ここで右に視線を向けとけばよかった”とか。やっぱり自分への不満は尽きないですね」
――作品としては観てどうでしたか?
「面白いと思いました。観終わったあとにお腹いっぱいになりましたから(笑)。“いや~今日は映画をがっつり観たな”と思える日本映画って今は少ないじゃないですか。最近はひとりでゆっくり観たい作品が多いと思うんですが、今回はひとりで観ても友達と一緒に観ても満腹感を得られる作品だと思います」
――爆破シーンなど迫力があるシーンも多いので、是非劇場で観てもらいたい作品になってますよね。
「この作品はホント、映画館で観る価値があるものに仕上がってます。爆破のシーンは凄いですから。日本映画ってそういう部分は劣ってると言われてますけど、ちゃんとこの作品では迫力のあるシーンになってます。あとは、オリジナル作品というのが嬉しくて。原作があるものではなくてゼロから作った映画。お客さんからしたら、面白いのか面白くないのか判断しづらいところもあると思うんです。そこをスタッフ、出演者といった作り手達が引っ張って行って、ブームを作ったり時代を作っていくのが、ホントの意味でのエンターテインメントかなって思うので。公開されるまでのドキドキ感もありますしね」
――オリジナル作品だと、この作品に関わる全責任が映画にかかってきますよね?
「そういう面でも、公開前のこの時期はドキドキしてます(笑)」
――ご自分でも映画を作られていると聞きましたが、それはどういうきっかけですか?
「時間がある時に、何か面白いことないかなって仲間と話し合ってて、映画作ってみようかって話になったんです。みんなでワイワイ面白いことやろうぜっていう流れの延長線上に映画作りがあったというか。そうしたら色々な人が手伝ってくれることになり、どんどん規模が大きくなっていっちゃって。でもきっかけは休みの日に何か作りたいねっていうのと、自分から何か発信したいというとこがスタートです」
――実際作ってみると、色々とスタッフとしての楽しさも大変さもわかるんじゃないですか?
「いや、ホントしんどいです。役者のほうが全然楽なことがわかりました(笑)。時間がギリギリの時に、“もう1回”って言った時の周りの目とか凄くつらくて。こういう大変さもあるのかって知りました。俺らが撮ってるのは自主映画なので、ルールはほとんどないんですよ。そういう好きなことを好きなように撮れる状況が逆に迷うというか。ある程度ルールがあれば、そこに沿って道はなんとなく見えると思うんですけど、いざ自由に撮って下さいと言われるとどこから手をつけていいのかってところから始まりますから」
――最初に映画を撮ったのはいつですか?
「高校生の時だったので、17歳の時ですね」
――その時から、映画を作る楽しさを感じてたんですか?
「毎回、映画が完成すると“二度と撮らない”と思うんですけど、周りの人に“次はこういうの撮ろうよ”って言われると、“そうだね、じゃあ撮ろうか”って(笑)。いつも、撮る前日ぐらいまで嫌なんですよ。やりたくねえなって。でも撮影が始まったらやるしかない。もっと手を抜いてやれればいいのかもしれないんですけど、それが出来ずにとことんやろうって性格なのでホントに大変だし、しんどいんです(笑)」
――役割は作品によって違うんですか?
「基本的には自分で脚本を書いて監督もします。ただこの間撮ったのは、後輩が脚本を書いて、俺は監督だけに専念しましたね。自主映画を撮るようになってからは、現場で凄くスタッフを見るようになりました。技術を見て“なるほどな~”って思う時もありますし、“監督の判断力ってやっぱり凄いな! ここでそういうこと言うんだ!”って思ったり。まあ、今後も映画は作っていくんでしょうね」
――最後に、今持っている当面の目標を教えて下さい。
「目標はあるんですけど、そこに到達するためには目の前にあることに対して手を抜かないでやっていくことだと思うんですよ。そういう一つひとつが、結果的に目標に繋がっていく気がします。こんな役がやりたいという思いも2,3年前まではあったんですけど、今はもっと気楽に考えてもいいのかなって感じてきていて。だからこそ、どんな役をもらってもきちんと対応出来るようにはしておきたいなと思います。あとは、作品を観た人が俺ってわからないと嬉しいですね。あの作品のあの役と、この作品のこの役は同じ人が演じてたの? って思ってもらえるように。若葉竜也としてではなく、観た人が作品に入り込んで、あくまで役として観てもらえたなら、“勝ったな!”って思います(笑)」
監督/七髙剛
原案/小森陽一
出演/市原隼人 戸田恵梨香 村上淳 カンニング竹山 阿部進之介 矢島健一 堀部圭亮 小林且弥 本田博太郎 相島一之 きたろう 伊武雅刀 若葉竜也 松重豊/時任三郎 ほか
人一倍の正義感で刑事を目指す警察官・早川勇作(市原隼人)。検挙率の高さから、いよいよ刑事に昇進かと思っていた矢先、協調性に欠けるという理由で警視庁警備部警備二課装備第四係という部署へ配属になる。そこは、災害時の人命救助に加えて、爆発物などの捜索や犯人の制圧といったテロ対策用に導入された、警備犬とそのハンドラーが所属する部署だった。しかし、警備犬が導入されてから30年経った今でも、警備出動の実績は一度も無かった…。
10月1日(土)全国公開
http://www.dogpolice-movie.com/