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インタビュー

満島真之介   (みつしま・しんのすけ)

映画『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』、NHK連続テレビ小説『梅ちゃん先生』と、確実に知名度と実績を残してきた満島真之介。1月25日に放送されるスペシャルドラマ『リバース ~警視庁捜査一課チームZ~』では、科学捜査研究所出身のエリート、小早川稔を演じる。昭和時代の男から一転、『リバース』では最先端の捜査で犯人を追いつめていく役どころだ。

撮影/中根佑子 文/池上愛

プロフィール 満島真之介(みつしま・しんのすけ)


1989年5月30日生まれ、沖縄出身。2010年の舞台『おそるべき親たち』で俳優デビュー。11年、フジ系『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~』で連続ドラマ初出演。今年はNHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」に出演。『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で映画初出演。現在、出演舞台『祈りと怪物 ~ウィルヴィルの三姉妹~』(蜷川バージョン)が上演中。

――ドラマ『リバース ~警視庁捜査一課チームZ~』は、もうご覧になられましたか?

「見ました」


――実際の映像を観てどうでしたか?

「今までにありそうでなかった刑事ドラマです。『CSI』のような海外ドラマを見ているような気分でした。ジェットコースターのようにストーリーが展開していく、日本ではなかなかない作品という印象でした。だから、そういう作品に自分が出ているのが凄く嬉しかったです」


――「リバース」というだけあって、全く正反対の方向に展開がガラリと変わり、先が読めないストーリーでした。主演の松坂桃李さんや杏さんは、ガンアクションも多く、映像自体に迫力がありますね。

「刑事ものって、僕よりも少し上の世代の作品な気がしていて。20代の若い人達が好きそうなハラハラドキドキする刑事ドラマは、最近少ないような気がするんです。だからこのドラマで、新しい種を撒ければいいなと思っています。『リバース~』は金曜ロードショーの枠で、このドラマが放送される前の週はジブリ映画をやってるみたいなんですよ。きっと若い方々も見る時間帯だと思うので、視聴者の方々の刺激になればいいなぁと思います」


――満島さんは、刑事ドラマだと海外のものがお好きなんですか?

「好きですけど、僕の中の刑事ドラマは『西部警察』のような昔の作品のイメージです」


――随分昔の作品ですが、ご覧になったことはあるんですか?

「あります。世代ではないですが、大好きです。最近の刑事ドラマはリアリティーのあるものが多いですが、ドーンと大爆発したり、ありえない展開になってしまう昔の刑事ドラマは凄く好きです」


――満島さんの演じる小早川稔は、科捜研(科学捜査研究所)出身。捜査に使う機材も自分で作ってしまうなどの凄腕です。小早川を演じるにあたって何か役作りはされましたか。

「これまでは昭和時代の役が多く、現代の人間を演じるというのがほとんどありませんでした。『梅ちゃん先生』の撮影が終わってすぐ、『リバース~』の撮影が始まったんですけど、それまでは七三分けの昭和男だったのに、最先端技術を駆使する捜査員の役をいただいて、その振り幅が凄く楽しかったです。役でのイメージを変えたくて、監督やプロデューサーの方と細かく相談させて頂きました。1年間、ずーっと『梅ちゃん先生』をやっていたので、新しいものへの好奇心が物凄く強くて。今までにない刑事ドラマを作ろうとしている人達と一緒に携われることも、僕にとっては凄く刺激的でした。撮影期間は短かったんですが、チーム感はめちゃめちゃありましたね」


――監督へは具体的にどういう提案をしたんですか?

「監督とは『普通じゃつまらないよね』という話はしていて。でも精神の面では普通じゃなきゃいけない部分もあって。だから、小早川は機械っぽいヤツに見えるけれど、人間味を持たせたいと提案しました。小早川以外のメンバーもそうなんですが、チームZは、性別や国籍などにとらわれない“人間”同士の集まりという存在にしたかったんです。人間同士が集まることで何か凄い要素を生み出していく…そういうことを表現したかったので、衣裳はシンプルにしたいとも話しました。ただ、シンプルの中にも“何か持ってるんじゃないか?”とにおわせるようなものも入れたり。小早川は、科捜研出身というだけで、どんな人物なのか? 本当は小早川が裏で何かを牛耳ってるんじゃないのか? とか、色んな想像が出来るんです。それで、ハーフパンツにイタリア風のシャツを羽織った衣裳になりました。あとは裸足で芝居をしたいということも監督に伝えて。小早川は基本的に外で捜査をしないので、部署は自分の部屋のようにしたかったし、肌から何かを感じているような動物的な感覚を出したいなと思って、それでスリッパにしたんです」


