1日に100万人以上が利用する東京駅を舞台に、男女の6つの物語が交錯するラブストーリー『すべては君に逢えたから』。東京と仙台の遠距離恋愛をするカップル雪奈と拓実を演じるのが、木村文乃と東出昌大である。等身大の役柄、ラブストーリー共に初めてという、東出に映画に対する思いを訊いた。
撮影/Sai 文/池上愛
――東出さんの演じられた拓実は、等身大の役柄だと思うのですが、役作りはどんなことをされたのでしょうか。
「とにかく等身大でいようと思ったことぐらいです。こういう普通の男性という役は初めてで。『CRAMPドラマホリックXXXHOLiC』は小さい頃から妖怪が見える役でしたし、『ごちそうさん』は大正時代の話なので、そのふたつは、どうしても役柄について考える必要がありました。でも今回はごく普通の青年なので、とにかく台本の通りにやろうと考えていました」
――等身大だからこそ、難しい部分はありませんでしたか?
「難しいことはなく、共感する部分が多かったです。男の残念な部分とか、“あちゃ~”みたいな(笑)」
――例えば、どういうシーンですか?
「彼女の雪奈(木村文乃)に対して、“めんどくせぇ”って言っちゃうシーンですね。この言葉って絶対言ったらいけないと思うんですけど、どうしてもどこかで言っちゃうじゃないですか。このセリフはサラッと言うのではなく、とにかくダサい“めんどくせぇ”にしようと思っていました」
――この言葉を聞いて飛び出した雪奈を追いかけるシーンは非常にリアルに感じました。
「リアルですよね。“やばい…言っちゃいけないこと言っちゃったよ。彼女も飛び出しちゃったし…あぁ~俺、仕事で疲れてるのに……だけど、申し訳ないから追いかけなきゃ!”みたいな心情ですね(笑)。すぐ追いかけるんだけど、彼女はもう姿が見えなくなって…っていう」
――凄くリアリティがありました。ちなみに本作は日本版『ラブ・アクチュアリー』のようですが、そこは意識されていましたか。
「監督が仰っていたので、事前に知っていました。ひとつの場所を起点に色んなカップルが登場する構成なので、僕は木村さん以外のキャストのお芝居を見れてないんです。そこは少し怖い部分ではありましたけど、上手くハマれば面白い作品になるなと思いました」
――東出さん自身は、遠距離恋愛についてどう思われますか?
「遠距離恋愛のメリットは、あまり想像出来ませんでした。お互いが好きだったら、やっぱり離れたくないと思います。拓実は、映画の最初っから、めんどくささが滲みで出たと思うんですけど、実際は、雪奈と物凄く仲が良かった時期があると思うんです。でも、遠距離になって仕事が忙しくて会う暇もない。だから、仕事に生きようと思ったんじゃないかなと。そういう部分を表現するのは難しかったですね」
――もし自分が遠距離恋愛をすることになったら、どうしましょう?
「どうしましょう(笑)? 凄く大変だなと思います。拓実は雪奈にプロポーズをしますけど、リアルなことを考えると、式はいつやるんだろう? とか、仕事はどうするんだ? っていう疑問が浮かびました」
――現実的ですね(笑)。では、東出さんのクリスマスの思い出は?
「ずっと剣道をやっていたので、学生時代は部活一色です。高校生の頃、剣道の大会がクリスマスシーズンにあっていたので、その時期も剣道の思い出しかありません」
――剣道に打ち込まれてたんですね。
「授業中は寝て、起きてる時は早弁です。部活が終わったら、コンビニで何か食べて帰宅するっていう日々でした」
――ではこの作品に出て、改めて「クリスマス」について思うことはありますか?
「そうですね…木村さんと話していたんですが、東京駅のクリスマスツリーの下で雪奈にいう言葉は、“拓実、よくやるなぁ!”って思ってたんですけど、木村さんは“こんなシチュエーションだったら、絶対にOK出しちゃうよ”って言ってました。やっぱりクリスマスは素敵な日だなと思います」
――木村文乃さんは同じ年だそうですね。
「はい。木村さんは壁のない人で、凄く話しやすい方でした。全然気取らないので、ほんとに同級生感覚になれたというか。東京駅のシーンは深夜に撮影してたんですけど、その日は朝ドラの撮影が重なっててテンションがおかしくて。ハイになった状態で、木村さんにベラベラひとりで喋りまくってました。逆に、雪奈が拓実の家を尋ねるシーンは、僕が物凄く疲れていて、木村さんが喋りまくっていましたね。お互い本当は人見知りなんですけど、凄くやりやすく演じられました」
――女性の先輩社員と一緒に飲みに行く場面があります。ああいうシチュエーションだったら、男は浮気してしまってもおかしくないかもしれませんが、拓実はそうではなかったですね。
「拓実は本当に真面目なんです。もしかすると仕事に余裕がなくて、先輩のことも考えられないだけだったのかもしれないけど…遠距離だったら、グラっとすることありますもんね。それでもいかなかった拓実は真面目だし、雪奈のことが本当に好きなんだと思います。純粋に、雪奈を幸せにしたいっていう気持ちなんでしょうね」
――仕事で一杯一杯になってしまう気持ちは、東出さんもわかりますか?
「わかります。多分社会人の男性で、2~3年目とかの方は誰しもが悩むことなんじゃないかなと。仕事を優先するあまりに、彼女を蔑ろにしてしまう拓実の気持ちは、共感出来ます」
――東出さんも、お芝居で一杯になってしまうことは?
「どうでしょうね…オンとオフは切り替えなければならないと思っています。どっぷり浸かってしまうと、精神的にやられそうになっちゃう気がして。意識してでも切り替えるようにしていますね。今は、次から次に新しい課題が出てくるので、その波に乗っている感じです」
――波には上手く乗れているのでしょうか。
「上手く流れに乗りたいんですけど、物凄い濁流なので、あっぷあっぷしながら泳いでる感じです。とにかく溺れ死なないように、くらいついています(笑)」
監督:本木克英
脚本:橋部敦子
出演:玉木宏 高梨臨 /木村文乃 東出昌大 / 本田翼 /
市川実和子 / 時任三郎 大塚寧々 / 倍賞千恵子 小林稔侍
制作プロダクション:白組
特別協力:JR東日本
企画協力:ジェイアール東日本企画
配給:ワーナー・ブラザース映画
www.kiminiaeta-movie.jp
©2013 「すべては君に逢えたから」製作委員会
舞台はクリスマス間近の東京駅。人間不信に陥ったウェブデザイン会社社長、仙台と東京の遠距離恋愛、気になる先輩に告白できない。女子大生、母親と過ごすクリスマスを夢見ている少女、余命3ヵ月を告げられた新幹線の運転士、49年前の果たされなかった約束―。
クリスマスというクライマックスに向かって、走り始めるそれぞれの想い。彼らは気付く。毎日たくさんの人がすれ違う中で、心の底から大切だと思える相手に出逢えた、それだけで既に奇跡だということに―。
11月22日(金)新宿ピカデリー他 全国ロードショー