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インタビュー

平方元基   (ひらかた・げんき)

言わずと知れた、オードリー・ヘプバーン主演によるミュージカル映画の大作『マイ・フェア・レディ』。日本での初演は、この映画が公開される1年前の1963年。日本人が日本語で上演した初のブロードウェイ・ミュージカルとして話題となった。そして今年で初演から50年が経過。記念すべき年に上演する本公演では、新演出・新キャストで名作が新たに生まれ変わり、次なる歴史に向かってさらに大きく進化を遂げる。元・宝塚歌劇団トップスターの霧矢大夢、真飛 聖、人気俳優の寺脇康文など豪華キャストの中に、近年ミュージカル俳優として著しい成長を見せる平方元基がフレッシュな演技でフレディ役に挑む!

衣裳協力:ハリス  ペルフェクション/ ハリス 恵比寿店(03−5724−8014)
撮影/浦田大作 文/池上愛

プロフィール 平方元基(ひらかた・げんき)


1985年12月1日 生まれ、福岡県出身。2008年『スクラップ・ティーチャー〜教師再生〜』でデビュー。以降、バラエティー『戦国鍋TV 〜なんとなく歴史が学べる映像〜』やドラマ『東京リトル・ラブ』などに出演。2010年舞台『ヘルプマン!』にて、初舞台&初主演。2011年ミュージカル『ロミオとジュリエット』ティボルト役でミュージカルデビューし、『エリザベート』『シラノ』に続き、『マイ・フェア・レディ』がミュージカル4作品目となる。

――オードリー・ヘプバーン主演の映画でも知られる『マイ・フェア・レディ』。日本ではこれまでに何度も舞台公演されています。新演出、新キャストで上演される『マイ・フェア・レディ』に出演する今の気持ちは、どんなものがあるのでしょうか?

「僕みたいな男が、さわやかな青年・フレディを演じてもいいんだろうか? という心配がありましたが、新しいものにチャレンジできるという点が凄く嬉しかったです。そして、日本初演50周年を記念する演目に立てる喜びも凄くあります。新しい演出、新しいキャストで挑む名作に、僕は身を置いているんだなと…稽古を始めながら思いました」


――映画や舞台はご覧になったことがありますか?

「観ました。過去に上演された時の舞台の台本も読ませて頂いたりもして。ただ演出のG2さんは、やるんだったら新しいものを作りたいとおっしゃっていたんです。この作品が上演されていた当時(初演は1956年3月、ニューヨークのマーク・へリンジャー劇場で行われた)って、女性達が世の中に羽ばたいていくような時代だったからこそ、作品の人気が出たんだと思うんです。だからそのままの内容を今の日本でやると、ちょっと意味がずれてきちゃう。今の日本だと中流階級がほとんどですが、当時は中流階級でも貴重な存在だったそうです。そういうチグハグを埋めるために、イライザの話し言葉が江戸弁になっていたり、演出も色々変わっています」


――G2さんも「リメイクではなくリボーンだ」とおっしゃってましたね。

「よりリアリティーある舞台になっていると思います。映画の『マイ・フェア・レディ』は、完全によその国の出来事として観てしまうと思うんですが、今回の舞台はもっと身近なものに感じられるんじゃないかと。日本人が観て面白い『マイ・フェア・レディ』だと思います」


――稽古の時から、新しいものを作っている! という感触はありましたか。

「振り付けやセリフが、カッチリ決まっている訳ではなかったんです。みんなの感じをみながら徐々に変えていくことが多くて。G2さんはよく『固めないでくれ』とおっしゃっていたんで、最初から新しいものを作り上げている感じがありました」


――G2さんとは初めてのお仕事になると思うのですが、どういう演出をされる方ですか?

「役者それぞれのイメージを凄く大事にしてくれる方ですね。最初は必ず役者主導でやらせてくれます。そこからG2さんのイメージと近づけていく感じなんです。頭から『こうやって』っていう決めつけをされないんですよ。本読みでも、同じシーンに登場するキャスト全員を集めて『この心情をみんなで探っていこう。実は僕もまだわかっていないんだよね』っておっしゃるんです。役者に優しいというか…凄く歩み寄って下さる方だなと思いました。演技に対してのダメ出しも、“オーダー”とおっしゃる。『僕もわかっていないんだ』っていうのも、それを演出家が言っていいのか? と思う人もいるかもしれないけど、正直に伝えて下さるのが素敵だなと思いましたし、凄く新鮮でもありました」


―― 一緒に考えていこうっていう姿勢の方なんですね。

「はい。話し合いの中で、G2さんはこういうことを考えているんだと、くみ取っていく感じです。僕の演じるフレディは、出番もそこまで多いほうではないし、台本にもト書きが少なかったりするので、わからない部分も多いんですよ。なのでG2さんとの会話に色んなヒントが隠されていましたね」


――平方さんが考えるフレディってどんな青年ですか?

「一言で言えば、イライザに凄く惚れている男。だけど、イライザに恋をすると、自分が歩けば花も咲いて小鳥も鳴いて、町全てを輝かせてあげるよ! って思っている。つまり、イライザに恋している自分にワクワクしているんですよね。大人の男女として付き合いたいというよりも、自分の気持ちをイライザにストレートにぶつけている。そこが、なかなか自分の気持ちに素直になれないヒギンズと真逆ですね」


――自分の気持ちに正直なフレディと、素直じゃないヒギンズ。その間に挟まれたイライザという関係性が面白いですね。

「イライザは先を見据えた幸せがほしい訳じゃないですか。だけどフレディは、今あなたとデートしたい! 今あなたと話したい! みたいなタイプです(笑)。かといってヒギンズは全然素直じゃない。ヒギンズ教授を演じる寺脇康文さんの稽古風景も見させて頂きつつ、フレディの役をつかんでいます」