――台本を読む限りだと、外見はオタクっぽいイメージを想像していたんですが、違うんですね。

「国際集団でも通用するような役にしたかったというのもあります。松坂さんや杏さんは凄く背が高いし、池内博之さんもハーフだし、海外でもやっていけるような集団に見られるようにしたいなぁというのは思っていて。“こいつはどこの国の人なんだろう?”とか“何者なんだ?”って疑問を持ってほしかったんです。ハーフパンツによくわからない変なシャツを着ていて、一見少年っぽく見えるんだけど、何歳なのかもよくわからない。それにチームZは、選び抜かれたエリート刑事達の集まりだと言われてるけど、一体どういう組織なのかわからないじゃないですか。僕は台本を読んだ時に、小早川がチームZの司令塔なんじゃないかと思ったんです。物凄く彼がキーマンな気がして。だから、よくわからない雰囲気を出しつつも、普通の人間らしさみたいな瞬間が見えればもっと面白くなるのではないかと思いました」


――なるほど。『梅ちゃん先生』での山倉真一とは真逆の役どころだと思うんですが、すぐに切り替えは出来たのでしょうか。

「すんなり入ることが出来ました。ドラマとドラマの間隔がなかったぶん、“どうしようかな”と悩む時間もないまま撮影に臨んだのがよかったのかもしれません。『梅ちゃん先生』で山倉真一という役を1年間演じて、ひとつの役に対する愛が凄く深まりました。その絶頂で、ぽんっと違う人の人生を演じることになった時、山倉を演じてた時と同じ“役への愛し方”も、そのまま小早川に持ってこれた気がして。山倉への愛をぐるっと回転させて小早川を演じているような感覚だったんです。それと、クールだけれど凄い力を秘めているという役どころも初めてで。小早川を演じたことで、パワーを外に放出するのではなく、内に積み重ねていくという新しい思考回路を、自分の中に作ることが出来た気がします」


――満島さんは元々テレビっ子だったんですか?

「いや、全く見てませんでしたね。スポーツしかやってない。沖縄出身なので、海かスポーツかさとうきび畑かみたいな生活でした(笑)。最近は、テレビ離れが顕著だと聞きますが、僕はもっとワクワクしながらテレビを見てほしいという気持ちがあるんです。この作品では特にそう思いました」


――では、役者をやるようになってから、映像に対する思いみたいなものが強くなったんですか?

「僕は、役者になる前に学童保育の先生のアルバイトをやってたんですが、その時から子供達にとって、テレビの影響力が凄まじいということは感じてたんです。あと、役者になってから…それこそ『梅ちゃん先生』をやって、年配の方々はテレビをよりどころにしているんだなとも思いました。だからこそ、テレビは“責任”があると思います。たくさんの人に見てもらえるぶん、見た人が何を感じたのかが凄く大事だなと」


――朝ドラの影響力は絶大ですよね。

「毎日の日常生活の中で見られるドラマというのは大きいです。こんなにも人に与える影響が大きいんだと。そう感じだ時に、今のままではいけないなと思ったし、もっと素敵なものを作れるように、自分自身も素敵な人間にならなきゃということも感じました。それがまた次の世代に繋がるのだなと思います」


――満島さんは、先のことをしっかりと見据えて、考えられてるんですね。

「役者をやりだした時から、テレビに出て自分の身をさらけ出すということは凄く勇気がいることだし、自分に対する責任をしっかりと受け止めなければいけないと思っていました。この仕事って、どちらが表でどちらが裏なのか、何がいいことで何が悪いのか、これは楽しいのか怖いことなのか…物凄く紙一重なところで綱渡りをしているようなものだと思うんです。まさにそういう意味では、このドラマの『リバース~』とリンクしています。1回しかない人生の中で、自分以外の人生が歩めることって素晴らしいと思うけれど、逆に怖いことでもあります。普通は自分の名前、自分の体、造形で、一生の道を作っていきますけど、役者の場合は、自分という道がある中に、違う道がいくつもあるんです。みんなは新幹線に乗ってるんだけど、役者は新幹線だけじゃなくて、世田谷線みたいな短い路線もある感じというか。自分以外の人生を歩むぶん、自分の人生は自分が納得できるものでないと、家族に対して、先祖に対して失礼だなって思うんです。姉(満島ひかり)ともよくそういう話をしているんですが、僕自身がちゃんとした人生を送らないと、他人の人生を生きられる訳がないって」


――そういうお話を聞くと、より『梅ちゃん先生』の山倉真一が愛おしく感じます。そして『リバース~』の小早川稔も楽しみです。

「そういう考えを持ったうえで、小早川を演じるのはシンプルな“人間”というところに行きついたんですけどね(笑)」


――でも、色んな肉付けをそぎ落とした結果ですよね。

「そう。そぎ落としてそぎ落として、最後に残ったのがそれでした。最近はそんなことばっかり考えています。やっぱりひとりの人間を演じるためには、物凄く深いところまで考えなければいけません。正直、役って僕ひとりで作るものではないので、事細かな部分はどうでもよかったりするんです。表面じゃなくてもっと根本の部分…僕達は何を伝えたいんだろうっていうことを忘れてはいけないと思います。たかだか数時間、ひとりの人間を演じるだけかもしれないけど、もっと視聴者の人達と僕らの距離を近づけていきたいと思います」


