2014年1月スタートのドラマ『戦力外捜査官』で、警視庁捜査一課18係の若手刑事・関川直樹を演じる渋谷謙人。彼は、奇しくも同じ1月スタートのドラマ『S -最後の警官-』第1話では、犯人・興津力也役を演じている。全く正反対の役柄をどう演じたのか、撮影の裏側の様子を含め、彼の本音を聞いた。
撮影/京介 文/渡邊美樹
――今回のドラマ『戦力外捜査官』の話からお伺いしたいのですが、出演が決まった時どう思われましたか?
「監督の中島さんと、またご一緒できるって聞いて嬉しかったですね。前回(『デカワンコスペシャル』)でご一緒した時は、少しだったので、長い期間ご一緒できるのが嬉しかったです。結構その作品が思い出深くて。っていう理由も、実はその時演じた板前の役のために角刈りにしたので(笑)。それで、その役名がシゲだったんですけど、この現場に来てもシゲって呼ばれてるんです。たぶん最後までこの呼び名で行くと思うんですけど(笑)」
――では、以前から面識があったんですね。実際にクランクインしてみていかがですか?
「クランクインの前に、『S -最後の警官-』という作品でもの凄い嫌な犯人役を演じていたので、今回は警察官だっていう、軌道修正じゃないですけど、気持ち的にも作り方的にも、違うイメージをどう作ろうかなって。正直、今でも探り探りなんですけど」
――『S -最後の警官-』では、警察と戦いを繰り広げる凶悪犯を演じられますが、やはりそのギャップに戸惑いましたか。
「そうですね。でも、挑戦だなっていう気持ちの方が大きかったです。面白いですし。放送となる日が『戦力外捜査官』の翌日で、役柄がガラッと変わるので」
――これまで、渋谷さんは刑事役を演じられたことがあると思いますが、過去の経験が役に立ったとかありますか?
「今回、あまり刑事っていう考え方をしてなくって、人間性じゃないですけど、関川っていう役は一体どんな役なんだろうっていうことを考えています。それって、いいことか悪いことかわからないですが、現場で中島さんと話をしたり、みなさんの空気感の中で徐々に知っていくことが多いので、無理くり固めずもちろん自分なりのアピールもしつつ、現場で。だから、今後もっと楽しみです。まだ2話までしか台本を読んでいませんが、関川がどうなっていくのか」
――では、役作りをどうこうするというよりかは、現場で監督と会話をする中で自分で徐々に固めていくっていく感じですね。現段階で、関川ってどういうキャラクターですか?
「まだ現場に入ってそんなに日が経っていないので、現場の空気に慣れることを考えています。キャラクターを掴むのはまだこれからですね」
――今日は警察署内でのシーンが初めてなんですよね。緊張されましたか?
「今回は、思ったよりも緊張はしなかったです。いつもは凄く緊張するんですけど、中島さんや『デカワンコ』のスタッフさんがいるからかかも知れませんが…。ま、全く緊張してないって言ったら嘘になりますけど(笑)。中島さんが、言うこと言ってくれますし、面白いところは面白いって言ってくれるので」
――実は、昨日撮影の様子を拝見させてもらっておりまして。TAKAHIROさんと監督が楽しげにお話されている姿が印象的だったんですが、やっぱり監督の人柄なんでしょうね。
「そうですね、そうだと思います」
――今回、TAKAHIROさんが演技初挑戦ということで、さらに渋谷さん演じる関川と対立する刑事・設楽という役ですが、TAKAHIROさんの印象はどうですか?
「衣装合わせの時に、中島さんに『先輩面しろよ』って言われたのが、頭から離れなくって(笑)。いや、そんなできるわけない! って。する気もないですし(笑)。でも、ライバル役なので一緒に面白くしていければなと思います」
――俳優歴で言ったら、新人とベテランくらいの差がありますよね。
「でも、関係ないじゃないですか。画面の中では。僕はあんまり気にしたことはないですけど」
――負けてたまるかっていうような気持ちはそんなにないんですか?
