演出・岸谷五朗、主題歌・新藤晴一(ポルノグラフィティ)という豪華スタッフ陣が揃った舞台『FROGS』は、ひょんなことからカエルの世界に迷い込んでしまった少年達と、若者カエル達が織りなす青春冒険ストーリー。07年の初演以来話題を呼び、その後3度の再演を重ねた人気作が、今年新キャストを迎えて再始動する! ダンスが大好きな少年カケル役の小関裕太とカエル界のフクロウ役の平埜生成に5月公演で感じたこと、そして7月からの再公演について話を訊いた。
撮影/中根佑子 スタイリスト/ヤマモトヒロコ ヘアメイク/菅野綾香(ENISHI) 文/池上愛
――5月のゲネプロ公演見させて頂きました。
小関「ゲネプロと本番の公演は全然違いました」
――どんな風に違いましたか?
小関「やっぱりお客さんが入ると雰囲気がガラッと変わります。ゲネプロは、見に来て下さる方も取材の方だったり関係者の方だったりして、凄く真剣モードで見られている気がするんです。僕達も壇上に立って演じる初めての日なので、物凄く固くなっていました。そのゲネプロを終えて、実際にお客さんの前で立って…お客さんが笑ったり泣いたりする表情を見て、どんどん緊張がほぐれていきましたね」
平埜「ゲネプロ、見に来てる人がかなり多くなかった?」
小関「多かった!」
平埜「とんでもない数だったんですよ! しかも最前列は劇団プレステージ(アミューズに所属する若手俳優からなる劇団。平埜も所属)みたいな…最悪ですよ(笑)。ステージ上に雨を降らせたり、映像を流したりする中で芝居をするのも初めてだったので、テクニカルな部分での緊張もありました」
――雨のシーンは滴がキラキラしてとても綺麗でした。足元は大丈夫だったんですか?
小関「めちゃめちゃ滑りました。一番ひどかったのは、闘いのシーン。僕は相手に立ち向かって蹴られるっていう動作をしなきゃいけなかったんですけど。その殺陣は音楽に合わせてやっていたので、リズム通りに動かないと全部ズレちゃうんです。なのに、立ち向かう時に滑っちゃって、相手の蹴りが空振りになってしまい…」
――そのあとはどうなったんですか?
小関「蹴られた後は痛がる演技が必要だったので、滑って転んだから痛いっていう感じに咄嗟に変えましたね(笑)」
平埜「最初のほうは、みんな転んでたよね。“濡れた床でアクロバットするの、かなりビビったでしょ?”って、見に来て下さってた先輩に言われましたもん」
――ビビりましたか?
平埜「びびってます…せん」
――え!? どっちですか(笑)?
小関「ははは! どっちですか(笑)」
平埜「びびってないです(笑)」
――(笑)。ゲネプロを拝見して思ったのは、公演中の数時間の間にも、ダンスが伸びやかになっていったなぁという印象を受けました。
平埜「へぇ~そうですか。やってるほうは無我夢中だったんで全然わからないです。でも成長してたってことですよね」
小関「凄く嬉しいです」
――演出は岸谷五朗さん。どのような指導を受けたのでしょうか。
小関「大先輩の役者さんなので、ダメ出しの一つひとつが凄く重かったです。“前のシーンでこういうセリフがあるんだから、次の動きはこうなるんじゃないか”とか“こういう感情だから、こういうセリフなんじゃないか”っていうように、役の一つ一つの行動にも理由があるんだってことを教えて下さいました。あと印象的だったのは、“その芝居は合ってるんだけど……もうひとつ上の芝居をやってみない?”って言われたこと。“自分の今できる限界で満足するんじゃなくて、更に広げてほしい”っていうことをおっしゃっていましたね」
――自分の可能性をどんどん広げていって下さるんですね。
小関「手を伸ばしてようやくつかんだと思ったら、また次の日は、ちょっとずつゴールが遠くなっていました。稽古は大変だったけど凄く充実していましたね。色々悩んだりもしたけど、悩んでることも楽しかった。本当にいい経験でした」
平埜「稽古の終盤のほうで、五朗さんが凄くもどかしそうにしてらしたんですよ。 “もっと出来るんだよなぁ…なんか違うんだよなぁ”って。稽古日のラスト3日間くらいだったかなぁ。五朗さんの役者魂に火が着いたのか、“しびれる演技が、もっとあるんだよなぁ”と。それが凄く悔しかったです。この言葉をもっと早くから言われてたら、僕らはもっと上にいけたんじゃないかなって。五朗さん、むちゃくちゃ優しく教えて下さったんですよ。初舞台のメンバーもいたし、本当に手取り足取り教えて下さって。先輩方からは、厳しい方だと聞いていたので、余計悔しかったです。もちろん本番が終わったあとは“凄くよかったよ!”とおっしゃって下さいましたが、五朗さんは物凄く上の方だから、足りなかった部分が本当はあるんじゃないかなと…。だから7月の再演では、五朗さんの本心をもっと引き出したいと思っています」
――キャスト同士で話し合ったりすることはありましたか?