――考えは尽きませんね。

「終わりませんよ(笑)。なんでこんなに考えてしまうのかわからないんですけど、デビューの時からずっと考えてます。子供達に対しての影響力のこととか、子供達が夢を持つことに対して、僕は何が出来るんだろうとかは…常に考えてますね」


――2012年は満島さんにとって、濃密な1年だったと思うのですが、どんな1年でしたか。

「上京してからの5年は、毎年色んなことがありました。特に昨年は、考えれば考えるだけ、色んなことがあった年でしたね。映画『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』が公開されて、若松孝二監督が亡くなられて…。満島真之介にとって、素晴らしい人達に出会った1年でしたし、失った1年でもありました。映画があって、『梅ちゃん先生』があって『リバース~』があって…。正直、脳がついていかなかった部分もあるんですけど、身体はなぜか動いていました。階段を上らざるを得なかった1年のような気がします。今年は年男で厄年なので、最高の1年になると思います(笑)」


――『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』のDVDが1月25日に発売されるので、こちらの見どころも聞かせて下さい。

「映画鑑賞っていうよりも、体感に近い感じで観てもらえる作品だと思います。この作品は、若い人達に観てほしいですね。自分を貫き続けた三島由紀夫(井浦新)と、とてつもないパワーを持った森田必勝(満島)が、昭和には存在した。森田という存在は、僕の中から徐々に離れつつあるんですが、精神では凄く繋がっています。そして今になって、彼の満ちなる力がどれだけ凄いものだったのか、改めて気づくようになりました。誰しもが持っているであろう、故郷への思いや家族への思いが、この映画を観ることで、体感できるはずです。若松監督は、“若い人達が時代を作っていくんだ!”と常に思っていた方だったので、その時代に生きた若者達の映画を作り続けたのだと思います。その思いを僕達が受け継いでいかなければいけません。DVDが発売されることによって、もっと色んな人に広まると思うので、凄く楽しみです」


――並々ならぬパワーを受けそうです。

「生きるか死ぬかなんて、僕達からすると、全然現実的ではないじゃないですか。こういう事実があったんだよ、と知るだけでも違うと思います。若松監督は、ずっと自分の意思を貫いてこられました。周りになんと言われようと、“俺が伝えたいのはこれなんだ!”と最後まで貫かれた。今、蜷川幸雄さんの舞台『祈りと怪物 ~ウィルヴィルの三姉妹~』をやらせて頂いてますが、蜷川さんも自分のやりたいことを貫いている方。テレビに出る以上、自分の発言や行動に責任が生じるじゃないですか。僕達の一言で、誰かの人生が変わるかもしれない。それだけ影響力がある中で、自分の意思がぶれないっていうのは凄いことだと思います。なぜそれが出来るのかというと、やっぱり日々の生活をしっかり生きてるかどうかなんじゃないかと。毎日をどれだけ深められるかだと思います」


――今日は、満島さんの頭の中が色々わかった気がします。

「色んなことを考えすぎて、なんかすみません(苦笑)。それだけの思いが詰まってる作品なので、みなさんの携帯を触る2時間を、『リバース~』と『11.25自決の日~』の2時間に少し分けて下さい! ってことです(笑)」


『リバース ~警視庁捜査一課チームZ~』

チーフプロデューサー/神蔵克・宮崎啓子
プロデューサー/前田伸一郎
演出/岩本仁志
脚本/酒井直行
音楽/吉川清之
出演/松坂桃李 杏 池内博之 笛木優子 六平直政 満島真之介 鈴木浩介 鶴見辰吾笹野高史 原田夏希 竹富聖花 相島一之 神尾佑 世良公則 ほか

警視庁捜査一課。それは言わずと知れた刑事の中の刑事達のエリート集団。そんな捜査一課に、新たなチームが誕生した。ネットを利用した犯罪、増加する愉快犯的犯罪、グローバル犯罪の急増などに対応するため、警視庁が秘密裏に作り上げたのが、「チームZ」だ。 チームZに配属された新人刑事・江上(松坂桃李)。チームZのメンバーは異端で個性派の刑事ばかりで、江上の幼なじみの希(杏)もいた。そんな中、大手食品会社・大日本フード製の食品に小型爆弾が仕掛けられるという事件が連続して発生し、チームZも捜査に参加。“ばくだん星人”と名乗る犯人は「日本国民1億3千万人を誘拐した」と挑発し、指定した場所2ヵ所にそれぞれ1億5千万円、計3億円の身代金を要求する脅迫文を送付。江上と希は身代金の運搬役を務めるが、犯人に翻弄されて捜査は難航。江上と希の過去にも関わり、事件は意外な展開を見せる…。

日本テレビ系にて、2013年1月25日(金)夜21時00分~放送

2024年06月
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