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インタビュー

白洲迅   (しらす・じん)

「写真は苦手。上手く笑顔が作れないんです(苦笑)」と謙遜しながら話す白洲迅。インタビューに答える時も、心なしか少し緊張して見えた。それもそのはず。2011年のミュージカル『テニスの王子様』でデビューしたばかりの、新人俳優なのだ。そんな白洲がミュージカル『Bitter days,Sweet nights』で、橋本さとし、新妻聖子、堀内敬子という実力俳優と肩を並べ、4人の織りなす愛の物語を演じるというのだ。「このチャンスを絶対に活かしたい」と熱い意気込みを見せた白洲。一体どんな姿を見せてくれるのだろうか。

撮影/吉田将史  文/池上愛

プロフィール 白洲迅(しらす・じん)


1992年11月1日生まれ、東京都出身。2010年に行なわれた第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのBEST30まで残る。ミュージカル『テニスの王子様』鳳長太郎役でデビュー。出演作の映画「携帯彼女+」のDVDが9月5日に発売予定。活躍が期待される新人俳優。
公式ブログ http://ameblo.jp/shirasu-jin

――ミュージカル『Bitter days,Sweet nights』が、いよいよ8月2日に初日を迎えます。白洲さんは、オーディションで役を勝ち取ったそうですね。

「オーディションといっても、ワークショップみたいな感じだったので、役を勝ち取った! という気分ではないんです(笑)」


――どんなことをやったのですか?

「“演出家が公演初日に逃げ出しました。あなた達の思うように、自由に演じてみて下さい”という設定で、みんなでどうセリフを言っていく、みたいなことをやりました。自由というのは難しいし緊張しましたけど、凄く楽しいオーディションでした」


――演出家G2さんの作品はこれまでに観たことはありますか?

「この舞台が決まってからDVDで拝見しました。『リタルダンド』という作品をDVDで借りて観たのですが、今回のミュージカルと似ている部分がありました。登場人物一人ひとりの関係がねじれていく様子は、共通する部分だなと」


――白洲さんの演じるジュン原田の役どころを教えて下さい。

「新妻聖子さん演じる市ノ瀬ナツコが、突然アメリカから日本に帰ってしまい、彼女を追いかけて日本にやって来る青年です。とても純粋な男だと思います。大学生という設定なので、そんなにお金も持ってないはずなのに、はるばるアメリカから飛行機で追いかけて来るなんて、なかなか出来ないですよね。チケット代は持ってたんだろうか? もしかしてお金を借りて後先考えずに日本に来たんじゃないかなと…そういうことを考えました。ナツコのことが本当に好きなんでしょうね」


――彼女への愛を伝える歌もありますね。

「そうなんですよ。そこも挑戦し甲斐があります。今年で20歳になることですし、愛情表現の部分もしっかり出来るように頑張っていきたいです」


――白洲さん自身は、情熱的なほうですか?

「僕にはジュンみたいな情熱はないです(笑)。まだまだ僕には足りませんね」


――アメリカに住んでいるという設定なので、劇中には英語が登場しますが。

「本当にどうしようって感じです(笑)。英語の稽古もやっているので、英語が下手だと思われないように頑張ります。聖子さんもアメリカに10年住んでいた帰国子女という設定で、ふたりで英語のかけ合いもあったりして…本当に大変です(笑)」


――橋本さとしさん、新妻聖子さん、堀内敬子さんに囲まれての演技はいかがでしょうか。

「まず第一に、物凄いプレッシャーです。僕の役をやりたかった人は沢山いただろうし、そのチャンスを得られたことは凄く嬉しい。最高のチャレンジの場なので、チャンスを生かせるように頑張りたいです。目の前のことをひたすら頑張っていくだけですね」


――みなさんとは初めてのお仕事になりますか?

「そうです。今回がみなさんと初めてになります。さとしさんは、お顔だけ見ると凄く厳格な方なのかなと思っていたのですが(笑)、凄く面白い方でびっくりしました。それにとても優しく接して下さる。そのギャップにやられましたね」


――同性でもギャップにやられるんですね(笑)。逆に最初のイメージのままだった方はいらっしゃいますか?

「堀内敬子さんは、僕の想像通りの方でした。ふんわりされていて、少し天然でいらっしゃるような…テレビの印象のままでした」


――新妻さんは?