「もう、自分のことでいっぱいいっぱいですね(笑)。必死です」
――今回初めて共演する方が多いと思いますが…。
「今回は、TKOの木下(隆行)さん、(濱田)マリさん、徳重(聡)さん、八嶋(智人)さんとよく話をさせてもらってて、それで撮影中にずっとスタジオの中で、木下さんと八嶋さんに『大丈夫だよ、ドンマイ!』って、励まされて(笑)。でも、僕、何にもしてないんですよ! なのに、本番直前になぜかおふたりから励まされて。僕、何も落ち込んでないんですよ!(笑)『なんでですか!?』って言ったら、『なんか、落ち込んでるっぽかったから』って。『先、進もう』ってふたりで盛り上がってるんですよ(笑)。それを言われることで僕は落ち込みますよって」
――そうなんですか(笑)。でも、いいですね、現場を盛り上げてくださる先輩がいて。
「そうですね。そういうところからも、自分のポジションがわかっていくので。まずはそこじゃないですけど。なんせ、受け身型なので(笑)」
――今回の台本を拝見させて頂いたんですが、凄くテンポがいいドラマですね。
「そうですね、僕もそう思います。撮影も早いです。物凄く気持ちがいいです」
――では、実際に演じてみていかがでしょうか?
「不安はありますけど、不安だから、大丈夫だろうって思います。今日撮影したワンシーン目も、車から降りるシーンだったんですけど、車の中に乗っていたらシーバーで、『本番!』って言われて、マリさんと、え、本番? ってなって(笑)。テストとか1回もやってないけど、大丈夫かなって。でも、監督からOKが出たので」
――勢いがいいですね。
「気持ちがいいです、凄く。中島さんだから乗れるんだと思うんですけど」
――では、率直にこの脚本を読んだ感想はどうですか? 結構テンションは高めの話なのかなという印象ですが。
「高めかなって思ってたんですけど、現場に入って、もっと高いんだなって思いました(笑)。ここまでテンポがいいとは。コメディが強いんだなって」
――そうですね。刑事ものってシリアスな印象がありますが…
「中島さんだから、『デカワンコ』のイメージが強いというか。そういう感じかなって。イメージでしかないんですけど」
――では、作品以外のことについてもお伺いしたいと思います。これまで悪役もやられていると思いますが、そういう役を演じてみてどうでしょうか?
「キツイです犯人役…。あ、僕2013年は、いっぱい銃を持ちました(笑)。銃マニアっていう役とかありました。拳銃マニアまで来たかー…って思いました(笑)」
――本当ですか(笑)。では、そういうオファーを受けた時に、“また銃を持つのか”っていう印象はあるんですか?
「あるかも知れないですけど、演じる役はどれも違う人間ですし、アンチヒーローとか、そういう役は好きなので。でも、『S~』の現場は、本当にキツかったんですよね」
――キツイというのは、精神的にも肉体的にもということですか?
「そうですね。精神的にも、肉体的にも大変でした」
――それは、結構長い時間だったんですか?
「撮影が名古屋だったんです。それで、何度も名古屋に行き来しましたね。そして、ずっと叫ばなければいけなかったので、喉がもう…。リハーサルでも、本番で声がかれちゃうとダメだから声を出さなくていいよって言われるんですけど、やっぱり出ちゃうんですよね。で、本番の時には声が枯れちゃうっていうのが、初めて起こりまして。で、結構スタジオまでの時間も空いたり、1回撮って、また日を挟んで撮ってって、間を空けてまた同じテンションに持っていくって、こんなつらいんだなって思いました」
――あー、そうですよね。1回思い出して、その感覚をまた表現しなくちゃいけないですもんね。
「そうです。それで、絶対に負けないって思って、毎回あれぐらいだ、あれぐらいだって思いながらやるんですけど、結局弱いんですよね。リハでやるのは。監督に言われたり、自分でやっていって、1発目から上手くいきたいんですけど、いけないんです。だから、本番までにそれを思い出したり…。緊張感がありましたね」
――でも、その放送日が『戦力外捜査官』の翌日っていうのは、面白いですね。視聴者からすると、楽しみです。
「僕も楽しみです。まだ、僕自身画面で一度も見ていないんですよ」
――余裕がなかったんですね。
「初めて、自分の顔を気にしたんです。あんまり、今までお芝居で顔を気にしたことがなくて。指摘されたら直すっていうのはあったんですけど。気持を重視してやっていたので、今回、『S~』の平野監督が、『この顔を』って、求められて、家で初めて怖い顔を練習したりしました」
――そういうお話を聞くと、役者として成長されたのでは? って思うんですが、ご自身で実感はありますか?
