カプコンの人気アクションゲーム『戦国BASARA』シリーズ。その人気はゲームの世界にとどまらず、アニメ、マンガ、実写ドラマ化など、様々な派生作品を生み出している。中でも、若手俳優達が美しい衣裳と派手な武器を振り回す舞台「戦国BASARA」シリーズは、09年の初演以来、多くのファンに愛されている人気作品だ。11月2日から始まる新作『舞台「戦国BASARA3」-瀬戸内響嵐-』は、東京・大阪の地にて、長曾我部元親、毛利元就を主軸とした新たな武将達のドラマが舞台で繰り広げられる。舞台稽古の真っ只中、長曾我部元親を演じる浜尾京介と、毛利元就を演じる小谷嘉一に話を聞いた。
撮影/吉田将文 文/池上愛
――『舞台「戦国BASARA3」-瀬戸内響嵐-』でおふたりが演じられる役について教えて下さい。
浜尾「長曾我部元親は、ゲームをやられているみなさんも同じ印象を持っていると思いますが、凄く情に厚い男です。意思も固いし男気もあり、部下を第一に考えてくれる。口は悪くて荒くれ者なんですけど、凄く優しい一面を持っているので、惹かれる部分がとてもある男です」
小谷「僕の役は長曾我部とは真逆と言っていいぐらい違います。クールで冷静、口調は丁寧だけど、部下思いではない(笑)。“部下は駒としか思っていない”って、口に出してしまう程、人に対して冷たく平気で裏切ったりもする男です。孤高という言葉がピッタリあてはまると思います」
――小谷さんは今回2回目の舞台です。
小谷「1年前舞台「戦国BASARA3」をやらせて頂いた時は、ゲームやアニメを見て役作りの参考にしていました。あと毛利の声は声優の中原茂さんが担当されているので、中原さんの出演されているアニメ作品も何作か見たりしましたね」
――声も参考にされたんですか?
小谷「喋り方の癖をつかみたいなぁと思って色々勉強していました」
浜尾「僕もアニメやゲーム、マンガのほかに、前回の舞台「戦国BASARA3」では、戸谷公人君が長曾我部を演じていたので、それを観て勉強しました」
――ゲームが原作なだけあって、武器や衣裳が特徴的ですね。
小谷「こんな兜、被ったことないです(笑)。袖も物凄く長いので、この衣裳を着た時、どう立ち居振る舞えばいいのか…こういう動作の時は、この位置に手があって…みたいな部分は、正直手探りですね」
浜尾「コニーさんは兜がすぐ落ちちゃいますよね」
小谷「そうなんだよ。ほんと、この兜がやっかいで。僕の武器は輪刀という大きな輪っかの刀で、その中をくぐったりするんですが、くぐる度に帽子が輪刀にひっかかってしまうんです。それに普通の刀ではないので、輪刀の殺陣は何が正解なのか、そもそもの基準がない。なので、いかにゲームの動きを表現出来るかということを常に研究しています。ぶっちゃけ、練習は凄く地味ですよ(笑)。兜を落とさないように輪刀をくぐらせる動作の練習ばっかりしています。長曾我部もそうじゃない?」
浜尾「長曾我部は衣裳が特殊で、袖を通さずに肩にかけるような作りになっています。あとは腰巻もあるので、ヒラヒラした部分に武器の鎖がひっかかってしまうことがありますね。稽古ではパーカーをまいて練習しているんですが、凄く難しい! それに、2メートル近くある武器を片手で使わなければならないので、そこも苦戦しています」
――武器を軽くすることは出来ないんですか?
小谷「小道具さんも出来る限り軽く作って下さっていますが、軽量化するとすぐに壊れてしまうので、どうしても重くなっちゃうんですよね
浜尾「僕、武器を使う右手のほうが明らかに太くなりました(笑)」
――見た目の変化も! 長曾我部は露出の多い衣裳なので、体型も気にされるのでは?
浜尾「はい。稽古に入る前からジムで鍛えたり、プロテインを飲んだりしてウエイトを増やしています。ただ先ほども言ったように武器が凄く重いので、稽古に入ったら自然に筋肉がついてきました」
――前回の舞台「戦国BASARA3」の舞台を拝見させて頂いたのですが、殺陣がスピーディーなのと同時に、闘いのシーンは、とても立体感を感じました。
小谷「近距離の武器と遠距離の武器を持つキャラクターの闘いというところが影響しているんだと思います。1対1の闘いでも、前のステージで闘うふたりと、後ろのほうで闘うふたりという対峙があるし、今度はその前後で人が入れ替わって闘ったり…そういう工夫が立体感を生み出しているのかなと」
浜尾「それとメインキャストだけじゃなく、アンサンブルの方々の動きもポイントのひとつになっていますよね。テンポも速いし殺陣の数も凄く多いじゃないですか。その中でアンサンブルの方々のアクロバティックな動きが、凄く活きています。そういう部分は、ゲームと遜色がないくらい、気持ちいい! ってお客さんに思ってもらえるんじゃないかなと」
――おそらく観客の方々は、ゲームが大好きな人達だと思うんですが、ファンの方々の声は何か聞いていますか?