「稽古場のムードメーカー的存在です。パワフルで元気をもらっちゃいますね」


――そういう意味では、新妻さん演じるナツコに似ているのかもしれません。

「言われてみればそうかも。ぐいぐい引っ張っていく感じが似てますね。そういう意味では引っ張られてる僕と聖子さんは、いい関係性です」


――白洲さんは、ミュージカル「テニスの王子様」(以下、テニミュ)にも出演されています。大きな会場でパワフルな演技を見せていますが、今回は収容人数が250人弱のCBGKシブゲキ!!が会場、そしてたった4人だけのシンプルなミュージカルです。派手な演出がないぶん、より歌声や演技にごまかしがきかないと思いますが。

「今回、立ち稽古初日が、いきなりシブゲキで行なわれたんです。改めて客席の近さを実感することが出来ました。本当に近いんですよ。凄く密な空間というか。会場のみなさんと一緒に、舞台の空気を作っていく感じになるのかなと思っています。だからこそ僕は、どれだけ演技と歌でみなさんを引きこむことが出来るのか、それが課題です」


――客席の顔はどれくらい見えるものなのですか?

「実を言うと…僕は目が悪いんですけど、あえてコンタクトレンズをしないんです。お客さんの顔を見ると緊張してしまうので。シブゲキはそれでも隅から隅まで見えるくらい、ステージと客席が密着してるんですよ」


――歌声が響きそうですね。

「いや~本当に頑張らないと…。歌稽古もやってますが、凄く難しいです。歌うこと自体は好きなんだけど、そこに感情を乗せるとなると一気に難しくなる。特に今回は愛の表現をするので、はかない気持ちだったりとか、想いを寄せる切なさだったりとか…」


――ミュージカルをやるようになって、音楽への接し方が変わることはありましたか?

「普段音楽を聴く時、今まではなんとなく聴いていたものでも、“こんな風に歌ってるんだ”“ここでこういう気持ちを込めてるんだな”と、注意しながら聴くようになりました」


――普段はどんな曲を聴いているのですか?

「Mr.Childrenさんの曲ですね。大好きなんですよ」


――櫻井和寿さんの歌い声は、凄く気持ちが揺さぶられますね。

「体に直接伝わってくるんです。そこが凄いなと思います」


――今回のミュージカルの音楽を務める荻野清子さんは、映画『ステキな金縛り』など多くの映画、舞台の楽曲を手掛けられていますが、音楽を聴いた印象はいかがでしたか?

「4人の気持ちをしっかりと表しているメロディーなので、本当に素敵です。それにG2さんの歌詞が乗るので、物語として深みがあります。その人の性格とか気持ちの変化で、メロディーも1曲1曲変わっていて…こんな歌を僕が歌えるんだなぁって、気持ちが高ぶりました。テニミュとは全然違うというか。テニミュは青春ソング的なものが多かったので、大人な表現の多い歌は、僕にとっての挑戦です」


――テニミュはどんな舞台なのですか?

「長年続いているシリーズということもあるので、僕達もお客さんも一緒に成長していく舞台だと思います。あとは学校ごとのチームで闘うという内容なので、仲間意識が凄くあります」


――なるほど。共演者の中でもチームごとに団結心が高まるんですね。

「そうなんです。僕の演じた鳳長太郎は宍戸亮という先輩とダブルスを組んでいるんですが、先輩役の桑野晃輔?さんには凄く助けられました! このお仕事するようになって初めての作品がテニミュだったので、凄く刺激を受けました」


――ブログには、テニミュのメンバーが度々登場しますね。本当に仲がいいんだなぁと思いながら、読ませて頂きました。

「部活みたいな感覚なので、学生時代に戻ったような気がするんです。仲間意識、切磋琢磨する感覚なので、団結力は凄く生まれます」


――テニミュが初めてのお仕事ということですが、お芝居をやりたいと思ったきっかけはなんだったのですか?

「そもそもの話で言うと、芸能界に入ったきっかけは、ジュノンボーイのオーディションです。友達の親が“受けてみたら”と誘ってくれて、ベスト30まで残りました。最終的には落ちちゃったんですけど、当時のジュノン編集部の担当の方が気にかけて下さって、一緒に事務所を回ったりして下さったんですね。そうしているうちに、こんなチャンスは誰にでもある訳じゃないなと思うようになり、芸能界の仕事を意識するようになりました」


――この仕事でやっていくんだと思ったことは?