「いやー、課題ばっかりでてきますね」
――渋谷さんは凄く考えるタイプなんですね。
「あー、そうなのかな。そういうのは趣味って割り切ってます(笑)」
――不思議な雰囲気がありますよね。
「それ、結構いろんな人にそう言われるんですけどね、僕自身は全くそういう風には思わないんですけど…」
――意図してかもしだしている訳ではない?
「そんな人いないでしょ!? って思うんですけど(笑)。現場入るごとに言われるんです。『何を考えているかわからない』って。『AB型でしょ?』とか。でも、僕O型なんです。結構言われますね」
――でも、その不思議なところが魅力になってるんじゃないでしょか?
「そうなんですかね。そういう感じだから、悪い役とかが来るんですかねー?」
――でも、それはうらやましいと思っている俳優さん、多いと思いますよ。
「そうですか? でも、『S~』で凄く思いましたけど、怒るっていう感情って好きじゃないんですよ。緊張するんです」
――渋谷さんは、8歳の頃から演技を始められてますが、その経験が自信に繋がったりとかしないのでしょうか?
「ちょうど、そういう話を八嶋さんとしてたんです。芸歴は何年っていう話になったんです。でも、ちょっと嫌なんです。『何年やってるの?』って話って、絶対でるので。僕、17、8年とかになるんですけど、あんまりそれを言いたくなくて。遠回しに8歳からやっていることはいうんですけど、ってことは? ってなるんですよ。でも、その後になんて言っていいかわからないので…。最初は好奇心で始めたし。実力が伴っていたら、18年ですって胸張って言えると思うんですけど。でも、芸歴だけが先走っちゃって(笑)」
――いやいやいやいや(笑)。でも、演技を今まで続け来れたっていうことは、俳優に面白みを感じたり、チャレンジしてこれたっていうことですよね。
「もちろん、それもあります。面白いって、簡単なものではないですけど。そうですね、でも課題ばっかり出てくるんですよね。だから、やりたいことが出てくるっていうことですよね。たぶん、そういうことだと思うんですけど」
――では、『戦力外捜査官』の関川として今後の見どころは?
「そうですね、まだまだわからないところもあるんですが、関川と設楽がどういうパワーバランスで展開していくのか、僕自身も楽しみです」
――1話でも、まだライバル感はあまりでてないですよね。
「そうですね。これからどんどん出てくると思います。ドラマを面白くしたいですね!」
原作:似鳥鶏 『戦力外捜査官姫デカ・海月千波』(河出文庫刊)、『神様の値段戦力外捜査官2』(河出書房新社刊)
脚本:鴻上尚史
出演:武井咲 TAKAHIRO 八嶋智人 徳重聡 木下隆行 渋谷謙人 YOU 関根勤 柄本明ほか
公式サイト http://www.ntv.co.jp/senryokugai/
(c) NTV
警視庁捜査一課18係に配属された海月千波(武井咲)。彼女は、新人でありながら警部というキャリアだった。そんな彼女の指導をすることになった、巡査の設楽恭介(TAKAHIRO)は、上司から海月を捜査に参加させないように命じられる。そんなある日、中学生が銃殺される事件が発生。海月は設楽の制止を振りきって事件の捜査に乗り出す。
日本テレビ系にて、1月11日(土)21時~ 放送
原作:小森陽一 作画:藤堂裕 『S(エス)―最後の警官―』(小学館ビックコミック連載中)
脚本:古家和尚
出演:向井理、綾野剛、吹石一恵、土屋アンナ、髙嶋政宏、近藤正臣、大森南朋 ほか
公式サイト http://www.tbs.co.jp/S-saigonokeikan-/
元プロボクサーの神御蔵一號(ルビ・かみくらいちご)(向井理)は、引退後、警察官となり交番勤務をしていた。ある日、新宿の雑居ビルでひとりの刑事が撃たれる事件が発生。犯罪行為を行う不良集団のリーダー・興津(渋谷謙人)らによって、人質立てこもり事件と発展してしまう。警視庁特殊部隊通称“SAT”が投入されるが、銃隊員のひとりが標的となり、絶体絶命の事態に陥る。
TBS系にて、1月12日(日)初回は20時54分~ 放送