――共演者の方々の演技を稽古から見られるのはいいですよね。

「それが舞台のいいところです。映像となると、なかなか出来ないですから」


――イライザ役の霧矢大夢さん、真飛 聖さんには、どんな印象を持たれていますか。

「おふたりとも似ているようで全然違う、凄く面白い方です。霧矢さんはとても芯がある方。最初の本読みでイライザのセリフを聞いた時、もうイライザの役が出来上がってるじゃないか! ってびっくりしました。真飛さんは、フレディのようなイライザです(笑)。僕が言うと失礼かもしれないんですが、凄く素直な方だなぁと。いい意味で考えるということをせず、すぐに行動するというような印象を受けました。おふたりとも真逆のイライザが出来上がっていて面白いです。Wキャストって、こういう部分が素敵ですね」


――それに、なんといってもおふたりとも美しい。

「そう! 稽古の時から美しかったです! 宝塚の稽古着で練習されていたんですが、もう美しすぎですね。真飛さんはスカーフも巻かれちゃったりして。霧矢さんはジャージ姿の日もありましたけど、それでも様になってるんですよ。容姿だけ見たらこんなに美しい花売りはいないだろうって感じ(笑)。おふたりとも凄く品があるんですよ」


――平方さんは上流階級の役どころですから、もっと品を出さないと(笑)

「ほんとに(笑)。ただ最初の設定は中流階級だったんですよ。でもG2さんと話し合っていく中で、そこまで設定に拘る必要はないことになって。だったら、上流階級にしたほうが観客もわかりやすいと思うし、イライザがどんどん上流階級に上り詰めて行ったからこそ、同じ階級のフレディと出会えたという設定のほうが綺麗なんじゃないかと」


――なるほど。貴族の設定で難しかったところはありますか?

「ご存知の通り僕は貴族ではないので(笑)、想像でしか出来ないところは難しかったです。例えば、何か困ったことが発生した場合、貴族だったら自分でなんとかしようとせずに、すぐ人を呼びますよね。僕も実生活でそういうことをしたほうがいいのかな? とか色々考えちゃいました」


――ミュージカルなので、歌の部分も凄く重要です。

「そうなんです。しかもどれも有名な曲ばかりですから」


――タイトルはわからなくても、どこかで聞いたことがあるっていう曲ですよね。

「今回は新演出なので、歌詞も変わるんです。僕は、過去に上演された時の歌詞を勉強してしまっていたので、新しい歌詞を覚えるのに苦労しました。それにこの歌詞で歌うのは、僕らが初めてになる訳じゃないですか。それは凄くプレッシャーでしたね。歌詞が変わったことで、結構意味合いも違っている部分が合ったりして、どうしたものかと…。きっと昔の曲に思い入れのある方々も多いでしょうし、果たして本番に楽しんで歌えるのか!? って。でも、こればっかりはやるしかない(笑)。気持ちを切り替えて、今は開き直っています。フレディという役柄も、やっちゃったもん勝ちみたいなところがありますから。役どころとしても若い設定なので、そういう部分では好き勝手出来る。それに映画に比べて、今回の舞台ではもっと幼い感じがあってもいいのかなと思っているんです。昔の20歳ってもう大人かもしれないけど、現在の20歳ってまだ子供だったりするじゃないですか。だから、フレッシュなフレディを演じてやろう! という気持ちでいます。とはいえ、イライザとフレディのコントラストをはっきり映し出すためにも、貴族らしいところはしっかりと見せたいですね」


――今までとは違う『マイ・フェア・レディ』ですね。

「そうです。物語の結末を知っていても、“おっ”というような楽しみがいっぱい詰まっています。冒頭のシーンや、イライザのべらんめぇ口調とかすっごく面白いですよ!」


――ちなみに、出ずっぱりの舞台ではない時って、どんな風に過ごされてるんですか?

「初日は、めちゃめちゃ緊張するので、物凄い早めに着替えてスタンバイしてます(笑)。で、待合室の前の廊下をすたこら落ち着きなく歩く。何回か公演を重ねるごとに、落ち着いていく感じです。自分の出番じゃない時は、歌ってることが多いです。待ち時間があると、のどを慣らさせることが出来るのがいいですね。それにみんなのテンションが把握できるのもいい。今日はみんな飛ばしてるな~とか、今日は落ち着いてるなとか。みんなの状態を知ったうえで、ステージに立てるのは、待ち時間がある人の特権かもしれないです」


――最後に。平方さんがミュージカルをやっていて一番高揚する時ってどんな時ですか?

「初めて舞台に立ったのは、『ロミオ&ジュリエット』のティボルトという役でした。ほとんどひとりで舞台に立つことが多かったんですけど、大勢のお客さんの前に立って、僕だけにスポットライトが当たって、そこで熱唱する。その時に、なんか目覚めちゃいました(笑)。今だから言いますけど、あの時はティボルトを更に超越した自分がいたんです。ふと我に返って、危ない! 俺はティボルトだ! ってなるくらい。これが舞台の醍醐味だと思います。物凄い刺激物でした。あの経験が無かったら、ここまでミュージカルをやってないんじゃないかな」


『マイ・フェア・レディ』

脚本・作詞:アラン・ジェイ・ラーナー
音楽:フレデリック・ロウ
翻訳・訳詞・演出:G2
場所:日生劇場 ※金沢、福岡、名古屋、大阪公演あり
出演:霧矢大夢(Wキャスト) 真飛 聖(Wキャスト)/寺脇康文 田山涼成 松尾貴史
寿ひずる 平方元基 麻生かほ里 江波杏子 ほか
公演期間:2013年05月05日(日)~2013年05月28日(火)
http://www.tohostage.com/myfairlady/

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