「初めてのオーディションがテニミュで、訳がわからないまま色んなことが進んでいく毎日だったので、これで食って行くぞ! みたいな気持ちは、まだわかりません。とにかく目の前を必死でやってきて、今に至ってます。でも、この舞台のチラシ撮影の時に、カメラマンさんにこう言われたんです。“みんな凄く実力のある人達ばかりだけど、やらせてもらいます、という気持ちでいてはダメだ。同じ土俵に立つんだから、自分が3人を引っ張っていくんだという気持ちでやれ”と」


――それ重みのある言葉ですね。

「はい。今まではわからないことだらけでがむしゃらにやっていたけれど、これからはそこから更にステップアップしなければならないんだと思いました。写真撮影でも、今までは笑顔を作るのも難しかったし、表情だけで何かを伝えるって凄く難しい。だから今回は、色んな写真を見せてもらって勉強しました」


――プレッシャーですが、そういう言葉は嬉しいですね。

「はい。同時に頑張らなければと思います」


――G2さんから何かアドバイスはありましたか?

「演技については、まだ稽古が始まったばかりなので…。G2さんからまず教えて頂いたのは、演技というよりも、そのずっと手前の根本的なことを教わりました」


――例えば?

「好きという感情は、身体のどこから来るのか? どの部分から湧きあがってくるのか? そういうのを考えては書きだしていったり。他にも、目標は低い目標を立てて達成しても意味がない。届かないような高い目標を立てて、それを達成する為に何をしたらいいのかを考えるのが大事なんだ、とか…」


――今回の舞台だけでなく、今後の役者人生において大切なことを教えて下さったんですね。

「こんなやり方があるのか! と驚きの連続ですね。凄くためになることばかりです」


――白洲さんがミュージカルをやっていて、一番高揚する時はどんな時ですか?

「お客さんと一緒に気持ちを共有出来る時ですね。ノリノリのシーンはお客さんものって下さるし、逆に張り詰めたシーンの時は、ピリッとした空気を作って下さるので。そこが舞台の醍醐味ですよね。あとテニミュを通して感じたことは、同じ歌でも、その日の公演によって何か違うんです。感情の違いで全然違う舞台になる。それは歌だけじゃなくてお芝居にもいえることなんですが、相手の動き方ひとつで、自分の芝居が変わる時があります。その日のお客さんの雰囲気でも変わってくると思うし…」


――舞台はナマモノですからね。

「本当はあまり変わっちゃいけないのかもしれないですけど(苦笑)。でも公演ごとに新しい発見があったりするし、最後まできちんとしたものを作って行こうという気持ちが大きいので、どんどんいい内容になっていくとも思うし。今回もいい舞台になればいいなと思います」


――テニミュの白洲さんとは全く違った姿が見られそうです。

「本当にそうなると思います。同じミュージカルでも全然違う。出演者の人数も、会場も、それこそお客さんもガラリと違います。テニミュを観るお客さんは、もしかすると今回のような舞台を観る機会は少ないかもしれません。そういう意味では、シブゲキという狭い空間で、さとしさん始めとする豪華メンバーの演技を観られるのは、凄くいいチャンスだと思います。この機会に是非若いお客さんに観てほしいですね」


CBGK PREMIUM STAGE ミュージカル『Bitter days,Sweet nights』

作・演出/G2  音楽/荻野清子
出演/橋本さとし 新妻聖子 白洲迅 堀内敬子
会場/CBGKシブゲキ!!
日程/2012年8月2日(木)~11日(土)
http://www.cubeinc.co.jp/

谷川ミノルは(橋本さとし)はフォトグラファー。かつては第一線で活躍していたが、妻・フユコの死をきっかけに、仕事は激減していった。ある日、ミノルの家に死んだ妻そっくりの女が現れる。彼女の名前は市ノ瀬ナツコ(新妻聖子)。フユコの実の妹だった。10年前にアメリカ留学に行ったっきり、フユコの葬式にすら顔を出さなかった彼女が、突然の帰国。ひょんなことから同棲生活を始めるミノルとナツコ。 ミノルとフユコをよく知る島田ヤヨイ(堀内敬子)、ナツコを追いかけ日本にやって来たジュン原田(白洲迅)。4人の男女が織りなす小さな愛の音楽劇。

2024年12月
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