浜尾「ファンの声は凄く聞きます。『私、元親ちゃんが大好きなんで、浜尾さん頑張って下さいね!』って(笑)。熱狂的な方々がたくさんいらっしゃるので、裏切っちゃいけないなと、逆に燃えています!」
小谷「この前びっくりしたのは、“毛利さんに蹴られたい”さんからツイッターをフォローされたことです(笑)」
――ははは(笑)。
浜尾「さすが、毛利元就はドSですからね。コニーさんはSですか?」
小谷「急だな! 僕は人を駒になんて思ってないよ!」
浜尾「実は思ってたりするんじゃないですか? 長曾我部の殺陣、遅いんだよ! って」
小谷「思ってない思ってない!」
――(笑)。ファン感謝祭などのイベントも行われ、その度に大盛況ですよね。ファンの方々は本当に熱いな! と感じました。
浜尾「今年の夏に「バサラ祭2012 ~夏の陣~」というイベントに参加させて頂きました。僕は新キャスト登場という立場だったので、後半まで袖に控えていたんですが、ゲームの声優さんやほかの舞台キャストの方々が登場する度に『キャー!』っていう歓声が凄くて! ほんとに歓声を聞いていてびっくりしました。僕の演じる長曾我部が紹介された時も凄く大きな歓声で出迎えて下さって、とても嬉しかったです」
小谷「毛利元就はどうだった? ちゃんと歓声あった?」
浜尾「出てました(笑)」
小谷「それはよかった(笑)」
――ファンの期待値が増すたびに、プレッシャーも大きくなるのでは?
浜尾「プレッシャーはもちろんありますが、それに押しつぶされては舞台に立てないと思います。そこはやってやる! という気持ちを前面に押し出したいです」
小谷「今回で舞台「戦国BASARA」の舞台は5回目になるんですが、演出の西田大輔さんは“今回の舞台は分岐点。試される時期になると思う”とおっしゃっていて…」
――分岐点とは?
小谷「ファンの方々は、毎回期待して舞台を観に来られていると思うんですが、5回目ということもあるし、舞台「戦国BASARA3」で言えば2回目。見飽きたと思われないように、もっと新しいことにチャレンジしなければいけない。そういう意味で分岐点とおっしゃったんだと思います。ただここまで続けてこられたのは、この舞台を初演からずっと支えて来て下さったキャストやスタッフの方々のお陰。初演からずっと出演されているキャストの方々って、演技が凄く安定されているんです。そんなみなさんがいるからこそ、舞台「戦国BASARA」という船に安心して乗ることが出来る。今回は“瀬戸内響嵐”編ということで、僕らふたりがストーリーのメインをはらせて頂きますが、基盤を作って下さった方々がいて今の舞台「戦国BASARA」があると思います。なので、その基盤を崩さないためにも、思う存分楽しめる舞台を作っていきたいです」
浜尾「舞台では、笑いの要素もたくさん盛り込まれています。アクションだけじゃなくて、物語としても十分楽しめると思うので、ゲームを知らない人も面白いと思ってもらえるはずです」
――小谷さんは既に舞台を体験されていますが、前回、一番高揚したシーンは何でしたか?
小谷「T.M.Revolutionさんの曲が大音量で流れた時ですね。あの曲はゲームでも馴染みのある曲だし、大爆音で流れるのでお客さんも絶対興奮する瞬間だと思います。その音楽で高揚するのと同時に、緊張もするんですが(笑)」
――浜尾さんは、舞台を観てどんな印象を持たれましたか?