小関「稽古初日は結構話しましたよね?」
平埜「ここはどういう場所で…みたいなことを話したよね」
小関「そうそう。みんなで同じ世界観を作る為に、色々話しました。例えば、カエル達がいる草に囲まれた場所は、人間界から見たら、道の真ん中なのか、それとも端なのか。人の手が加わってない地面なのか…そういう細かな部分まで話し合いました」
平埜「以前、『ロミオ&ジュリエット』という舞台に出させて頂いたんですが、演出がイギリス人の方だったんです。その演出家は、何よりも先にディスカッションをするという人で。キャスト全員で同じ意識を持ち、役に取り組もうという指導でした。その時に、話し合う時間って凄く大事だなと気づいて。それで今回もやったほうがいいんじゃないかなと思ったんです。今回はカエルの世界っていう特殊な舞台じゃないですか。だから人間のほうは、正直どうでもよかったんですけど…」
小関「え!? どうでもよかったんですか(笑)」
平埜「カエルだけで必死だからね(笑)」
小関「ちょっと~(笑)。カケルもカエルになっちゃうんですからね! カエルは雨が降ると踊りだしたくなるっていう設定だったので、なんで踊りだしたくなるんだろう? っていうことも話し合いました。雨粒を肌で感じて、気持ちよくなるのか。楽しくなるのか、嬉しくなるのか…。そういう深い部分まで詰めていった上で稽古に臨みましたね」
平埜「正直、話し合いがどの部分に繋がったかというのはわからないです。だけど、やっているのとやっていないのでは、確実に違うんだろうなとは思います。今回が初舞台っていうキャストの人は、特にそうだったんじゃないかなと」
小関「でも意外とみんな緊張してなかったですよね?」
平埜「あ~そうかも。そしてみんなめちゃめちゃいい人で真面目! やんちゃな人がひとりもいませんでした」
小関「“もう少しはっちゃけてもいいんじゃないの?”って指摘もされたんですけどね」
平埜「言われたことは、“はい!”って絶対返事してたもんね(笑)」
――(笑)。みんなで揃えたダンスをするシーンが多かったですよね。振りを合わせるのは難しくなかったですか?