浜尾「キャストの皆さんの仕草や殺陣、立ち居振る舞いがゲームのキャラクターそっくりだったことに一番驚きました」
小谷「さすがにゲームそのままの動きは無理ですが、やれる限りのことはやってるつもりです」
浜尾「ゲームの動きをそのままやりたい気持ちはあるんですけど、さすがに3メートルもジャンプ出来ないしなぁ」
小谷「槍に乗って海を突き進めないもんね」
浜尾「絶対無理です(笑)」
小谷「ファンの方も、この動きや殺陣が見たい! って期待していると思うので、そういう部分は極力応えられればと思います。……人間が出来る範囲で!」
――(笑)。今回の東京公演は東京ドームシティホールで、前作の倍の広さということですが。
浜尾「僕の武器は2メートル近くあるので、みなさんよりもモーションを大きくして派手な演出が出来ると思います。なので舞台の広さに負けないように、大きな殺陣を見せられればいいですね」
――長曾我部と毛利の闘いも気になります。
浜尾「ふたりの殺陣は、まだこれからなんです。動きが難しいと思うので、ひとつずつ仕上げていきたいです」
小谷「前回の舞台では、稽古中、毎回兜を落としていて、一度も成功しなかったんですよね」
浜尾「えっ!? そうなんですか?」
小谷「うん。それでマジでどうしようって思ってたんですけど、ゲネプロで初めて兜が落ちなかった。なんとかその日に完成したって感じで。今回も殺陣が新しくなっているので、いまだに兜が落ちまくりです(苦笑)」
――気が抜けませんね。
小谷「衣裳さんがとても親身になって下さるので、とても助かっています。こういう動きをすると兜が落ちる。じゃあどうする? っていう相談をしながら、ちょっとずつ調整している最中です」
――ところで、おふたりは役者として影響を受けた人や作品はありますか?
小谷「僕はトム・ハンクスが昔から大好きなんです。彼に憧れて役者を目指したといってもいいくらい」
浜尾「へぇ!」
小谷「『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94年)という作品を観て、なんだこの人は! と思って。そのあと観たのが『プリティ・リ-グ』(92年)です。知的障害のある役を演じていたと思ったら、この映画はアル中の野球監督。凄いふり幅のある人だなと衝撃を受けました。ちょうどその作品を観たころ、僕は野球部だったんですが、病気になってしまい野球を続けることが出来なくなって。その時に彼の作品を観て衝撃を受け、こういう仕事をやってみたいなと思うようになったんです」
浜尾「僕は小学生の時に劇団四季の舞台を観に行って、それで役者になりたいなと思いました。人で言うと、三谷幸喜監督の作品が大好きです。特に『ステキな金縛り』という作品が大好きで、1~2週間に1回は観ていると思います」
小谷「そんなに観てるの!?」
浜尾「はい(笑)。DVDを持ってるので、もう何十回も観てます。三谷さんの作品って、必ず幸せな気分になれるじゃないですか」
――三谷さんは少年時代にチャップリンの喜劇に影響を受けたそうです。小さいころは大人しい性格だったので、自分を楽しませてくれたチャップリンのように、人に笑いを届けたいと思うようになって、コメディーをやり続けてるとか。
浜尾「そうなんですか! 本当に人を笑わせる能力が凄いですよね。『ステキな金縛り』は映画館で観たんですが、周りのお客さんなんか気にせず笑ってしまいました」
――コメディー作品は気になりますか。
浜尾「そうですね。やってみたいです」
――小谷さんはいかがですか?
小谷「僕は、いつか自分で映画を撮りたいと思っています」
――どんな映画を撮るかは決めてるんですか?
小谷「名作と言われるものって、監督の日記のような気がするんですよ。三谷監督の話もそうだと思うんですが、やっぱり自分の人生が何かしら作品に投影されてるんだなって。だから僕はいつか自分の人生を映画にしてみたい。そして僕自身も役者として出演したいです。いつ撮れるのかわからないけど、おじいちゃんになってもいいからやってみたいですね。あとは、いっぱい女の子が出てきて、僕のことを好きになる『コニーに首ったけ』っていう作品を……」
浜尾「えぇ~!?」
小谷「というのは冗談ですけど(笑)」
浜尾「冗談なんだ(笑)。僕、『コニーに首ったけ』のほうに出たいです。僕がコニーさんに首ったけになる役演じますから(笑)」
小谷「首ったけの役で出るのかよ(笑)!」
構成・演出・振付/西田大輔
原作/ CAPCOM(「戦国BASARA」シリーズ)
出演/浜尾京介 小谷嘉一 広瀬友祐 中村誠治郎 久保田悠来 細貝 圭 吉田友一 村田洋二郎 八代みなせ 川村ゆきえ 谷口賢志 宮下雄也 新田健太 加藤靖久 浅倉祐太 ほか
公式サイト/http://www.basara-stage.com/basara3_setouchi/
■東京公演 日程:2012年11月2日(金)〜11日(日) 全12ステージ 会場:東京ドームシティホール
■大阪公演 日程:2012年11月16日(金)~18日(日) 全5ステージ 会場:イオン化粧品 シアターBRAVA!
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