小関「いや、そこまで大変ではなかったです」
平埜「うっそ! めちゃめちゃ練習してたじゃん」
小関「練習はしました(笑)。だけど振り合わせは3月くらいからやっていたので、本番は全く気にならなかったです」
平埜「僕はずっとダンスを見てる側だったので、一生懸命練習してるみんなを見て、少し申し訳なかったけどね」
小関「ははは(笑)」
平埜「めちゃめちゃ汗かきながら、“みんな手の位置! 角度、角度!”って注意されてて。その姿を僕は見てるっていう(笑)」
――でも「Special公演」では、小関さん演じるカケルを平埜さんが、平埜さん演じるフクロウを小関さんが演じます。
平埜「いや~! そうなんですよ!! 僕がめちゃめちゃダンスをやる側になるんで、大丈夫かなと」
小関「やることが凄く増えますよね」
平埜「キャスト全員の役が入れ替わるので、同じ舞台でも全然違うものになると思います。こんな経験って滅多にないじゃないですか。Special公演の話を聞いたあとは、カケルの気持ちを凄く考えるようになりましたし、台本の読み方も変わってきますね」
小関「短い期間の中で、自分とは真逆の役をやれるっていうのは、貴重な経験ですよね」
平埜「そうだね。観に来てくれたお客さんも絶対に楽しいと思ってくださるはず。僕がお客さんだったら、絶対観たいもん」
――楽しみと同時に大変さもありますが。
平埜「芝居だけじゃなくて、ダンスと歌も入れ替えなきゃいけないっていうのが、一番大変かもしれないです。カケルってソロパートが多いので、それをイチから覚えるのかと思うと…(笑)」
――カケルはアマネとのダンスバトルもありますしね。
平埜「ダンスバトルって何? みたいなところからのスタートです(笑)」
小関「ダンスバトルっていえば、山下銀次君(通常公演/ピョン吉役、Special公演/アマネ役)、超やばいです。この前一緒にショップに行ったら、店内でダンスバトルはじめてたんですよ!」
――えぇ!? それは凄い…。小関さんも参戦したんですか?
小関「僕は外から見てました(笑)」
平埜「銀次も役が変わりますからね。一気にセリフが増えるし、それぞれの課題が生まれてくるんだろうなぁ」
――役が変わる者同士、ライバル心みたいなものは芽生えますか?
平埜「う~ん、どうだろう。実際に舞台が始まったら出てくるかもしれないですけど、今はまだそこまでないですね」
小関「僕はあるなぁ~(笑)」
平埜「そうなの?」
小関「ライバル心は持っちゃいますね!」
平埜「昼公演は通常公演だけど、夜がSpecial公演の日とかはヤバそうだよね」
小関「そうなんですよね~。1公演だけならまだいいんですけど」
平埜「きっとその日は凄く疲れてるだろうな(笑)。ハイタッチもあるんで、訳が分からないことになってるかもしれない(笑)」
小関「アフタートークの日は、灰になってるかもしれませんね(笑)」
平埜「運動量も半端ないからね」
小関「汗でぐっしょぐしょですね」
平埜「びっしょびしょだね(笑)。稽古の時、尋常じゃない汗かいて本当に申し訳なかったよ(笑)。後ろに振り向くだけでも、汗が飛び散ってたもんね」
小関「口空けてると、汗が入ってきてました(笑)」
平埜「汗が床に飛んで、その汗を踏んで滑っちゃうみたいなこともあったね。僕、凄い汗っかきだから、Special公演はどうなることやら心配です!」
小関「でも夏ですしね! 汗かいて楽しみましょう。お祭り気分でお客さんも観に来てほしいです」
平埜「お客さんも汗かいて、ハイタッチはお互い汗まみれでね(笑)。5月公演では見せられなかったアクロバットもあるので、是非楽しみにしてほしいです」
演出:岸谷五朗
脚本:喜安浩平
主題歌制作:新藤晴一(ポルノグラフィティ)
振付:植木豪(PaniCrew)/岡千絵/ただこ
出演:小関裕太、平埜生成、溝口琢矢、松岡広大、 太田将熙、山下銀次、三本健介、小池成
※Special公演には、青柳塁斗 風間由次郎が出演
ダンスが得意な都会育ちの少年カケル(小関裕太)は、いとこのテル(溝口琢也)に誘われて、山奥にある田舎にやって来た。ある日、カケルとテルは“おかえり神社”と呼ばれる場所に迷い込み、カエル達の住む世界に迷い込んでしまった。人間界に戻るため、偶然出会った若者ガエル達と共に人間に戻る方法を探していく…。
2013/7/18(木)~7/27(土) AiiA Theater Tokyo (東京都)にて公演!!
http://www.frogs-stage.com/